今さら『スカイキャッスル』感想

2024年7月~9月、テレビ朝日系で放送されたドラマ。今さらながらの感想です。

ドロドロ系のドラマなんじゃないかと想像してちょっと気が引けていたんですが、子供の受験がメインで他にほとんど何も入り込まないし、設定があまりに現実離れしていて、導入部はかえって観やすかった‥なんというかリアリティなしの潔さと言ったらいいか。(1話で亡くなった人がいるのに不謹慎ですみません)

この空気感どこかで‥何かで‥と考えていてふと思い浮かんだのが、『本当は恐ろしいグリム童話』(桐生操)という本。
いや、私これ読んでないのになぜ浮かんだんだろう・・『スカイキャッスル』という絵本が出てきたせいですかね。あるいは「恐ろしい」と「童話」という かけ離れた言葉の並びが、幸せに見える紗英(松下奈緒)たちがどんどん不幸になって行くように思えたドラマの流れを想起させたからでしょうか。

思い切り振り切った世界観でありながら、観ていてしらじらしさをあまり感じなかったのは、演じ手の役への没入感が程良かったからかな。
登場人物では、導入部の戸田菜緒さんの柔らかな存在感と、虚勢を貫こうとする松下奈緒さんのカチッとした硬さみたいなものが、ドラマ全体を童話みたいな(リアリティのない)物語として上手に包み込んでいたように思います。

そこから中盤の杏子(比嘉愛未)夫婦のぶつかり合い。ありえないだんなさん(鈴木浩介)の言動に対し、怒り爆発して壁をぶっ壊す杏子の姿は、観ているこちらも爽快感がありました。

ザ・腰巾着な夏目夫婦(高橋メアリージュン本多力)も、わかりやすく良い味出してました。

一方で、一番まともだと思われる泉(木村文乃)に感情移入出来なかったのはなぜだろう。中盤観ていてしんどかった。あまりにもアクの強い登場人物の中で、泉が言葉にして振りかざす‘正義’をしらじらしく感じてしまったからでしょうか。でも後半、彼女なりに変わって行くきっかけが、香織(戸田菜緒)の夫(橋本じゅん)との出会いなのには、なんとなくホッとしました。(こういう思いっきり振り切れたドラマでも、作り過ぎないじゅんさんが観られたことも含め)

九条(小雪)の存在の意味は何だったのか。彼女の過去、母親に対する複雑な感情(遺恨というか何と言ったらいいか)も、現実的な重苦しさを逸(そ)らして‘童話’としてのベールが掛かっていることで観続けることが出来た気がします。ずっと謎だった部分が、最後に早い展開で手短(てみじか)に説明されてしまったのは ちょっともったいなかった気もするけれど、でもこのくらいだったから重過ぎずに済んだのかな、とも思いました。
(余談ですが、九条の秘書役の前原滉さん、最近気になってる俳優さんです)

英世(田辺誠一)が、あの年齢でもまだどこかおぼっちゃま感を漂わせているというのが絶妙で、それなりに外科医としての力量はあるらしいのに、絶対の信頼は得られていないあたり、もどかしさを感じつつもどこかで納得してしまった。

泉の息子・青葉(坂元愛登)が未久(田牧そら)殺害の疑いをかけられ、そこから皆が変わって行く展開はちょっと都合良すぎで弱い気もしたし、ラストに向けての紗英と英世の更生が、未久の死という重みの代償に見合うものであったかどうか、というのも疑問に思うところではあるけれど、あれほど執着していたスカイキャッスルを離れ英世の母親(藤真利子)の許(もと)に行くという選択が、紗英に課せられた大きな試練になるだろうと思われたのは良かったです。
ぎっしり詰め込まれた内容が次々うまく畳み込まれて行く最終回のスピード感には、観ていて潔さみたいなものも感じられました。

