今さら『婚姻届に判を捺しただけですが』感想

昨年(2021年)10月19日 - 12月21日TBS系で放送された連続ドラマ。今さらながらの感想です。

いや~このドラマも楽しかったなぁ!
一方は不毛な恋の隠れみのとして、一方は500万円の借金のために、偽装結婚した二人。 漫画原作らしく 突拍子もない設定ですが、ネチネチしてなくて、カラッとしていて、かと言って 深みがないわけではなく、観ていて上滑りすることがほとんどなくて、楽しかったです。

中学時代に好きになった同級生の美晴(倉科カナ)が自分の兄・旭(前野朋哉)と結婚してしまい、以来 彼女への想いを誰にも悟られまいとして「既婚者」という肩書を求めて結婚相手を探す百瀬柊(坂口健太郎)と、海外滞在の長い自由人の両親(ルー大柴杉本彩)の代わりに自分を育ててくれたおばあちゃん(木野花)の小料理屋が借金の担保にされ、売り払われる危機を救うために500万円を貸してくれる相手を探す大加戸明葉(清野彩名)の利害が一致し、二人が一緒に住み始め、揉め事を起こしながらも婚姻届けを出すまでが、1話でテンポよく描かれます。

その後、目覚まし時計の電池を預けてくれたり、ハンバーガーのチラシを褒めてくれたり、仕事のピンチを救ってくれたり、次第に柊のことを好もしく思うようになる明葉。
しかし、結婚祝いにと美晴が幹事をしてくれた柊の中学時代の同級生とのバーベキュー、酔った美晴を「おぶって帰れば?」とやっかみ半分で柊に言ってしまい、家に戻った後 柊から「(美晴と距離が縮まることを)僕自身が望んでいない。僕は誰にも悟られることなく美晴を思っていたい。この結婚は外野から余計な干渉や詮索をされないためのもの。僕にとって、結婚相手であるあなたも外野の一人」と がっつり心のシャッターを下ろされ、落ち込みます。

不毛な恋にどっぷり浸かっている柊に、「百瀬さん言ってましたよね、自分はこれ以上不幸になることはないって。じゃ幸せは?百瀬さんはこの先1ミリも幸せにならないんですか?」と疑問をぶつける明葉。
この言葉が心に刺さった柊は、中学時代の出会いからずっと、美晴の存在にどれほど救われてきたか、人付き合いの苦手な自分を全肯定して世界を広げてくれた美晴に対してどれほど真剣な想いでいたか、を初めて素直に話し、柊が 傷つきながらもピュアな気持ちを抱き続けていることに心動かされた明葉は、「私は百瀬さんの味方です」と彼を抱きしめます。
「これが友情のハグですか」と勘違いする柊ですが、明葉にしてみたら友情のハグじゃない、もう恋のフラグが立ってしまってるんですが‥

今まであまり友達のいなかった柊が、勝手に明葉に対して友達モードになって喜ぶのが可愛いかったです。美晴に対する想いも、うわべだけじゃないことが伝わってきました。

一方、好きという想いが芽生えたものの、偽装結婚を始めた時の「決して相手を好きにならない」という二人で交わした掟のため、気持ちを抑え込もうとする明葉。 好きになってもいけないし、好きになってももらえない、彼女もまた不毛の地に足を踏み入れた模様。

友達だからと、どんどん距離を詰めてくる柊。これ以上好きになっちゃいけないと、離れようとする明葉。
もともと友達が少なく、まして女友達は初めてで距離感が掴めない柊から「馴れ馴れしくしてごめんなさい」と謝られ、「この不毛な恋をやめるために、私は今日から百瀬さんの友達になる」と決心する明葉が、何だかちょっと気の毒ではあるけど、展開としては面白かったです。

妊活中の旭と美晴。自然妊娠は難しいと診断された美晴は、離婚届を置いていなくなってしまいます。
「美晴のこと愛してるけど、美晴が笑っててくれれば それが俺の隣じゃなくても‥」と言う旭に、「誰かの隣で笑ってる美晴見て、兄貴は満足なの?それでいいの?」と思いをぶつける柊。
その言葉がそのまま自分にも当てはまる、と気づき、柊は熱を出してしまいます。離婚して欲しくない気持ちも、その逆の気持ちも本当、という板挟みの感情を持て余して、苦しむ柊の姿がつらい。

