『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第6話)感想

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第6話)感想 【ネタバレあり】

警備警察(本庁や所轄)と公正取引委員会公安警察・・
ひとつの事件にそれぞれの管掌(かんしょう)が絡(から)んで来ると、
いろんな柵(しがらみ)も生まれるようで。


老舗デパート長志万屋で海外からの仕入を担当していた
花形社員の商品部課長・百瀬が自宅に放火され死亡。
西新宿署に捜査本部が立ちますが、
警察と公取では、事件に対するスタンスが当然ながら違います。
産地偽装問題を内偵する公取の中井(堀部圭亮)から、
詐欺の疑いで長志万屋を内偵中だからおまえたちは下手に動くな、
と押さえつけられる捜査員たち。
それでも、彼らは、偽装がらみやストーカーがらみ等々
百瀬と接点のある人間たちを丁寧に調べ上げて行きます。

毎回のことですが、
その、犯人に辿り着くまでの捜査過程が簡単ではなく、
まさに島野係長(田辺誠一)の言うとおり
「あらゆる可能性を考え ひとつひとつ確実に潰す」ために
捜査の基本に従って地道に調べを続けて行く、
観ているこちらも一緒に捜査しているような気持ちにさせられる、
地味ですが とてもいいシーンになっています。


八方手詰まりの中、誰かがマスコミに産地偽装の情報をリーク、
それを機に事件の全容が一気に表面化、
百瀬が亡くなる原因となった火事は、
彼の妻・真理子(宮地真緒)の放火と判明します。

結局、百瀬の死は、
長志万屋産地偽装とは直接には関係なかったのですが、
それがなかったら、真理子は夫の不倫を疑うこともなかったし、
発作的に放火することもなかったわけで、
そのあたりの、‘いくつかの出来事’ と ‘事件’ との複雑な絡み具合が、
このドラマの面白いところでもあるなぁ、と思います。

所轄の森村巡査(近野成美)が調べた膨大な数の迷惑メールの中に、
事件の重要なヒントがあった、というところもいいですよね。
無駄と思われることを、地道に丁寧に積み重ねて行く、
それが捜査の大きな手掛かりに繋がる・・

13係の面々が外の喫煙所でタバコを喫ってるところに、
シャブ取引の現場を抑えた車が到着、
「芋づる式に行きそうだと 生活安全課は大盛り上がりだそうですよ」
・・なんていうちょっとした会話も、
後の、アリバイ証言者・前田の連行、というところに繋がって来たり、
どのシーンにもちゃんと意味があって、
ちょっとでも見逃したらもったいない、という気分になります。


ところで、捜査を大きく進展させたマスコミへのリークは
いったい誰がやったのか・・
島野(田辺)は屋敷(塚本高史)を疑っていたけれど、
実際にリークしたのは彼だとしても、
その指示を出したのは佐久管理官(小澤征悦)だったんじゃないか、
と思うのですよね。
ま、たぶん谷中刑事部長(西田敏行)も
同じようなことを考えていたのかもしれないけれど。

佐久か谷中か、屋敷がどちらに付いているのか、誰の駒なのか。
「僕はただのメッセンジャーですよ」という彼の言葉には、
どちらとも取れるニュアンスがあって、
(この時の屋敷=塚本くんのチェシャ猫笑いが 何ともいい感じだった)
観ている側には確かなことは分からないんだけど、
そこが逆に、あれこれ想像して楽しめる部分にもなっていて、
その、画面の裏側でいろいろな人間が
さまざまな思惑や意図を持って動いているのが感じられる、というのも、
このドラマのすごく魅力的なところだと思います。


佐久管理官が、そのリークを利用して
公取・中井(堀部)の動きを封じ込め、自分たちの事案を解決、
最後には公取に花を持たせてやる余裕さえ見せたところも、
心地良かった。

また、自己嫌悪に陥った森村巡査(近野)に対して
「あなたは警察官としてとても大切なものを持っている。
私を含め多くの警察官が失くしてしまったものです」なんて励ましたり、
(大切なものって何でしょうね。ずっと考えてるんだけど分からない)
と、少しずつ人間味も感じられるようになって来ました。