全体に「童話」としてのベールに覆われていたことで、紗英たちのむきだしの感情が‘痛み’として観る側に伝わって来ないことでの観やすさみたいなものはあったし、それゆえに描けた世界観みたいなものもあったと思うけれど、一方で 入り込めないもどかしさみたいなものも確かにあって、「遠くの世界の物語」としてでしか捉えられなかったのは(たぶん観方としては正解なんだろうけれど)ちょっと歯がゆい気もしました。

今さら『終りに見た街』ミニ感想

2024年9月21日、テレビ朝日系で放送されたドラマ。今さらながらのミニ感想です。

田辺誠一さんのファンとしては、主筋にまったく関係ないところでちょこっと出てくるだけなので感想入れようがないかもしれないな、というのが観る前の正直な気持ちだったのですが、ドラマとして面白くて引き込まれました。

原作は山田太一さん。1981年に別冊中央公論に初出された小説をもとに山田さんみずから脚本を書き、過去に二度ドラマ化されています。
今回は脚本が宮藤官九郎さんですが、視点がしっかりしている印象で、原作の味を損ねることはなかったんじゃないか、と感じました。そこに独特の笑いの要素をうまく絡めて、戦争ドラマとしての重苦しさを軽減し、伝えるべきところはしっかり伝えつつ、ドラマとしての観やすさ・面白さみたいなものもちゃんと練り込まれていたのが宮藤さんらしい、と思いました。
その空気をうまく生かせたのは、大泉洋さん・堤真一さん・勝地涼さん・吉田羊さん・三田佳子さんといった俳優陣の馴染み具合が絶妙だったから、とも言えるかもしれません。(そういう意味では、田辺さんも序盤の軽さを担っていた、と言えるのかも)

ドラマは、過去を知る人間たちが大空襲の到来を何とかして周囲に信じてもらおうとする一方で、彼らの子供たちは今を生きるために戦争の世の中を受け入れ突き進もうとする‥彼らの葛藤する姿を、どちらにも肩入れすることなく公平な目で捉えようとします。
しかし、そんな彼らの未来は突然 閃光に呑み込まれ、再び主人公が眼を開けると、廃墟になってしまった街が‥

・・何だかザワザワしました。一瞬にして失われるその速さに、その大きさに。大人たちが過去にとらわれているあいだに、新たな戦争が始まっていた、という思いがけない未来の生々しさに。
「歴史には、戦前と戦中と戦後しかないのだ」と言ったのは誰だったか。
ある意味一番安心な戦後(という書き方が正しいとは思わないですが)だと思っていたら、すぐ目の前に戦前が迫っている、いや、もう日本は戦前に足を踏み出しているのかもしれず、戦争は一瞬ですべてを奪い尽くすのかもしれない‥
そうならないためにはどうすればいいのか‥分からないけれど、まずはそのことを考え続けること、なのかもしれません。
過去を知り、未来を想像し、今を生きる‥
これ、どことなく、前回感想を書いた『マイシェルター』に繋がってる気もするなぁ・・なんてことを考えました。


・・・・・・・・う~ん‥書いてみて、全然 自分事として考えてないなぁ、と反省しきり。
自分の内にある生ぬるさ‥緊張感のなさ‥東日本大震災で削がれ、コロナで削がれたものは、大切なものだったのかもしれない‥などと脈絡なく思ったり‥
まとまらなくてすみません。


 『終りに見た街
放送: 2024年9月21日 21:00 - 22:54 テレビ朝日系 
原作:山田太一 監督:片山修 脚本:宮藤官九郎 音楽:沢田完
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子テレビ朝日
プロデューサー:中込卓也テレビ朝日) 後藤達哉(テレビ朝日
山形亮介(角川大映スタジオ) 和田昂士(角川大映スタジオ)
制作協力:角川大映スタジオ 制作:テレビ朝日
出演:大泉洋 吉田羊 勝地涼 三田佳子 堤真一 他

