『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』感想まとめ(その1/第1-5話)

本日9月17日は
『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』のDVD-BOXとサントラ盤の発売日、
ということで、感想をまとめました。
TEAM~警視庁特別犯罪捜査本部 DVD-BOX 「TEAM ~警視庁特別犯罪捜査本部」 オリジナル・サウンドトラック

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』感想まとめ
(その1/第1-5話)
【ネタバレあり】

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本:吉本昌弘 大石哲也 真野勝成 徳永富彦 岡崎由紀子  
監督:猪崎宣昭 新村良二 
ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦テレビ朝日 金丸哲也東映 和佐野健一東映 
音楽:吉川清之 主題歌:加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 
制作:テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 
神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 西田敏行    『TEAM』公式サイト 

 

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第1話)感想 

『相棒12』終了後に始まった新ドラマ。
1時間の中にかなりの情報量を詰め込んであるので、
一度観ただけでは なかなか全体の流れが掴めなかったのですが、
二度観て、登場人物の立場やそれぞれの関係性、
それが事件とどう関わっているのか等々が呑み込めるようになって、
このドラマの面白さが見えて来た(私流の解釈ですが)ように思います。

分かりやす過ぎてサラサラッと流れてしまうドラマも多い中、
この「かなりの情報量」というのは、私にとってとても嬉しいこと。
とっつきにくいかもしれないけれど、
それだけ 見ごたえがある、ということでもあると思うので。

実際、テレビ朝日のこの時間帯の刑事ドラマに共通する実直な作り方が
この作品にも息づいていて、それが私にはとても心地よく感じられたし、
登場人物が男だらけの中、
初回から非常に緊張感のある空気が出来上がっていたのも、
すごく嬉しかったです。

 

密度の濃い脚本で、
レギュラーメンバーの設定からして単純ではなく、
なかなかのクセモノ揃いなのですが、
そんな中で 今回 私が一番魅力を感じたのは、
谷中刑事部長(西田敏行)でした。

「佐久(小澤征悦)が佐久が」と責任をなすりつけるような言い方にしても、
島野(田辺誠一)に対する物腰やわらかな態度にしても、
一筋縄じゃ行かないタヌキぶりが、いっそ心地良いw

西田さんが実に味のある演技をしていて、
憎たらしいには違いないんだけど、
何かもう一捻り(ひとひねり)あるんじゃないかという気もして、
だからなおのこと、無性に、その腹の中を探りたくなる。
ただの出世欲の塊(かたまり)なのか、
あるいは、もっと大きなことを考えているのか・・
佐久と島野を組ませたのは、
自分の言うことを素直に聞きそうにない目障りな二人を潰すためなのか、
あるいは、今までにない画期的なチームを作ろうとしているのか・・と。

 

所轄の新津(古谷一行)も良かったです。
佐久に自分と同じ一匹狼の匂いを感じて、
「あんた友達いないだろ」なんてグサリと言ってのけたり、
捜査に加わろうとしない屋敷(塚本高史)をさりげなく引き入れたり、
人の性格を読むのが巧みで、全体のバランスをしっかり見ている・・
古谷さんが持つ温和な雰囲気が、
たたき上げの刑事役にうまく染み込んでいるように思いました。

 

13係の中では、小菅(渡辺いっけい)が出色。
男だらけの刑事たちの中で、
彼が持つ 生活感のある感覚ってすごく大事な気がする。
佐久にも島野にも足りないものがある、
佐久は素直な物言いが出来ないし、島野は生真面目過ぎる・・
そのあたりの弱点を小菅は見抜いている気がするし、
彼自身が只者ではない空気を備えているのもいい感じです。

 

機動隊上がりの太田(神尾祐)の直情的な性格は
私にはまだちょっと馴染めないけれど、
加藤(田中隆三)や中藤(猪野学)や風間(篠田光亮)ともども、
人間性がもっと描かれれば、さらに面白さが増す気がするし、
そこにチームに溶け込もうとしない屋敷(塚本高史)が加わることで、
どんな不協和音が生まれ、それをどう克服して行くか、も楽しみ。

 

さて、肝心の佐久管理官と島野係長について、ですが。
正直なところ、谷中や小菅に比べると、
どうも いまひとつストレートに魅力が伝わって来ない気がしました。
視聴者の気持ちをグッと惹き付けるような派手さがなく、
メインとしての明確な個性をまだ存分に発揮出来ていないような、
ちょっと物足りない感じ、と言ったらいいか。