結局、旭と美晴は元のさやに納まったのですが‥
「百瀬さんの不毛はもはや不動。私がすがれるのはこの偽装結婚だけ。でもこうして一緒にいられるだけで、好きでいられるだけで嬉しかったり」と、こちらもまた不毛一直線の明葉。

借金のことで頭を悩ませていた明菜を励まし、以後友人として相談相手になってくれていた牧原唯人(高杉真宙)は、「アッキーのこと好きになっていい?そうしたら励ましてあげられる」と、まっすぐにアプローチしてくる。
合コンで、「アッキーとは友達っていうより親友」という唯人と、それを聞いた柊が、何となくライバルっぽい空気になって行くのが面白かった。

この頃、私はすっかり唯人に肩入れしてて、柊早いとこ目を覚ませ~!って思ってました。w
まぁ、ラストは明葉と柊がうまくいくんだろうな、と最初から思っていたので、事あるごとに柊に揺さぶりをかける唯人を安心して見ていられた、ということもあるだろうけど。(結局、鈍感極まってる柊が好きなのよね、私w)

そんな時、明葉の両親が帰国。母・葉子の絵が売れて、500万円が明葉の手元に。柊に借金していることに気づいた葉子から、ちゃんと返すように、と言われてしまいます。

一方、唯人が勤めている動物病院で、「友達としてなら(明葉に)キスしてもいい?」と挑発され、明葉に励ましのキスをするも、頬を叩かれる柊。
ほんと不器用というか、空気読めないというか、乙女心わかんない、というか‥「友達だったらこれ以上ザワつかせないで、ほっといてください」と突っぱねられる柊。何だかちょっと可哀そうになって来た。

明葉の父母がまた外国へ行くことになり、柊が見送りに来ます。
どうしたらいいか分からなくて前に進めない柊ですが、「あなたたちなりでいいのよ、どんな選択でも、柊君と明葉の人生 あなたたちなりに決めればいい」と葉子に言われて、何か感じるものがあった様子。

柊は明葉の好きなガチャガチャをたくさん買って帰ります。
明葉は、尊敬する丸園先生(西尾まり)から「うわのそらで仕事してる、集中して」と言われ落ち込んでいることを素直に話します。
「僕はうまく明葉さんを励ませないかもしれないし、また怒らせてしまうかもしれません。でも僕たちなりの夫婦の形を作っていけたらと‥」二人の間に穏やかな空気が流れるのもつかのま、500万の札束が柊に見つかってしまい、勢いでキスする明葉。

翌朝、「そんなに離婚したがってたとは思わなかった」って、なんでそういう考えになっちゃうかな~柊!と突っ込みまくる私。
彼にしてみれば、明葉が500万円集めたというのは早く離婚したいからで、まさか自分を好きだなんて考えもしないことで。まあ、ここまでの流れを見れば、それも仕方ないことではあるのかもしれないんだけど。
「不自然にならないよう(離婚するまで)2か月ほど不仲を演出したい」と提案され、もはや反論する気も失せる明葉が不憫(ふびん)だ‥

仕事で美晴そっくりな女性・野上香菜と出会う柊。柊の偽装結婚を知った香菜から「愛してないならいくらでも替えがきく。あなたより私の方がはまると思う」と敵対心をぶつけられ、弱気になってしまう明葉。
香菜は、百瀬にも、「私の方が割り切った関係になれる。百瀬さんの理想のパートナーになれると思う」と言いますが、「明葉さんと一緒にいられることが楽しい。煩(わずら)わしくなんかないです。香菜さんに言われて気づいた、僕は明葉さんじゃないとだめなんだって」
香菜のおかげで、やっと自分の気持ちに気づく柊。

「私、百瀬さんのことが好き。離婚したくない」「僕もです。明葉さんこれからも一緒にいてください」やっといい雰囲気になった二人。
「結婚2か月にして、私は今さいっこーに幸せ!」絶対王者・美晴に負けないように、そしていつか百瀬さんと本当の夫婦に‥と夢想する明葉でしたが‥

「これからも偽装夫婦でやっていく。僕たち気が合いますよね、もう親友ですよね」 柊のその言葉を聞いて思いっきり引く明葉。「ラブじゃなくライクだと思ってるパターン?ハグしてもキスしても告白しても伝わらないって、なんでそんなに鈍感なんですか。この人に何を言ってもダメだ‥」