今さら『マイシェルター』ミニ感想

2024年4月14日、NHKBSで放送された藤子・F・不二雄さんのSF短編ドラマ。今さらながらのミニ感想です。

15分の短編ドラマ、しかもSFということで、物語に引き込まれるほどの緻密さはなかったですが、最後にちょっとした辛味があったのが良かった。

田辺さんは、もうすぐマイホームを建てる予定の男(浜野謙太)と居酒屋で居合わせて核シェルターを勧める謎の客。丸メガネにちょび髭という外見で、ちょっと不思議ちゃんな感じ。
浜野さんの妻が安達祐実さんで、マイホームのために在宅バイトを頑張ってるママ。
(つい最近観たせいか、何だかドラマ『3000万』を思い出してしまった)

核戦争の恐怖に憑りつかれた男がネットでシェルターの保有率を見ると、日本だけがめちゃくちゃ低い。ちなみにこれは ほぼ現実の数字らしい。改めて見ると衝撃的ですね。

家族に不満をぶつけられながらもシェルターに逃げ込んだ男と妻と子供たち。すると核爆発が起こり、シェルターの外には、助かるためにドアを開けさせようとする人々の怒声が。
男は、人々をシェルターの外に設置されたダイナマイトで追い払おうとしますが、どうしても爆破ボタンを押せない――というところで目が覚めます。

「シェルターはやめて核兵器反対の署名でもしよう」という結論に達する男。
宇宙人(福島リラ・田辺誠一)がその様子を見ています。「どうですかこの家族は。これまでの反応を総合しますと合格とみていいのでは?」「よかろう、救出リストに載せておけ。万が一の場合優先的に助け出そう」「出来ればそういう最終局面は迎えたくないが、地球人たちのことだから、果たしてどうなるか‥」

自分たちだけが助かればいい、と考えず、外の人間を破滅させる(ダイナマイトのボタンを押す)という行動を取らなかった男とその家族に、宇宙人は箱舟を用意する・・

爆破のための赤いボタンは、国とか地域とか大きな範囲ばかりでなく、家族の、あるいは一人ひとりの目の前にあるのかもしれない。それを押すか押さないかの判断を間違えた時、箱舟は誰も救うことなく地球を去る、ということもあるのかもしれない、などと考えました。
ほっこりとひんやりが共存する不思議なドラマでした。

監督のコメントに、「田辺誠一さんは驚くほど頭が柔らかく、人間離れした俳優さんでした。藤子・F・不二雄先生を敬愛されており、衣裳合わせから撮影現場までアイディアをどんどん出していただき、話し合いながらキャラクターを丁寧に構築していくことができました」とあり、田辺さんらしいなぁ、と感じて嬉しくなりました。


 『マイシェルター』(藤子・F・不二雄SF短編ドラマ・シーズン2より)
放送: 2024年4月14日 NHKBS 21:45-22:00
原作:藤子・F・不二雄
脚本:遠竹ミファ 演出:遠竹真寛
制作統括:古屋吉雄 川崎直子上田勝巳
制作:NHKエンタープライズ 制作・著作 :NHK
出演:浜野謙太 安達祐実 田辺誠一 他   

今さら『ハコビヤ』感想

2024年1月からテレビ東京系で放送された連続ドラマ。今さらながらの感想です。

田辺誠一さん久々の主演ドラマ。田辺さんが出演する深夜30分ドラマには良い印象のものが多いこともあり、楽しみにしていました。
赤と黒を基調としたオープニングがめちゃくちゃおしゃれで、田辺さんと影山さんもかっこ良くて、音楽も素敵で、もう、しょっぱなからワクワク――

レストランのオーナー白鳥剣(田辺誠一)のもとにバイト募集の張り紙を見てやって来た杏奈(影山優佳)は、レストランの仕事をテキパキこなし、あっという間に店に馴染んで行きます。
剣の裏の仕事は「運び屋」。杏奈はそれも承知だったらしく、そちらの仕事にも遠慮なく首を突っ込んで来ます。

