今さら『女王の法医学 ~屍活師~3』感想

2023年7月3日20:00からテレビ東京系で放送されたドラマ『女王の法医学 ~屍活師~3』の、今さらながらの短め感想です。

今までの3作の中で、この作品が一番面白かったです!
過去2作は、田辺誠一さんのファンなのでどうしても村上刑事に目が行ってしまって、桐山ユキ(仲間由紀恵)との関係性を中心に観ていた感が強かったのですが、今回は、あまりそこに気を取られなくて済んだ、というか、二人の(おそらくは本来の)距離感がやっと掴めたというか、すごく自然な形で自分の中でストンと腑に落ちたところがあって‥
私が一番好きだったはずの村上のユキへの不愛想で嫌味な対応というのが 今回はまったくなかったのですが、もうそれで正解!と思いました。

最初の事件ではユキが施したクリッピング術が、二つ目の事件では自分のせいで愛する人を喪(うしな)ったと責める結衣の姿を通して 過去のユキが背負ったものが、それぞれ浮き彫りになり、やがて過去の村上理の死の輪郭が浮かび上がって来る‥そのあたりの、二つ事件とユキとの関連性が物語に無理なく溶け込んでいて、すんなり感情移入出来た気がします。
つい欲が出て、ユキの手術のせいではないかもしれない 村上理の死の謎、とか、その背後にあるもの、とか、今後この物語の核心に迫るような伏線が撒かれていたのではないか、と、勝手に解釈。
(その流れで、教授が車椅子なのはなぜか、とか、つい横道に逸れてしまったり)
それもこれも、そういう深読みをしたくなるような内容だったから、なんですよね。

今回、ワンコ(松村北斗)の存在が非常に重要だったのですが、そのプレッシャーに見事応えた松村くんに拍手。
ユキへの不信感をぬぐえない村上に、「村上さんや御両親はもちろんですけど、婚約されてた桐山先生も辛かったですよね。結婚を約束してた人を、好きな人を手術で死なせてしまったなんて‥」と言って、ユキ自身も傷ついたことに思いを馳せさせたり、人間の感情も大事だと言ったり‥
で、丹羽教授(石坂浩二)がユキに言った、「私だけかな、犬飼一くんがどこか村上理くんに似ていると思うのは。まっすぐで、感情を大切にするところがね」という言葉で、何だかもうすごく合点が行ったのですよね。
中途半端に感じられたユキに対する村上の立ち位置も、私が勝手に(田辺さんのファンとして)こうあって欲しい、でも何だかそうじゃないのかも‥といった憶測が生んだもので、教授の言葉によって、ユキとワンコのバディとしての親和性が(今回ワンコが成長したおかげで)より納得行く流れになった気がします。
村上ファンとしても、中の人(田辺さん)ファンとしても、ユキと距離が離れたと感じられることが寂しいとは思わなかった。むしろ、そのことで、村上と弟・理とユキの距離感が、私の中で、気持ちよく落ち着いた、と思えたので。

事件については、結衣役の徳永えりさんが抜群の存在感‥というか、むしろあまり役として前に出ない、その控えめな感じがこの役に見事に嵌(はま)っていて、素晴らしかったです。
てか、前回といい、ワンコ 事件に巻き込まれ過ぎ。(まあそれも、TVドラマ全般によくあることではあるんだけどw)

友人・亮平(佐野岳)と結衣の結婚2次会に呼ばれたワンコ。
亮平の毒物死。自殺なのでは? 研究を続けたかったのに大学を辞めて自分の父親の会社に入ることになって、追い詰めてしまったのでは?と思い詰める結衣。
そんなことない、ときっぱり否定するワンコ。
私が彼を殺した‥という結衣の言葉に、村上の弟を殺してしまったと思い詰めた自分を思い出すユキ。

自殺じゃないというワンコに、解剖しても何も異常は見られない、今分かってる事実はそれだけ、ワンコの気持ちは関係ない、とユキ。
「生きてる人間の気持ちも立派な判断材料ですよ。自殺じゃないのに自殺のまま処理されたら亮平くんは無念のまま死んで結衣さんは好きな人を死なせたってずっと苦しみますよ。それがどれだけ辛いか先生が一番よく分かってるじゃないですか‥」と口走ってしまい、ユキに無言で詰め寄られ、謝るワンコ。 
ここで丹羽教授の出番。「桐山くん、今の謝罪を受け入れるかな?」「‥はい」「犬飼くん、我々は私情を挟まず解剖によって判明した事実のみから判断する、それが法医学者だ。さらに君は事件には関係のない言うべきではないことまで口にした、次はないことを覚えておきなさい」と きつくお灸をすえる名裁(さば)き。
この時ワンコが壊した鉢植えから、ビールをこぼした件に繋げる、ワンコとユキの連携も良かった。

