『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部(第8話)感想

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第8話)感想 【ネタバレあり】

佐久管理官(小澤征悦)が谷中刑事部長(西田敏行)のもとを訪ね、
半年前、未解決のまま捜査本部が解散となった
女性研究員殺害事件の再捜査をしたい、と申し出ます。
なぜ今さら、と訝(いぶか)る谷中に、佐久は、
「ちゃんねるツー」というサイトに、
「半年前の目黒の研究員殺害事件はまだ終わっていない。
工学博士関田がすべてを知っている」という書き込みがあり、
しかもそれが1時間後には何者かによって削除されてしまう、という
不審な出来事があった、と。

しかし、その関田教授(浅野和之)は、
実用化されれば7000兆円の国益をもたらすと言われる
メタンハイドレートの採掘方法を考え出した人物。
彼が犯人だったら、研究が止まってしまう可能性が出てくるし、
そのあいだに他国に先を越される恐れも出てくる。
そんなことになってしまわないように、
実は、経済産業省が 圧力をかけて捜査本部を解散させ、
ネットの書き込みを削除させていたのでした。


そんな裏事情を知ってもなお捜査を続行しようとする佐久管理官を、
陶久(すえひさ)経済産業省政局長(中村育二)は
国益より瑣末なたった一人の女の事件を取る気ですか?」
と咎(とが)めます。しかし佐久は、
「その一人一人が集まって国家というものが成り立っています!」
と強い口調で突っぱね、
さらに、谷中から「うやむやにしろ」と言われて、
「管理官という職務は事件解決に向け全力で指揮を執るものと
心得ております。谷中部長、私はあなたにそう教わりました。
7000兆円などなんの関係もありません!」
と きっぱりと跳ね除(の)けます。
そして、事件の全貌が明らかになった時には、関田教授に対して、
「あなたは自分のした事を恥じるべきだ。
人に教える立場であるにもかかわらず体面にだけ目が行き
人を利用した。
国から援助を受ける研究者であるにもかかわらず
目先の私利私欲に走った。
布川麻奈美さんは彼(高橋)に殺されました。
だがその前に 彼女はあなたに殺されていたも同然だった!」と糾弾。

この三つの啖呵(たんか)が本当に歯切れが良くて、ゾクゾクしました。
佐久管理官の輪郭だけでなく、
内面も、かなりくっきりと見えて来たような気がします。
最初は、彼がどんな人間なのかまったく読めなかったのですが、
じわじわと、その人となりがにじんで来るにつれ、
魅力的な味わいが出て来て、
やっと佐久という人間の大きさや深さが分かって来た、
さぁこれからますます面白くなるぞ、と思ったら、
もう次回が最終回という・・ああもったいない!


小川(モロ師岡)ら所轄の刑事たちが捜査に本腰を入れた時と、
屋敷(塚本高史)が谷中から預かった盗聴器を、
わざと佐久の分かりやすいところに置いたのを見た時、
佐久が かすかに浮かべた笑みも良かった。
それって、彼らが佐久の策に乗ったから、じゃないと思うんですよね。
佐久には たどり着くべきゴールが見えている、
自分が目指すその同じゴールに向かって部下たちも動き始めた、
そのことを知って、少しだけ心を緩(ゆる)めたんじゃないか、と。

それは、13係に対してもそうで、
島野(田辺誠一)と加藤(田中隆三)に
小川(モロ師岡)と一緒に夕食を共にするよう指示する、
それは、捜査の糸口を見つけ出して欲しい、
やる気のない所轄の刑事たちへのカンフル剤となって欲しい、
という思いがあってのこと。
島野って、いつも佐久の指示に「なんで私が?」という顔をする、
ちょっと天然なところもありながら、
(何でリゾット注文しちゃうの?ってあたりも含めw)
ちゃんと事件解決の足掛かりになることを見つけて来るんですよね。

彼が率いる13係は、
いつもの小菅(渡辺いっけい)や太田(神尾佑)に加え、
今回は加藤(田中)がいい働きをしていました。
この人も、地味だけどしっかりした歯ごたえがありそうで好き。
13係のおとうさん、って感じがします。
(ちなみに私のイメージでは おかあさんは小菅さん)