35年前に出来たキッチン白鳥。19年前に剣が父親から継いだ店は、ランチしかやってなくてハコビヤの仕事も月2-3件‥って、生活やっていけるんだろうか、と素朴な疑問。
かなり繁盛してるみたいだから、大丈夫なのか。

ホットココアを頼んで10000円を払うのが、ハコビヤ依頼の合図。
いろんなお客さんがやって来ます。
届け先不明の親友にギターを届けて欲しい青年、不倫相手にスマホを届けて欲しい女性、ぬいぐるみを友達に届けて欲しい8歳の女の子、家出中の娘にバースディケーキを届けて欲しい母親、うさぎの着ぐるみを運んで欲しい店の常連、きっちり1年後にバラの花束を届けて欲しい男性、消息不明の恩師に自分が描いた絵を届けて感想を聞いてきて欲しい画家、自分を母親のもとに届けて欲しい少年‥
剣と杏奈は丁寧に話を聞き、依頼の品を届けに行きます。

彼らはなぜハコビヤに依頼しにやって来たのか、それぞれの事情に程良い説得力があって、ファンタジーとかメルヘンっぽい味わいにもすんなり入って行けて、面白かった。
まぁ、う~ん‥と考えてしまって馴染めなかったエピソードもありましたが、総じて剣の立ち位置に揺らぎがなくて、観やすかったです。

1話。大家さんや楽器店の店長の懐にスーッと入って行っちゃう剣は、いったい何者なのか。最後、「私はあなたの望みを届けただけです」と依頼人に言った時の表情が良かったなぁ。

2話。プロデューサーの懐にもスーッと‥剣は天性の人たらしなのか、観察力とリサーチ力のたまものなのか。杏奈に対する時の生真面目な感じと、人好きのする柔らかさが無理なく共存しているのが良いです。
依頼品を届けた後、夫婦の修羅場になる直前の去り際も、突っ込み過ぎずいい感じでした。
ハコビヤの仕事が、かならずしもみんなを幸せにするわけじゃないことを知る杏奈。彼女のキャピキャピ感というか感情過多な感じが、今のところ正直私にはちょっと辛いんですが‥落ち着いて来るでしょうか。

3話。フナムシの研究のことまで知ってる剣。前職の関係って何だろう?
友達がAIだったことをどう伝えたらいいのか悩む杏奈に、ふと何か浮かんだらしい剣。ん~いい表情だな。「あの二人なら大丈夫」って言った剣も好き。

4話。マジヤベェとか言いながら写真撮ってやってる剣さん、家出した葵を鋭い眼で見る剣さん、葵の母親に向けるまなざし‥etc、etc・・この回の剣さんの表情すべて良いのよ~。なんか、久しぶりにオタクの気分満喫してた自分。笑

5話。剣さん、新聞記者だったのね。FBI捜査官とか勝手に期待しちゃってた杏奈が面白い。いつも代金踏み倒す古株の常連・椿山(皆川猿時)のキャラ付けがしっかりしていたせいか、剣や杏奈の容赦ないツッコミがさく裂。「追い込むか」「地獄の果てまで」っていうやりとりには笑ってしまった。
特に杏奈の椿山へのきつめのツッコミが効いていて楽しかった。いつもこのぐらいドライでいいよ、杏奈ちゃん。(影山さんのキャラにも合ってる気がする)

6話。1年後に、と依頼された届け物は、性別も名前も変わった自分への贈り物だった。
女の子だったら美月って名前にしたかった、というお母さんの想いを受け止めたエピソードがいい。このお話好きだった。
「家族と会えないなんて辛いじゃないですか」と言う杏奈を見て、何か気づいたらしい剣の表情も良かった。 

7話。「人の気持ちを考えるって難しい」という杏奈に、「結局 人は他人の本当の気持ちなんてわからない。ただ、気持ちをわかろうとすることは諦めない方がいい」という剣。
もうちょっとウェットに流されないでメルヘンぽくまとまった方が良かったよう思うのですが‥私の好みの問題だけなのかなぁ‥う~ん‥