しかし、制作側は そんなことは承知の上なんじゃないか、
とも思うのですよね。
あえて二人を傑出した人物として描かず、
チームの一員として描くことで、
個々の魅力を結集した形で 「TEAM」としての魅力を見せよう、
群像劇としての面白さを見せよう、と考えているんじゃないか、と。

そう考えると、メインキャラとしてはあまり馴染のない
小澤征悦田辺誠一という落ち着いた俳優のチョイスも、
なるほど、と うなづける気がします。

 

佐久管理官。
これだけクセのある主人公というのも なかなかないと思うのですが、
民放初主演の小澤征悦さんが演じる、ということで、
観る側に先入観や特定のイメージを抱かせることがなく、
佐久の人間性や能力を想像させにくくする、と言う意味でも、
なかなか興味深いキャスティングだし、
これから魅力的なキャラクターに育って行くんじゃないか、
という気がしました。

小澤さんは、カチッとした硬さを持つ俳優さん。
その硬さが、佐久の ‘他者と相容れない性格’ を、
うまく表現してくれそうな気がします。

 

対する捜査一課13係の係長・島野誠は、
これまでの刑事ものにも たびたび主人公として登場しているような
‘いかにもまっすぐ’ なキャラクター。
「あなたたちは駒です」と言い切り 上司にへつらう佐久とは 衝突必至、
案の定、「あなたのやり方は間違ってる」と、
最初から喧嘩上等の不穏な空気。

演じている田辺さんは、
ここまではっきりした物言いをする役というのは
今まであまりなかったと思うのですが、
今回はかなり思い切って熱い人間を演じています。

 

誰も寄せつけようとしない佐久と、
検挙率ナンバー1の13係を作り上げた島野。
今のところ水と油のこの二人が、
どういうふうに事件を解決し、どう心を通わせて行くか、
つまり、佐久管理官と島野率いる13係が
いかにチームとしての力を最大限発揮出来るようになるか・・

興味深いのが、二人に共通する現場主義。
出世に興味のない二人は共にノンキャリアだそうで、
あえてキャリアコースに乗らず、現場で指揮を執ることに専念、
というところに、今後二人が歩み寄るきっかけがあるような気もします。

 

佐久も島野も、
たとえば前クールの『隠蔽捜査』の竜崎と伊丹のような
単純明快な性格ではないし、いろいろ背負っているものもあるせいか、
小澤さんも田辺さんも、まだ自分の役を確実に掴んでいる感じがしなくて、
少しもどかしいところもあるのは確かですが、
ドラマはまだ始まったばかり。
今後、二人が、
どんなふうに それぞれの役に入り込み、馴染んで、光を放って行くか、が
佐久と島野が作り上げる「TEAM」の色味にも繋がって行きそうで、
その過程を観るのも とても楽しみです。

 

事件解決までの流れについて。
そんなふうに「最強のTEAM」が出来上がるまでをメインにして、
そこを掘り下げて描こうとすると、
事件そのものの密度が薄くなってしまう可能性もあるのですが
今回、捜査本部立ち上げ時の所轄の立ち位置や、
警視庁と検察庁の縄張り争い、天下り等々の「なるほどネタ」も含めて、
テンポよくまとめていて、なかなか興味深かったですし、
見ごたえもあったように思います。

チームの成長と事件の解決・・
二つのバランスをうまく取りながら、
見ごたえ・噛みごたえのあるドラマを作って行って欲しいですし、
検挙率ナンバー1という13係の底力がまだ見えていないので、
いずれそのあたりを魅力的に描いてくれることも、
期待したいところです。

 

追記。
公式サイト、キャストの人物設定がなかなか面白いです。
この設定がうまく生かされたドラマになって欲しい。
倉科孝靖さんのインタビュー「管理官とは」も読みごたえがありました。
管理官側から事件を見ると、またちょっと違って見えるのかな、
なんてことを思いました。

 