屋敷(塚本高史)も事件に積極的に入り込んで来るようになって、
すっかり刑事らしくなって来ました。
けして佐久が彼に対して何か特別なことを言ったわけでも
やったわけでもないんだけど、
いつのまにかそうなってしまっている、佐久マジック。
「どうして自分から壁を作るのか、あの人を見ていて不思議に思う」
という屋敷の言葉には、
すでにかなり佐久に傾倒している様子が伺えます。

その疑問に応える小菅。
「捨てるものがないのか 守りたいものがあるのか、どっちだろうな」
と なかなか意味深なことを言ってましたが、
私、画面の前で「そりゃ どっちもでしょ」と即答してました。w


高飛車だけどまっすぐな信念を持つ佐久と、
生真面目だけど天然な島野、
その下で働く13係(特に小菅)がしっかり二人を支え、
屋敷が 刑事という仕事に のめり込み始めた・・
そんなふうに、うまいこと各々のポジション取りが固まって来て、
これからそれぞれの個性や関係性がもっともっと深まって
面白くなって行きそうなのに・・
もう一度 声を大にして言おう、
ああ本当にもったいない、あと1回で終わりだなんて!


ところで、ひとつ気になったのですが、
佐久は なぜ ちゃんねるツーの書き込みを知ったのでしょうか。
膨大な量のネットの書き込みを
いちいち全部チェックしているとは到底考えられないので、
たぶん、彼のバックには、
『BORDER』の古田新太さんや滝藤賢一さんや野間口さんや浜野さん
みたいな、影の協力者がいるんじゃないか、と推測。
そう考えると、捜査本部が立ち上がる前に、
すでに彼には相当量の情報が入っているようにも思えて、
だからいつも、思い切った最初の一歩を踏み出すことが出来るのかな、
なんて・・はい、いつもの妄想ですけどね。w


佐久(=小澤)の魅力が前面に出てくるようになって、
なんとなく島野(=田辺)がその陰に隠れてしまった感は否めませんが、
だけど私は、突出せず、佐久を頂点とした『TEAM』の中に
(う)もれている島野も、けっこう好きだったりします。

今回、彼に対して私が感じた‘天然’ 疑惑は、
回をさかのぼって考えてみると、案外 的を得ていたりするのかな、
田辺さんならそういう島野もありだな、なんて思ったりもして。
ま、ファンの正直な気持ちとしては、
ものすごく多彩で豊かな表情を作れる人なのに、
島野という役に対して、その2割ぐらいしか使っていないのが
非常にもったいない気がしないではありませんが。


このドラマはロケが多くて、それも毎回の楽しみのひとつなんですが、
今回の目黒東署は、継続捜査ということもあり、
空気の淀んだ倉庫みたいな部屋が捜査本部ということになっていて、
これはさすがにセットだろうと思ったのですが、
全方向から撮影しているので、ひょっとしたらセットじゃないのかも・・
だとしたら、よくあんなピッタリな場所を探して来たなぁ・・
なんて、あれこれ考えるのも楽しかったりして。

谷中部長の部屋、捜査一課、小菅が屋敷を呼び出した喫煙室等々の
ブラインド越しの外の風景がリアルで、
木の葉が少し風に揺らめいたり、ライトが瞬いたり、
そんなほんのちょっとのことを観るだけで嬉しくなってしまいました。
 (この私の「ロケ好き体質」は、たぶん
 『空飛ぶタイヤ』あたりから育まれて来たものだと思う)


佐久が言った
「誰もが真実を見る事が出来るとは言えない。
しかし真実である事は出来る」という言葉、
谷中が佐久に向かって言った「君はこの先仕事をする気はあるか?」
という言葉にも、非常に深い意味があるように感じます。
これらの言葉の意味を考えながら、
最終回を楽しみに待つことにしたいと思います。


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本:吉本昌弘 監督:新村良二 ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日) 金丸哲也(東映) 和佐野健一(東映) 
音楽:吉川清之 主題歌:加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 制作:テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮
渡辺いっけい 西田敏行  
ゲスト:浅野和之 モロ師岡  『TEAM』公式サイト