そんな折、唯人と元カノが鉢合わせ。「あんたみたいなちゃらちゃらした男、誰も相手にしない」と言われるも、居合わせた柊が「勉強も仕事もしっかりやってる」と唯人をかばいます。
「お礼は言わない。誰かに分かってもらおうなんて思ってない」「僕も同じ。不毛な恋を、偽装結婚を、誰かに理解してもらおうとは思わなかった。でも明葉さんに出会って初めて気づいた、自分の気持ちを理解してくれる人がいるってこんなに嬉しいことだって」素直に話す柊に、「いい加減に気づけよ、アッキーが好きだって」といらつく唯人。
まだ認めたくない柊は、「僕が好きなのは美晴です」と言いますが、唯人が「なら俺、告りますよ、今度アッキーに会ったら好きって言いますから」と宣戦布告。
出勤時間遅いはずなのに、毎朝6:50にめざましセットして柊を起こしてくれた明葉‥熱を出した時 看病してくれた明葉‥唯人に指摘され、改めて明葉への気持ちを考える柊。
(めざましの電池とか、いい小道具になっていて、こういうところうまいです)
「明葉さんと出会って僕は独りぼっちじゃなくなった。これは友情じゃないのかもしれない」そして‥

「明葉さんハグさせてください」おお、やっと自分の気持ち言えたか、と思ったら、その後よりによって「今すぐ僕と離婚して下さい」って、おい~柊っ!観てるこっちはいったい何回突っ込めばいいのよっ!
「好きな人に正直な気持ちを伝えたいと思うようになった、けじめをつけたい」
でも、この言い方じゃ、明葉が その‘好きな人’とは美晴のことだ、と思ってしまうのも仕方ないよな~。
離婚届に判を捺し、一度関係をリセットして、改めて一から始めたかった、その気持ちは明葉に伝わっていない。

何かと相談に乗ってくれていた麻宮祥子(深川麻衣)から「ちゃんと言わなきゃ伝わらない」と言われる柊。
「明葉さんが幸せならそれでいい、今は遠くから見ているだけで‥」「また不毛かよ。それビビッて告白できない言い訳でしょ。一生不毛な恋してろ、バーカ!」と唯人。
いつまでたっても自分の本当の気持ちをうまく伝えられない柊。
このあたりからの、唯人と麻宮の、柊の胸倉掴んで思いっきり揺さぶってるような強烈な後押しが本当に心地よかった。

柊は、仕事が忙しい明葉に差し入れ攻撃。明葉の自信作を提出したコンペがデキレースだと知って、せめて丸園先生に明葉の作品を見てもらいたい、と頭を下げる。
丸園先生はわざわざ事務所に来てくれて、明葉に「素敵なロゴデザインだった。ちゃんと見て良かった。頼まれたのよ、あなたのだんなさんに。でも感謝してる。いつかまた一緒に仕事しましょう」と言ってくれる。

「本当に好きになったら しんどいことの方が多くない?でも、しんどいって好きだからなんだよね。会いたいなら会えばいいし、好きなら好きでい続ければいいじゃん。アッキーが泣きたくなったら俺いつでも付き合うからさ」ほんと唯人はいい人だ!

麻宮の家でようやく心通い合う二人。「僕から言います。僕は明葉さんが好きです。これはライクじゃないです、ラブです」「私も百瀬さんのことがラブです」
いや~やっとここまで来たかぁ!とホッとして、あとは結婚届にもう一度判捺して・・って考えてたら(私ったら柊と同じ思考だわ)

今度は、明葉が、「よりをもどしても再婚する気はない。偽装で籍を入れたのであって、そうじゃなかったら結婚とか夫婦とかよく意味わかんないし、もっとちゃんと百瀬さんのこと知ってからじゃないとそういう気にはなれない」と。
新しい仕事を見つけてあげたり、結婚式場を仮予約したり、勝手に舞い上がってる柊に、「夫婦ってなんですか。一緒にいるだけじゃダメなんですか。とにかく外で妻アピール夫アピールはやめて下さい」とクギを刺す明葉。

明葉の気持ちが分からず、戸惑う柊は、麻宮に「自分が好きだって言ったらそれがゴールだと思ってません?好きと結婚は別物ですよ」と言われ、また考える。

家を貸してくれていた社長の都合で、引っ越さなければならなくなる二人。
「結婚してないのに一緒に住むのはまずいですよね」と言う柊に、「なんで勝手に決めるんですか。私のこと分かってくれてますか、私のことどれだけ知ってるんですか。仕事も、大加戸明葉という一人の人間として勝負したい。結婚という安定を求めたくない」一度距離置いた方がいい、と、おばあちゃんちに行くことを決める明葉。お気に入りの大事なソファーも売り払う、と。