8話。「おかあさんのところに僕を届けて欲しい」と言う少年に、必ず届けると約束する杏奈。しかし、少年のお母さんはもうこの世にいなかった。
最後に、届け場所に「お母さんの所」と書いてある受取書のサイン、湊を引き取った母親の姉が書く。いいエピソードだった。
「運ぶだけがハコビヤじゃないんですね」と、ちょっと大人になった杏奈。「お母さんに会わなかった後の人生、私大好きですから」と、自分の母親のことにもケリをつけた様子。
本当はハコビヤなんて必要ないんだ。人と人との距離が近ければ、俺たちが物を運ぶ必要ないからな」いつもそんなふうに思いながらハコビヤを続けていたのね、剣さん。

―――最後まで観て、私はウエット過ぎるのが苦手なんだなと思いました。杏奈が時々感情を吐き出して泣いたり怒ったりするのをすんなり受け入れられないことが多かった‥でもまぁそれは、あくまで私個人の気持ち(好みの問題)でしかないのかもしれませんが。

それにしても。
久しぶりに俳優・田辺誠一を堪能させてもらったなぁ‥うん、私の好きな田辺さんがちりばめられていた。ベテランらしい余裕が感じられ、最初から安心して、あまり肩肘張らずに観ることが出来て楽しかった。
もう昔のようにめちゃくちゃ心を揺さぶられるということはないけれど(いや、そういう役に出会えば田辺さんはちゃんとまたそこに戻ってくれるんだろうという確信があるのも確かだけど)、時を経て、しっとりと、ゆるやかに、まろやかに、しなやかに、役に入り込んで、出しゃばることなく 観る者を納得させ、安心させ、満足させる‥そういう俳優さんであり続けてくれていることが嬉しいし、長いことファンやってきて誇らしくもある。(25年来のファンの感慨です、偉そうにすみません)
こんなことを書くのはこそばゆいけれど、やっぱり私は田辺誠一という俳優さんが好きだな、と、改めて気づかせてもらったドラマでした。

閑話。
日産が制作協力している、と言えば、田辺ファンには懐かしい『サボテンジャーニー』を思い出します。毎回終了時にクイズが出題されて、「サ」「ボ」「テ」と来て、次は絶対「ン」だと思ったら「ソ」だった、というオチに はまったっけ。この流れ、絶対田辺さん一枚噛んでるよね、と勝手に想像して、含み笑いしてる田辺さんの顔が頭に浮かんだ懐かしい思い出‥笑


 『ハコビヤ』
放送: 2024年1月12日 – 3月1日 テレビ東京系 毎週金曜深夜 24:52 - 25:23
脚本:政池洋佑 當銘啓太 守口悠介 綿種アヤ 高尾苑子
演出:日暮謙 松本拓 角田恭弥
オープニング:クボタカイ「gear5」 エンディング:オレンジスパイニクラブ「六号線」
プロデューサー:松本拓 馬渕義史 澤田賢一 小松俊喜
制作:テレビ東京 カーツメディアワークス 日産自動車(協力) 楽映舎(協力)
製作:「ハコビヤ」製作委員会
出演:田辺誠一 影山優佳 皆川猿時 他   

今さら『ギフテッドSeason2』感想

2023年10月からWOWOWで放送された連続ドラマ。今さらながらの感想です。

同年6月からフジテレビで『Season1』が放送されており、そちらは 四鬼神流古武術の惣領(当主)である高校生・四鬼夕也(浮所飛貴)がメインになっていました。
『Season2』は、夕也とバディを組む 警視庁捜査一課7係の天草那月(増田貴久)がメイン。
卓越した推理力を持つ那月が、殺人犯を見抜く眼を持つ夕也の力を借りて事件を解決して行くのですが、彼らが扱う事件は最初から最後まですべて繋がっていて、1話完結の形を取ることの多い他の刑事ドラマとはちょっと違った味わいになっています。

