『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第5話)感想

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第5話)感想 【ネタバレあり】

久々に観る、昭和の香り漂う正統派刑事ドラマ、という感じがしました。
拡大版で10分ほど放送時間が長かったとはいえ、
レギュラー枠で普通に放送されるのがもったいないぐらい
いい内容だったように思います。
スペシャルで2時間ドラマにしても良かったような・・
いやいや、それほど濃い内容を1時間ちょっとで放送してしまうのが、
このドラマのスタッフの心意気、と言えるのかもしれません。


事件そのものも、動機も、目新しいものではないんですが、
所轄の人情派刑事・師岡(でんでん)のキャラがすごく良く出来ていて、
長年その土地に住んでいるからこその地元民との親密感だったり、
情報通だったり、またそれゆえのしがらみだったり、弱みだったり、
いつのまにかそういうものにどっぷりと浸かってしまい、
結局は‘情けに引きずられて近づき過ぎた’ために追い詰められて行き、
事件にどんどん深入りせざるを得なくなってしまう・・
そんな彼の姿には、自業自得とはいえ 哀れなものがあって、
悪いことをしたには違いないんだけど、憎み切れなくて、
ラストシーンは何だかすごく切なかったです。


ずっと彼の傍にいた小菅(渡辺いっけい)が
佐久(小澤征悦)の策によって彼を追い詰める側に回る、
師岡とのあいだに通い始めた情まで利用される辛(つら)い役回りを、
顔色変えずに淡々とこなす(ように見える)その姿にも、
観ていて心に沁(し)みるものがありました、
彼の中でいったいどれだけの葛藤があったのだろうか、と。

しかし結局は、情よりも刑事としての本分が勝っている、
小菅のそのぎりぎりのところでの揺らぎなさが、
頼もしいやら切ないやら。
(そこが師岡との対比にもなっているのが興味深い)

そのあたりの小菅の気持ちというのは、
具体的に説明されているわけではないんだけど、
ついあれこれと想像したくなってしまうのは、
やはり、‘人間’が深く描かれているからのように思います。
いっけいさん、本当に‘いい役’をやってます
・・というか、
彼が演じることで、より‘いい役’になっているんだと思いますが。


佐久は3つ目の策を「苦肉の策」と屋敷(塚本高史)に言いますが、
最初 私はその意味を、普通に、
「苦し紛れに考え出した手段」という意味だと思っていました。
でも、本来の意味は、
「自分の身や味方を苦しめてまで行う
敵をあざむくための はかりごと」なんだとか。

八神が、呉の周瑜とその部下の話をしていましたが、
それってつまり、味方を100%信頼していなければ使えない手、
ということになるんですよね。
佐久は、それだけ小菅を信じて彼に賭けたんだ、と思うと、
なんだかそのことにも、ちょっと じわっと来てしまいました。


師岡を追い詰めていながら みすみす自殺させてしまった13係、
島野係長(田辺誠一)はその責任を取るために、
また 小菅(渡辺いっけい)も師岡に盾にされたことに責任を感じて、
それぞれ佐久管理官(小澤征悦)に退職願を提出、
佐久はそれを受け取り、上の指示を待つように伝えるのですが・・

この後、その退職願を上に見せることなく破り捨て、
13係が責任を負うことがないよう、
師岡の死を、汚職による懲戒免職の後 とする策を刑事部長に提案、
その進言が通って、13係はお咎(とが)めなし、ということに。

いやいや、そう来たか。
小菅を苦肉の策に使ったこともそうだけれど、
佐久管理官にようやくじんわりと人の温もりが感じられるようになって、
何だか、今回、すごく彼が好きになってしまいました。
終始無表情で、何考えてるか分からない冷血漢だと思ってたけど、
ちゃんと血が通った人だったんだ、と。


今回、そういう佐久の人間味を引き出すことが出来たのは、
八神刑事課長(佐藤浩市)の存在が大きい気がします。
彼と佐久の距離感が、谷中刑事部長(西田敏行)よりずっと近くて、
佐久もこの人には少しだけ心を許しているように感じられて、
二人の会話はどのシーンもちょっと頬笑ましかったです。

今回初出演の八神、すごく魅力的でした。
彼もノンキャリなんだろうか、佐久の何を知ってるんだろうか、
上司の谷中とはどういうつき合い方をしてるんだろうか、なんて、
ついついあれこれ深読みしたくなるほど興味深い人物。
佐藤浩市さん、今回限りなんてことなく、
ぜひまた出演して欲しいものです。


さて、ごひいきの島野係長(田辺誠一)ですが。
幇間(ほうかん)・・彼(師岡)はそう呼ばれているそうですよ」
太鼓持ちですか」
「管理官の嫌いなタイプじゃないですか」
「捜査員に好きも嫌いもありません」
階段を下りながら佐久と話すこのシーンが、
何気ないんだけど私は好きでした、
以前よりちょっと二人の距離が近くなったような気がして。

それと、大友企画に乗り込む時に、
車の中でメガネを薄い色の入ったものに変えるシーンにワクワク。
相手によってTPOを考えている島野、
サングラスの奥の眼が鋭くて凄みがあって、すっかりヤクザ対応仕様。
きっと彼、現場に出るのが好きで仕方ないんじゃないでしょうか。


・・で、何となく私の中で、
島野の「やんちゃ疑惑」が浮上して来てしまったんですけどね、
ええ、ええ、もちろん私の勝手な妄想ですけど。

警視総監の甥とはいえ、案外おぼっちゃん育ちなんかじゃなく、
やんちゃな少年〜青年時代を送ったんじゃないか、と。

もしかしたら、森下(@37歳で医者になった僕)が
『ミラクルドクター治子』というドラマを観て医者を志したように、
島野は、小〜中学生の頃『西部警察』の大門(@渡哲也)が好きで、
彼に憧れて刑事を志すようになったんじゃないか、とか、
だから退職願の字も、普段の彼のイメージにそぐわないような
はっちゃけぶりだったんじゃないか、とか。
・・いや、だからそれはまったくの私の妄想なんだけど。w

何だかそんなこと考えてたら止まらなくなってしまって、
島野の子どもの頃ってどんなだったんだろうと、
あれこれ想像して楽しんでしまいました。


話が逸れてしまいましたが・・
ともかく、そんなこんな いろんなこと含め、
本筋も、脇筋も、いつもに増して面白いと感じた第5話でした。
このハイレベルなクオリティがいつまで続くか、
引き続き、楽しみにしたいと思います。


ところで・・
聞き取れなかったセリフがあって気になっています。
最初の頃、トイレで八神が佐久に言った、
「だがお前は苦労するかもしれない。
中流ってのは・・・・・がねえ、人望ってやつがないとな」
それと、終盤やはり八神が佐久に言った、
「話聞かせてくれよサクシン、あえて・・・・・を切り捨てたって評判だぜ」
この二つの「・・・・・」部分。
特に二つ目は、佐久の人柄に繋がる一言なんじゃないかと思うので、
聞き取れた方、教えていただけるとありがたいです。


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本:徳永富彦 監督:猪崎宣昭 ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日) 金丸哲也(東映) 和佐野健一(東映) 
音楽:吉川清之 主題歌:加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 制作:テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 佐藤浩市  
ゲスト:でんでん  『TEAM』公式サイト