私自身、二人の心が通じ合った後、柊が籍を入れて結婚したいと思う流れは自然に感じられたのだけど、そこに明葉が待ったをかける、という最後の一捻りが効いていると思いました。
結婚というものに囚(とら)われすぎない、もっと自由は発想があってもいい、という考え方が、明葉や森田の妻など 特に女性側から生まれている、というのが興味深かったです。それだけ、女性の方が結婚に対するしがらみが多い、ということが伝わって来ました。

「仕事、百瀬さんの妻だから指名してきたみたいで。この案件お断りした方がいい?」と、悩んで舛田(岡田圭祐)に相談する明葉。
「俺ら代理店の仕事いうんは、しがらみで出来た織物みたいな現場ばっかりや。けどな、ええもん作りたいねん。だから、そのしがらみの隙間でクリエーターさんは根性みせてもらわんと。先方の期待以上のもん作って、クライアントに、むしろ良かったわと思わせるぐらいの気概、これは大切や思う」
うん、舛田さん、いいこと言う。

奥さんと別れてパートナーとして距離を置くようになった森田(田辺誠一)。柊に「抵抗はなかったか」と聞かれ、「妻は自分の力で生きたがっていたんだと思います。夫婦にはいろんな形がある。あたりまえのことなのに、いざ自分の身に起こると受け入れられなかった。でも今はこれが自分たちの理想の関係なのかもと思えるようになってきました」
うん、森田もいいこと言う。

明葉は、おばあちゃんに「もう一度って素敵なことよ。会えなくなってしまったら「もう一度」は「もう二度と」になっちゃうからね」と言われ、考え込む。

明葉が処分した赤いソファーを取り戻した柊。 
「僕は明葉さんが好きです。明葉さんは、こんなに感情表現がへたくそな僕のことをいつも受け入れてくれた。婚姻届けに判を捺しただけですが、変わったんです。明葉さんが僕を変えてくれた。これ以上不幸になることなんてないと思っていた僕が、幸せになりたい、ってそう思うようになったんです。
あのソファーが運ばれ行く時に気づいた、僕の幸せは明葉さんと一緒にあのソファーでビールを飲んでる時間なんだって。僕は明葉さんと幸せになりたいです」
「私もです。百瀬さん結婚しましょっか。私たち、判を捺してこうして出会えたんだから、もう一度判を捺したらもっといいことあるんじゃないですかね」

私たちは私たちなりの夫婦になればいいんだ、歩み寄って、私たちの形を。
そうして、改めて婚姻届けに判を捺す二人なのでした~  ——めでたしめでたし。

明葉と柊の、お互いに対する想いが最初からズレていて、お互いを知る→好意を持つ→好きになる→結婚する、という流れがなかなか噛み合わなくて、そのすれ違いの中に、お互いの立ち位置や、こだわりや、秘めた想いなどが少しずつ練り込まれて行って、軽いだけでない、ポップなだけでない、本音がちゃんと描かれていたのが良かった。楽しみながらも、いろいろと考えさせられるところも多かったです。


登場人物について。
漫画原作独特の楽しく明るい世界観がきちんと伝わった、そのもっとも大きな要因は、明葉役の清野菜名さんが実にキュートだったこと。
まぁとにかく、彼女が生み出す表情の一つ一つが実に豊かで瑞々しくて、観ていてすごく惹かれてしまった。(そのあたり『消えた初恋』の道枝くんにも通じるところのような気がします)
彼女の演技だけでなく、身に着けているもの、住まいや仕事場、カフェなどの居場所等々、全体に彼女を取り巻く明るい空気感がとても自然で、安心して観ていられました。そのあたり、漫画原作ということを考えても、とても大切なことだったように思います。

対する柊役の坂口健太郎さんは、漫画的なオーバーアクションがほぼ皆無でナチュラル、それでいて そこはかとなく 愛嬌があって、2人の正反対と言ってもいい色味がうまく混じり合ってコンビネーションの妙が生まれて行くあたり、すごく魅力的で、見応えもあって、楽しかったです。
漫画的アクションにすっかりなじんでフワ~ンと舞い上がりそうな全体の空気を落ち着かせ、物語に引き込ませてくれたのは坂口さんのチカラが大きい。万事しっかり堅物な柊と、万事おおざっぱでズボラな明葉のコントラストがとても良かった。