ゲスト:古谷一行 脚本:吉本昌弘 監督:猪崎宣昭


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第2話)感想

ドラマ全体が練れて来たせいか、
初回以上に面白かったです。

今回もまた、警視庁・刑事部長の谷中(西田敏行)が、
所轄の署長が必要ないと言っているのにゴリ押しで捜査本部を設置、
佐久(小澤征悦)と13係が向かうけれども、所轄の猛反発を食らう、
といった、初回とほぼ同じパターンで話は進むのですが、
佐久以下のメインキャストのキャラクターが前回より掴めている分、
観ている側としてもすんなりと入って行けたし、
何と言っても、登場する刑事たちのキャラがみんな立っていて、
彼らの熱やプライドや男臭さが捜査本部の中でぶつかり合い、
ぶつかり合ううちに捜査の方向性が構築され、
冷静沈着な管理官のもと、
本庁も所轄も一緒くたになって事件解決に向けて突き進んで行く、
その流れが非常に魅力的にテンポ良く描かれているので、
観ているこちらまで、その熱に取り込まれてしまったような気分で、
画面に見入ってしまいました。

「うちのみんな 向いてる方向が違うと思う」
と言っていた所轄署の事務方の小松(少路勇介)が
本庁も所轄もなく全刑事が一丸となって事件を追う熱気に
目をキラキラさせるようになる・・
「捜査本部」のあるべき姿が、そこにあるような気がしました。

 

一方、本筋の事件の方も単純ではなく、
被害者周辺の人間たちの思惑が複雑に絡まっていて、
犯人と断定した男が死体で発見された場面では、
刑事たちの落胆がこちらにも伝わって来るようでした。

犯人が親友を陥(おとしい)れて犯行に及んだ理由を聞かれ、
「ただゆかりが憎かった」と答えたその言葉が、
高校時代からの犯人の感情を掘り起こして読み返したくなるような
意味深いものになっていて、とても良かったと思います。

ただ・・
なにせ、事件そのものよりも、刑事たちの人間的魅力が満載なので、
今回も、ついそちらの方に気を取られてしまったのも事実で。

 

佐久の「あなた方は駒です」という横柄なセリフは、
今回も、初っ端(しょっぱな)から挑発的に使われているのですが、
観て行くうちに、何となく理解出来そうな気がして来ました。

「捜査の基本など考える必要はない」
「すべての情報は私にあげて下さい。
誰が何をするかなどあなたたちが考える必要はない」
「そういう主観的な感情は捜査の邪魔になる」
「主観的な推測は捜査に必要ない」etc・・
刑事たちに向かって放たれたこれらの断定的な言葉も、
「あなたは警察官としてもっとも大切なことを忘れている」
と署長に向かって言った言葉も、
捜査に支障をきたすような私的判断や感情や
無駄な意地や雑念を一切振り払い、
クリアな眼と頭で捜査に全力を注ごうとする佐久の、
一途な姿勢のあらわれなんだろう、と。

そしてもうひとつ、
各々の役割を明確にする、ということ。
管理官が刑事たちの適性を把握して班割をし、
刑事たちがそれにそって班ごとに足を使って情報や証拠を集める、
集めたものを管理官が分析、精査、犯人を絞り込む、
係長が適切な指示を出し、刑事たちが犯人を逮捕する・・
この一連の流れが、カチカチッと気持ちよく嵌(はま)って、
事件解決に向けて何十人もの刑事たちが一斉に動き出す姿には、
思わずワクワクしました。

小菅(渡辺いっけい)は 佐久を
身体のほとんどが脳みそで出来ているクモに例えたけれど、
どんな優秀な脳みそを持っていても、
手足を自在に動かせなければ獲物は捕まえられない。
「あなたたちは駒です」というのは、要するに、
佐久(管理官)という脳みそを持ったクモの手足になって、
余計なことを考えずに捜査に打ち込んで犯人を捕まえてくれ、
という意味なのではないか、と。

 

島野係長(田辺誠一)にデスクを命じた佐久の本当の狙いを、
島野本人は気づいていなかったかもしれないけれど、
捜査が進むにつれ、島野が自然と佐久の意図をくみ取って、
「適切な指示」をどんどん出して行くようになり、
やることがなくなった佐久がそれを黙って満足げに見ている、
その表情を観た時、
彼が島野に求めたものと、その先にある理想の「TEAM」の姿が
何となく見えたような気がしました。

 