「結衣さんを疑ってるんですか」と言うワンコに、「全員を疑うのが仕事だ」と結衣に会いに行く村上。
話を聞く村上の 結衣を見る眼差しが、優しくて、痛ましい思いもあって、でも、疑いの色も少し含んでて‥法医学者が解剖によって判明した事実のみから判断するのと同じように、刑事もまた 示された事実のみから真相を探り出そうとする、その上で村上は生きている人の気持ちも汲み取ろうとしている‥感情を大切にしようとするのは、理やワンコだけじゃない‥と、私には何だかそんなふうに思えました。(多分にファンとしての贔屓目(ひいきめ)を含んでいるかもしれませんが)

ワンコに 亡くなった村上理のことを話す教授。「二人とも優秀な医師だった、桐山くんは脳外科医として村上くんは病理医として。村上くんと一緒にいる時の桐山くんはいつも笑顔だった。愛する人を死なせてしまった‥あの時の桐山くんの姿は今でも忘れない、味覚障害になるほどのダメージを受けたんだからね。もう10年になるかねぇ‥」
その味覚障害を少しずつ自覚し始めているユキ。ゆっくりとですが、彼女も変わろうとしているのかも‥

辛いせんべいをユキに無理やり食べさせられて、辛すぎるから中和しないと、と甘いものを探すワンコ。中和という言葉からヒントを得るユキ。
一方、村上も、SNSの写真から亮平の同僚・沙也加(高田夏帆)を疑います。
ユキは、アコニチンとテトロドトキシンを使って死亡を遅らせたのではないか、と推察。
この時の法医学室みんなで言葉を継いで行く説明が分かりやすかったです。

沙也加を訪ねた結衣、二人の会話の緊張感が、キリッとしていてすごく良かった。
亮平を好きだった二人の、想いたけのぶつけ合い、沙也加が淹れた紅茶‥
何かあるんじゃないか、と目が離せなかったです。

一方で、真相に近づいて行くユキたち。
ユキに、タダスと初めて名前呼ばれて張り切る林田匡(小松利昌)がかわいい。
猫の手→犬の手→ネズミと繋がるのも面白い。しかもそれを言ってるのがユキってことで、なおさらツボに入ってしまいました。
そして村上たちも‥そこから真犯人に繋がる流れ‥

亮平の手が荒れていた原因は、陶芸で使われる釉薬。亮平は、結衣のために内緒で陶芸教室に通っていたのですね。
「あなたに会えて彼は幸せだった」というユキの言葉、そっくりユキに送りたい、と思いながら聞きました。

「あの時、村上理くんのご遺族が納得出来ず、私は解剖を勧めたんだ。そうすれば、亡くなった理くんが何か教えてくれると思ったから。どんなに難しい手術でも、君が自信をもって臨んだのなら、成功するはずなんだ。ひょっとして解剖に何か見落としがあったんじゃないかと今でも‥」と話す教授に、
「私が彼を死なせたんです。解剖でそれがはっきりして良かったと思ってます。」とユキ。
でも‥やっぱり何か裏がありそうだよなぁ‥こりゃ続編あるよね きっと、と期待してしまう私。
(ちなみに、教授の言葉にかぶる たばこを吸う村上の横顔が、私的に一番の萌えポイントでした)

エピローグ。
解剖室で遺体を前にああでもないこうでもないと悩むワンコ。
「いつか犬飼くんも真実を見ることの出来る法医学者になるかもしれない」という教授の言葉を思い出したものの、道は長そうで、まだまだワンコか‥とため息交じりのユキ。
そして「屍は活ける師なり」と言うユキの、あいかわらず美しいまなざし・・余韻の残るラストシーンでした。

くどいようですが 改めて‥続編(あるいは連ドラでもOK)を待っています。


『女王の法医学 ~屍活師~3』
放送2023年7月3日20:00-21:54 テレビ東京
原作:杜野亜希「屍活師」 監督:村上牧人 脚本:香坂隆史
チーフプロデューサー:中川順平(テレビ東京
プロデューサー:黒沢淳(テレパック)、雫石瑞穂(テレパック)、山本梨恵(テレパック
制作:テレパック 製作:テレビ東京 BSテレ東 テレパック
出演:仲間由紀恵 松村北斗SixTONES
徳永えり 佐野岳 高田夏帆 飛永翼 中村靖日
新実芹菜 小松利昌 石坂浩二 田辺誠一 他