彼のこの ‘優しさ’ は、相手が女性だからなのか、
あるいは、彼の性格や人柄を
こういう形でこれから少しずつ出して行こうという意図なのか・・
佐久は本当に ‘才で情を切り伏せた人間’ なのか、
あるいは、そこに何らかの理由があるのか・・

個人的な希望を言わせてもらえば、
相手が自分をどう思っているかなんてことに一切頓着しない、
器用に立ち回れないし、他者と相容れない性格だから友達もいない、
でも13係に対しては 信頼して委ねている部分がある・・
佐久がそういう人であって欲しいと思っていますけれども。


最終的に、産地偽装問題は、
長志万屋の知らぬ間にテロリストへの資金源にされていた、
なんていう国際的な話にまで発展しますが、
公安の捜査が入る前に、
佐久と13係は自分たちの事件を解決したらさっさと身を引いて
それ以上深入りしたりは しません。
自分たちの仕事の範囲をきっちりと見極めているところもいいですよね。
スーパーヒーローみたいに何でもかんでも佐久が解決、
なんてことにならなくて良かったです。


さて、今週の13係。
所轄と一緒になってずっと地道に捜査していたので、
突出した場面はなかったのですが、それでも興味深いシーンはあって。

佐久に「島野係長、中井捜査官の下でサポートをお願いします」
と言われて「何で公取の下に」とキレる太田(神尾佑)とか、
「13係の係長ともあろう人が随分と頭の悪いことを」と
島野に辛辣な言葉を吐く中井を 睨みつける太田と風間(篠田光亮)とか、
百瀬を強請(ゆす)っていた男のメールを
‘悪党の言葉’ で翻訳する太田とか・・
(あれ、太田ばっかりだw)

署の外でタバコを喫っているシーンも好きでした。
加藤(田中隆二)・中藤(猪野学)・太田・風間が話してるところに
島野が入って来るんだけど、
(小菅はタバコを喫わないって設定でしたっけ?)
島野が上司っぽくなくて、みんな横並びに対等という感じがして。
本当に いつも いい雰囲気ですよね 13係。

小菅(渡辺いっけい)にちょっと突っ張った娘がいることも判明。
このドラマには、今のところ、
刑事たちの私的な部分が全然出て来ないのですが、
そのあたりは意図的に、なんでしょうか。
彼らの私生活が安易にクローズアップされ、
メインのネタに使われるのもどうかとは思いますが、
でも、こういうちょっとした小ネタを挟んでもらっただけでも
得した気分になるのも確かで、そういうところを見せられると、
何だか、もっと彼らを好きになってしまいそうな気がします。
  (私生活もだけど、本音言うと、13係好きの私としては、
  島野がどういう経緯でこのメンバーを集めたのか も知りたい)


今回は女性の出演者が多く、
雰囲気がいつもより少し派手めだな、と思ったら、
女性の脚本(岡崎由紀子)だったんですね。
こういう1話完結のドラマでは、
何人かの脚本家が競合するように作品を作る、
だから、たまに こういった色味の作品が混じるのも面白いと思いました。
でも、ま、私はいつもの「中年のおっさんだらけ」の、
むさくるしい雰囲気の方が好きですが。w


撮影はすでに1週間ほど前にクランクアップしたんだとか。
視聴者の好みを探りつつ、途中から内容を変えて行くドラマも多い中、
この早さは、視聴率や視聴者の呟き等々に縛られない、揺らがない、
自分たちが作りたいものを作る姿勢にも繋がっているようで、
気持ちがいい・・と思ったら、
え〜〜今夜入れてあと3回しかないんですか!?
それはあまりにも残念だ〜、
ようやくメインのキャラに血が通って来て、
これからますます面白くなりそうだと思ったのに、もったいない・・

よし、こうなりゃ最終回までずっと、
「ぜひ続編を!」とシュプレヒコールをあげ続けることにしよう。


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本:岡崎由紀子 監督:新村良二 ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日) 金丸哲也(東映) 和佐野健一(東映) 
音楽:吉川清之 主題歌:加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 制作:テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 西田敏行  
ゲスト:堀部圭亮 宮地真緒 近野成美  『TEAM』公式サイト