さらに私が感じた このドラマの魅力の一端・・

こんなに、スマートでもない、かっこよくもない、
だけど、生き生きとした息遣いの感じられる
人間らしい汗の感じられるドラマは、久しぶりのような気がします。

太田(神尾佑)が歯を磨いている横で、
小菅(渡辺)がモーニングコーヒーを飲んでいたり、
目覚ましの音に驚いて止める風間(篠田光亮)の向こうで
中藤(猪野学)がアイロンをかけていたり、
という 捜査本部の朝の描写には和(なご)まされたし、
公衆トイレで 加藤(田中隆三)が所轄の刑事に「あと何件だ」と尋ね、
「80件ですね」と言われて渋い顔をする、など、
期限までの10日間、刑事たちが靴底を減らして調べ尽くす様子も
とても丁寧に描かれていて、好感が持てました。

 

そんな中で、佐久の抜け目ない策士の一面もちゃんと描かれていて。
小松を使って一芝居打った、というのもそうですが、
私が一番興味深かったのは、岩瀬に指輪の調査を依頼したこと。
「これは島野係長に・・」と言う岩瀬に
「質の良い経験を積んだあなたのほうが適任」と、
島野が聞いたら目くじら立てそうなことをシレッと言うあたり、
人をうまく策に乗せて使う手練れぶりは相当なもの。

屋敷(塚本高史)が DVDを所轄に向かって放り投げ、
その生意気な態度が所轄の刑事の怒りをかってボコボコにされた後、
ホテルでスカイツリーを見て「きれいだなぁ」とポツリと呟く彼に、
りんごを持って行くように言うところも良かったです。
‘策’ というより、むしろ、捜査本部の空気に馴染めない屋敷に、
佐久がほんの少し手を差し伸べたようにも見えたけれど。

 

一方の島野も、
ただひたすら佐久に反発して激昂するだけだった前回に比べ、
捜査の中でどんどん佐久のやり方を吸収して行く
その呑み込みの速さや、過去の資料に関する優れた記憶力など、
秘めた力を丁寧に引き出されていて、
キャラに深みが出てきたように思います。
13係を使って別捜査に動く、
メンバーとその密談をする窓枠の中の島野の表情が魅力的でしたし、
ラスト、「(佐久を)人間としては好きになれねぇな」
ともらす岩瀬(ダンカン)に同調するように口元を緩める島野も良かった。

田辺さん、このドラマではものすごく良い姿勢を保っています。
何となく時代劇で武士を演じている時と似ている気がして、
それもまた嬉しかったです。

 

佐久と島野の阿吽(あうん)の呼吸が感じられるようになり、
チームとして前進したかのように思える「管理官×13係」ですが、
一方で、谷中のタヌキぶりはあいかわらずで。
    ただの出世欲の塊(かたまり)なのか、
    あるいは、もっと大きなことを考えているのか・・
    佐久と島野を組ませたのは、
    自分の言うことを素直に聞きそうにない
    目障りな二人を潰すためなのか、
    あるいは、今までにない画期的なチームを
    作ろうとしているのか・・
なんて前回書いたけれど、ここで謹んで訂正させていただきます。
谷中は佐久と島野の能力を見抜いたうえで、
自分の出世のために
二人を最大限利用しようとしていただけなんですね。

だとすると、いずれ、
‘佐久+島野’ vs `谷中’ なんてことにもなって来るんでしょうか。
いやいや、潰すか潰されるか、じゃなくて、
『相棒』の杉下と小野田官房長みたいな関係になって欲しいです、
個人的には。

 

ゲスト:ダンカン 少路勇介  脚本:吉本昌弘  監督:猪崎宣昭


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第3話)感想

3話になっても、1時間ぎっしりの満腹感は削(そ)がれませんね。
毎回登場人物が多くて、一人一人追いかけて行くのが大変なのですが、
その一人一人の仕事への熱い気持ちがいろんな形になって現れ、
それが事件と絡み合って行くことで、
事件の真相とともに 彼らの人間性が見えてくる・・
刑事たちの事件に立ち向かって行く気持ちが雑味なく描かれて、
今回も密度が濃かったです。

 

佐久(小澤征悦)が、刑事たちを「駒」と言い切る、
それが刑事たちの反発心に火をつける、
その火は、やがて刑事としての矜持や、良心や、
一直線に事件に向かう気持ちとなって佐久にぶつけられる、
そうなることを見越して、あえて憎まれ役を演じている・・
今回の佐久を観ていて、そんなふうに感じるようになりました。