明葉の両親を演じたルー大柴さんと杉本彩さん。
通常のドラマなら浮いてしまうようなキャラなんだけど、ドラマ全体の色味にうまく交わって、違和感がなかった。明葉がうまいこと中和させてくれていた気もします。

そんな両親とは真逆の純日本的おばあちゃんに木野花さん。
とってもいい味出してました。「僕らあまりお互いのこと知らずに結婚した」という柊に「相手のこと何でも分かってたら結婚なんて出来ないわよ。夫婦なんて分かんないからいいんじゃない?」とか、示唆に富んだ言葉をかけてくれて前に進ませてくれた、好きな役でした。

柊の家族(父・小倉久寛、母・朝加真由美、兄・前野朋哉、兄嫁・倉科カナ)は、明葉の両親に比べれば真っ当で地道な感じですが、それが大加戸家との良いコントラストになっていたようにも思います。お弁当屋さんというのも、ほっこりして良かった。
肝心な兄夫婦については、もうちょっと突っ込んで描いて欲しかった気もしますが、柊との関係をあまり重く出来ない、という配慮もあったのかもしれない。
不毛な恋の相手である美晴に対する、柊の中学時代からの気持ちの積み重ねがちゃんと描かれているので、ある程度の説得力はあったし、倉科さんが少しだけぶりっ子風味を加えつつ、会った人みんなが好きになってしまいそうなキャラをうまく作っていた気がします。
だからこそ、柊の美晴への秘めた想いが、より明葉の心を揺り動かすことにもなったんだろうと思いました。

明葉が働くデザイン事務所(中川翔子笠原秀幸小林涼子長見玲亜)は個性豊か。漫画寄りだけど、森田社長(田辺誠一)が落ち着いていて、ゆるやかに締めている感じ。
脇役ではあっても、森田自身にも妻との離婚という物語があり、それが明葉・柊との対比としても使われ、二人の道標のような位置づけのひとつになっていたのも、田辺さんのファンとしては楽しめました。

明葉の事務所に比べれば地味になりがちな柊の会社(岡田圭右森永悠希)ですが、上司の舛田役の岡田さんに関西のノリの良さがあり、いい意味で柊の周囲の空気感を明葉寄りにしてくれていた気がします。

そして、何といっても、このドラマで非常に良いスパイスになっていたのが、牧原唯人(高杉真宙)と麻宮祥子(深川麻衣)。
お願い上手で、誰の懐にもスーッと入って来る唯人と、思ってることをズバッと切り出せる麻宮が、とてもいい仕事をしていました。

唯人は、二人の気持ちを前に進めてくれてるとても大事な役どころ。彼を観ていて、つい『きみはペット』を思い出してしまった。
好きなポジションだし、自分の気持ちを隠すこともなく二人にぶつける、けど結果、二人を結び付けることになる、そのあたりの複雑な感情を、高杉さんが、しっかり、しかも魅力的に演じてくれていて、単純な当て馬じゃなくて、とても良かったです。
2人がそれぞれ明葉や柊にとっての恋のライバルとまで行かない、最後にはよきアドバイザーみたいな、二人の隠れたキューピットみたいな感じになっていて、観ていて楽しかったり感心したり。
それだけに、ラスト、他の人たちがそれぞれカップルになる、という落としどころがあったのはいいとしても(一番うけたのは丸園先生(西園まり)と舛田さんだわ)、唯人が安易に麻宮とくっつくみたいな展開にはしないで欲しかった。
あの流れとしてはそれほど不自然ではなかったとしても、特に唯人は明葉に対してちょっと危険な感じのままでいて欲しかった‥というのは、きみぺで蓮實さん押しだった私のワガママなのかな~‥う~ん、ワガママなんだろね~‥(自分でも分かってるのさ。苦笑)


『婚姻届に判を捺しただけですが』
放送:2021年10月19日 - 12月21日 毎週火曜 22:00 - 22:57
原作:有生青春 『婚姻届に判を捺しただけですが』
脚本:田辺茂範 おかざきさとこ  監督:金子文紀 竹村謙太郎 井村太一 濱野大輝
音楽:末廣健一郎 MAYUKO エンディング:あいみょん「ハート」
プロデューサー:松本明子 那須田淳  製作:TBSスパークル TBSテレビ
出演:清野菜名 坂口健太郎
倉科カナ 高杉真宙 深川麻衣 前野朋哉
中川翔子 笠原秀幸 小林涼子 森永悠希 長見玲亜
杉本彩 ルー大柴 小倉久寛 朝加真由美
岡田圭右 木野花 田辺誠一 他
公式サイト