田村(矢島健一)が抱えた秘密が何であるか知るために、
朝比奈(橋爪遼)を追い詰め、島野(田辺誠一)を策に使う・・
時に感情を逆なでし、傷つけてまでも、
刑事たちが持つ情報や能力を残らず全部引き出そうとする、
自分はどう思われようと構ったこっちゃない、
どんな手を使っても彼らの力を最大限引き出し使い尽くす、
それが、佐久が心に抱く「理想の管理官の姿」なのかもしれません。

 

一方の所轄・千代田西署の田村刑事課長(矢島)。 
小菅(渡辺いっけい)は彼を「お山の大将、独断専行」と言ったけれど、
冤罪を訴えて自殺した大野の遺書を隠し通せと言う署長と、
その秘密を暴こうとする佐久のあいだで揺れ動く、
中間管理職の切なさみたいなものがにじみ出ていて、つい感情移入。

自分がすべての責任を負う覚悟で
「部下を捜査に加わらせて欲しい」と島野に頭を下げ、
「刑事は犯人捕まえてなんぼだ、絶対捕まえてこい!」と
部下たちにハッパを掛ける、
田村の心情の流れが滑らかに描かれていたせいもあって、
(部下が家族と撮ったプリクラ なんていう小道具の使い方がまた憎い)
今までの所轄の刑事の中で一番好きになりました。

 

事件がらみでは、東都新聞の長部デスク(渡辺憲吉)も良かった。
スクープを掴んだ高木(青柳尊哉)に、
「きちんとウラ取ったのか、ダブルチェックは」と念を押す、
その記事が人の人生を狂わせる可能性がある、ということを、
経験の浅い高木に諭(さと)す、
しかし、やっと取ったスクープに舞い上がり、
クライマーズ・ハイ状態に陥ってる高木は耳を貸さず、記事にし、
それが結果的に大野の自殺につながってしまう・・

大野が冤罪かもしれないと知って恐ろしくなった高木は、
河合部長(大河内浩)に相談するのですが、
「このことは誰にも言うな。大野を容疑者と名指ししたのはうちだ、
もし無実なら東都新聞の権威が地に落ちる。
騒ぎが大きくなれば死活問題だ」と言われ、新聞社に辞表を提出。

大野の自殺と高木の退職に疑問を持った長部は、
多忙な時間を縫って、一人で地道な取材を1年近く続けるんですね。
  (そのあたりは画面には出て来ないのですが、
  観ている側が十分想像来る組み立て方になっていました)
そしてついに真犯人にたどり着くんですが、
この人の新聞記事に対する誠実でひたむきな責任感に、
何だかちょっと胸が熱くなってしまいました。

 

そして、またも 佐久の策略に乗せられた島野係長(田辺)、
そのことを小菅(渡辺)に指摘された時の表情にゾクッとしました。
百戦錬磨の小菅や加藤(田中隆二)をビビらせるほどの硬い視線・・
見た目は優男(やさおとこ)風のこいつも、
自分の中に絶対に譲れないものを持ってるんだ、
強い信念や理想を抱きながら刑事として生きているんだ、と。
いやいや、こんな田辺さんを観られるなんて、もう嬉しくて仕方ない。

 

今回は、
実際に前線のトップに立つ佐久や島野や田村や長部と、
もっと上の立場の谷中刑事部長(西田敏行)や千代田西署長、
東都新聞の社主や河合部長らの、
立場や役割の違いがきちんと描かれていたのも興味深かったです。

事件に真っ向からぶつかって行く佐久たち、
その一方で、谷中たちには守らなければならないものがある。
警察の不祥事も、新聞社の信用失墜も、
そこで働く人たち(とその家族)を路頭に迷わせることになりかねないし
社会全体を大きな不安に陥(おとしい)れかねない。
偉い人たちは、自分自身の名誉や欲ばかりでなく、
そういう 大きくて切実なものを背負っている責任もあるんですよね。
そのあたり、今後もっと描かれて来ると面白いんじゃないか、
と思いました。

 

余談ですが・・
登場する刑事や事件関係者が非常に多い作品ですが、
それほど重要でない役にまでしっかりフルネームがついているのを
ラストクレジットで観た時は、何だか嬉しかったです、
一人一人を丁寧に描こうとしてくれているように感じられて。

最後まで抜かりなし、ですね。 次回も楽しみです。

 

ゲスト:矢島健一  脚本:大石哲也  監督:新村良二


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第4話)感想

今回の舞台は北品川署。
佐久管理官(小澤征悦)の面目をつぶして
谷中刑事部長(西田敏行)の鼻を明かしてやろうと目論(もくろ)
狩野署長(山田明郷)の思惑で捜査本部が立ちます。

ジンソクと異名を取る陣内副署長(山田純大)の
迅速でぬかりない初動捜査に、島野係長(田辺誠一)も呼応、
所轄と13係が良好な関係を築いて捜査を進める中、
一人だけカヤの外の佐久管理官。
もっとも、佐久にとっちゃ、誰が捜査の中心になろうが、
事件が解決すればそれでいいんだろうけれど。

陣内主導で捜査は進み、やがて犯人が逮捕されるのですが・・
佐久は、陣内が見落とした小さな綻び(ほころび)を、
屋敷(塚本高史)や13係を使って丁寧に掬(すく)い取り、
ほどなく2つの事件が同一犯でないことを探知、
2つめの事件の真犯人を突き止め、
逆に、狩野署長に谷中刑事部長への借りを作らせる結果に。

 

これ(谷中への借り)には伏線があって、
捜査本部が立つ前に、
谷中が島野に「下策、中策、上策」という話をしているのですね。
「被疑者逮捕を目的とするのは下策、
本庁が手柄をたてて解決するのが中策、
手柄を立てたうえで所轄に貸しを作れれば上策」と。
もちろんそれは、猪野署長側も同じことで、
事件捜査の水面下で互いに上策を獲ろうとする
タヌキ同士の駆け引きが面白かったです。

二人の間に入って冷や汗をかく細川庶務担当管理官(飯田基祐)、
定番のポストですが、こういうところに飯田さんが入ると
ドンピシャに嵌(はま)りますね。

 

そんな偉い人たちの思惑とは裏腹に、
佐久×島野×陣内が、
それぞれに「捜査バカ」を貫く場面が非常に魅力的に描かれる中で、
彼らの三角関係(違w)が緩みのない拮抗したものになっていて、
それもまたとても興味深かったです。

特に、犯人・武藤(今野浩喜)の取り調べを陣内(山田)がやる段に、
佐久(小澤)にうながされて心得たように島野(田辺)が付き添う、
「武藤くん」と呼ぶ陣内に心を許し 自供が嘘だったと語る武藤に、
「武藤、情状酌量の余地はない!」と突っぱねる島野・・
という3人の(おそらく陣内にとっては無意識のうちの)連携プレーには、
ちょっとやられてしまいました。

いや〜陣内も 谷中の言う「武田二十四将」の一人になって欲しいなぁ。
佐久・陣内・島野、この3人が揃ったら、怖いものはない、
どんなに複雑な難事件も、解決してくれそうな気がします。

 

それと、前にも書いたと思うのですが、
このドラマは、本当に「人」の描き方がうまいです。

陣内についても、
なぜ迅速な捜査をモットーとするようになったのか、
事件や犯人に対してどういうスタンスで向き合っているのか、が
きっちりと伝わって来て、しかもそれが非常に魅力的で、
繰り返すようですが、
これはもう、ぜひとも再登場してもらうしかないな、と。w

犯人の武藤にしても、橋本(猫背椿)にしても、
その人となりに、けっして十分な時間を使っているわけではないのに、
ちゃんと事件を起こすだけの納得出来る理由づけが出来ている。
特に武藤役の今野さんのキャラは素晴らしかったです。

13係の小菅(渡辺いっけい)が橋本を見る時の斜め目線にも、
どんな小さな嘘も見逃さない刑事としての厳しさ
みたいなものを感じて、しびれましたし・・

そうやって、一人一人挙げて行ったらキリがありません。
脚本の緻密さにキャスティングの的確さが加わると、
役としての人間性までしっかり伝わって来る、
そのお手本を見せてもらった気がします。

 

捜査バカたちの下で働く13係のメンバーの描き方も良いですよね。
陣内だろうが、佐久だろうが、
その意図するところを即座に読み取って行動する13係は、
相手が誰であれ、非常に柔軟で馴染みやすく反応が速い、
とても使い勝手のいいチーム。
だから、佐久みたいな面倒くさい人間相手でも、
うまく順応するのかもしれません。

彼らの仲の良さも 好もしいです。
「おまえも島野さんに抱きしめてもらえよ」なんて
手に怪我をした太田(神尾佑)をからかう小菅(渡辺)、
若い風間(篠田光亮)を突き飛ばして
太田を島野(田辺)にくっつけようとする加藤(田中隆三)、
それを見て笑っている中藤(猪野学)、
意味が分からずにキョトンとしてる島野、の件(くだり)なんて、
もう彼らが可愛くて可愛くてw
観ていて楽しくて嬉しくて仕方なかったです。

その13係につかず離れず、の屋敷(塚本高史)、
塚本さんが表情だけで雄弁にいろんな感情を伝えてくれて、
この役もすごく魅力的で惹かれます。

唐突な例え話で周囲をケムに巻く佐久も、
あいかわらず取っ付きにくいけれど、
そこが面白く、不思議な魅力にも感じられるようになって、
レギュラー陣のキャラもかなりいい感じに出来上がって来た様子。

彼らが今度はどんな所轄に行き、
どんな刑事たちと組むのか、と共に、
どんな場所(部屋)に捜査本部が立ち上がるのか、も
楽しみだったりする私なんであります。
(ちなみに今までで一番好きだった捜査本部(の部屋)は、
第2話の浅草中央署)

 

ゲスト:山田純大  脚本:真野勝成  監督:新村良二


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第5話)感想 

久々に観る、昭和の香り漂う正統派刑事ドラマ、という感じがしました。
拡大版で10分ほど放送時間が長かったとはいえ、
レギュラー枠で普通に放送されるのがもったいないぐらい
いい内容だったように思います。
スペシャルで2時間ドラマにしても良かったような・・
いやいや、それほど濃い内容を1時間ちょっとで放送してしまうのが、
このドラマのスタッフの心意気、と言えるのかもしれません。

 

事件そのものも、動機も、目新しいものではないんですが、
所轄の人情派刑事・師岡(でんでん)のキャラがすごく良く出来ていて、
長年その土地に住んでいるからこその地元民との親密感だったり、
情報通だったり、またそれゆえのしがらみだったり、弱みだったり、
いつのまにかそういうものにどっぷりと浸かってしまい、
結局は‘情けに引きずられて近づき過ぎた’ために追い詰められて行き、
事件にどんどん深入りせざるを得なくなってしまう・・
そんな彼の姿には、自業自得とはいえ 哀れなものがあって、
悪いことをしたには違いないんだけど、憎み切れなくて、
ラストシーンは何だかすごく切なかったです。

 

ずっと彼の傍にいた小菅(渡辺いっけい)が
佐久(小澤征悦)の策によって彼を追い詰める側に回る、
師岡とのあいだに通い始めた情まで利用される辛(つら)い役回りを、
顔色変えずに淡々とこなす(ように見える)その姿にも、
観ていて心に沁(し)みるものがありました、
彼の中でいったいどれだけの葛藤があったのだろうか、と。

しかし結局は、情よりも刑事としての本分が勝っている、
小菅のそのぎりぎりのところでの揺らぎなさが、
頼もしいやら切ないやら。
(そこが師岡との対比にもなっているのが興味深い)

そのあたりの小菅の気持ちというのは、
具体的に説明されているわけではないんだけど、
ついあれこれと想像したくなってしまうのは、
やはり、‘人間’が深く描かれているからのように思います。
いっけいさん、本当に‘いい役’をやってます
・・というか、
彼が演じることで、より‘いい役’になっているんだと思いますが。

 

佐久は3つ目の策を「苦肉の策」と屋敷(塚本高史)に言いますが、
最初 私はその意味を、普通に、
「苦し紛れに考え出した手段」という意味だと思っていました。
でも、本来の意味は、
「自分の身や味方を苦しめてまで行う
敵をあざむくための はかりごと」なんだとか。

八神が、呉の周瑜とその部下の話をしていましたが、
それってつまり、味方を100%信頼していなければ使えない手、
ということになるんですよね。
佐久は、それだけ小菅を信じて彼に賭けたんだ、と思うと、
なんだかそのことにも、ちょっと じわっと来てしまいました。

 

師岡を追い詰めていながら みすみす自殺させてしまった13係、
島野係長(田辺誠一)はその責任を取るために、
また 小菅(渡辺いっけい)も師岡に盾にされたことに責任を感じて、
それぞれ佐久管理官(小澤征悦)に退職願を提出、
佐久はそれを受け取り、上の指示を待つように伝えるのですが・・

この後、その退職願を上に見せることなく破り捨て、
13係が責任を負うことがないよう、
師岡の死を、汚職による懲戒免職の後 とする策を刑事部長に提案、
その進言が通って、13係はお咎(とが)めなし、ということに。

いやいや、そう来たか。
小菅を苦肉の策に使ったこともそうだけれど、
佐久管理官にようやくじんわりと人の温もりが感じられるようになって、
何だか、今回、すごく彼が好きになってしまいました。
終始無表情で、何考えてるか分からない冷血漢だと思ってたけど、
ちゃんと血が通った人だったんだ、と。

 

今回、そういう佐久の人間味を引き出すことが出来たのは、
八神刑事課長(佐藤浩市)の存在が大きい気がします。
彼と佐久の距離感が、谷中刑事部長(西田敏行)よりずっと近くて、
佐久もこの人には少しだけ心を許しているように感じられて、
二人の会話はどのシーンもちょっと頬笑ましかったです。

今回初出演の八神、すごく魅力的でした。
彼もノンキャリなんだろうか、佐久の何を知ってるんだろうか、
上司の谷中とはどういうつき合い方をしてるんだろうか、なんて、
ついついあれこれ深読みしたくなるほど興味深い人物。
佐藤浩市さん、今回限りなんてことなく、
ぜひまた出演して欲しいものです。

 

さて、ごひいきの島野係長(田辺誠一)ですが。
幇間(ほうかん)・・彼(師岡)はそう呼ばれているそうですよ」
太鼓持ちですか」
「管理官の嫌いなタイプじゃないですか」
「捜査員に好きも嫌いもありません」
階段を下りながら佐久と話すこのシーンが、
何気ないんだけど私は好きでした、
以前よりちょっと二人の距離が近くなったような気がして。

それと、大友企画に乗り込む時に、
車の中でメガネを薄い色の入ったものに変えるシーンにワクワク。
相手によってTPOを考えている島野、
サングラスの奥の眼が鋭くて凄みがあって、すっかりヤクザ対応仕様。
きっと彼、現場に出るのが好きで仕方ないんじゃないでしょうか。

 

・・で、何となく私の中で、
島野の「やんちゃ疑惑」が浮上して来てしまったんですけどね、
ええ、ええ、もちろん私の勝手な妄想ですけど。

警視総監の甥とはいえ、案外おぼっちゃん育ちなんかじゃなく、
やんちゃな少年〜青年時代を送ったんじゃないか、と。

もしかしたら、森下(@37歳で医者になった僕)が
『ミラクルドクター治子』というドラマを観て医者を志したように、
島野は、小〜中学生の頃『西部警察』の大門(@渡哲也)が好きで、
彼に憧れて刑事を志すようになったんじゃないか、とか、
だから退職願の字も、普段の彼のイメージにそぐわないような
はっちゃけぶりだったんじゃないか、とか。
・・いや、だからそれはまったくの私の妄想なんだけど。w

何だかそんなこと考えてたら止まらなくなってしまって、
島野の子どもの頃ってどんなだったんだろうと、
あれこれ想像して楽しんでしまいました。

 

話が逸れてしまいましたが・・
ともかく、そんなこんな いろんなこと含め、
本筋も、脇筋も、いつもに増して面白いと感じた第5話でした。
このハイレベルなクオリティがいつまで続くか、
引き続き、楽しみにしたいと思います。

 

ところで・・
聞き取れなかったセリフがあって気になっています。
最初の頃、トイレで八神が佐久に言った、
「だがお前は苦労するかもしれない。
中流ってのは・・・・・がねえ、人望ってやつがないとな」
それと、終盤やはり八神が佐久に言った、
「話聞かせてくれよサクシン、あえて・・・・・を切り捨てたって評判だぜ」
この二つの「・・・・・」部分。
特に二つ目は、佐久の人柄に繋がる一言なんじゃないかと思うので、
聞き取れた方、教えていただけるとありがたいです。

     追記:コメント欄よりお知らせ下さった方がいらっしゃいました。
       「才だけじゃ動かねぇ」「才で情を切り伏せた」だそうです。
       ありがとうございました。

 

ゲスト:佐藤浩市 でんでん  脚本:徳永富彦  監督:猪崎宣昭