四鬼神流古武術については『1』で詳しく語られていますが、武術以外に 夕也には人を殺めた人間の周囲に黒い影が見える、という特殊能力が備わっていて、それが事件を解くヒントになったりもします。
さらに、『2』で重要なのは、事件の鍵を握る人物が 裏四鬼神流当主の八雲穂積(中山優馬)である、ということでした。

八雲は探偵を名乗り、夕也の周辺をうろつき始めます。
四鬼家の蔵にあった奥伝書を見た夕也は、裏四鬼神流に一子相伝で伝えられる一種の催眠術によって、怒りや憎しみといった負の感情を持った人を操り 人を殺させることが出来ること、裏四鬼神流の当主は自分では手を汚さない だから夕也の‘鬼の眼’でも黒い影は見えないことを知ります。

一方、那月は、連続する「殺意なき惨殺事件」に 父親・恒河(田辺誠一)が絡んでいることを知ります。恒河は元刑事で、那月の上司・鷲巣(小出伸也)とは同僚で友人。
2年前、突然失踪した彼は、極秘にこの事件を追っていたのでした。
息子・那月が同じ事件を追い始めたことを知り、恒河は那月にヒントとなるQRコードを送りますが、読み取りエラーに。新聞記者の山田(高橋努)から同僚の高牧(宮本茉由)経由で那月に届いたもう一つのQRコードも同じく。

那月は、7係と兼任で神原室長(高橋克典)が指揮を執る特命チームに配属され、「殺意なき惨殺事件」を本格的に調査することに。
事故現場近くの防犯カメラを見て、高牧が殺された現場にいたことで殺人の疑いをかけられた恒河が 去り際に防犯カメラに向かって「オールブラック」と呟いたことに気づいた那月は、恒河と謎解きをした子供の頃を思い出し、2つのQRコードを重ねることを思い立ちます。するとそこには、すでに殺された人たちの名前が。
このあたりの恒河と那月の連携プレーに説得力があり、親子であり刑事でもある二人の独特の関係性が見えて来て、じんわり来ます。

失踪する直前の鷲巣と恒河の会話。「那月のことを頼む。いつかはこの事件にたどり着き、興味を持つ時が来るだろう、だがあいつはまだ若い。この巨大な事件はまだ手に負えない」「おまえなら解決できると?」「捨て身ならきっと」「そういうところだ おまえに勝てないのは」と言われた時の恒河の表情が良かった。鷲巣に対しても、那月に対しても、単純ではないさまざまな感情が含まれているようで、好きでした。

情報を得るため、那月の相棒である竜崎刑事(泉里香)が八雲と接触
さらに八雲は夕也にも会い、手を組まないか、と。しかし夕也は表の当主として絶対に逃げない、と。
八雲に見つめられ揺らぐ夕也。八雲の目力がすごい。ちょっと試しただけ、と言うけど、かなり力がある感じですね。
二人の戦い。そこに那月と恒河も駆けつけ、八雲を追います。
閉館した博物館に追い詰めながら、八雲は手先にすぎない、黒幕がいるはず‥と自らの推理を那月に話す恒河。
緊迫した中での那月と恒河のバディ感、良かった。「オールブラック」(那月が恒河のヒントに気づく)の時もそうだったけれど、この二人は、父と子というより、もうちょっと距離がある感じがします。でも、気持ちの奥ではちゃんと繋がってる‥尊敬と信頼に裏打ちされたものがしっかりとある、みたいな。

突然、仲間であるはずの竜崎に背後から撃たれる恒河。うわっそう来たか!と観ているこちらもびっくり。竜崎が八雲に操られていたことを恥じて自ら死のうとするところを恒河が阻止。
那月に手帳を託し、恒河は那月の腕の中で息絶えます。
う~ここ 私としては一番の見どころでした。
父と子としての二人の微妙な距離感が一気に融けて、刑事ではなく親子に戻ったというか。
父さん!父さん!という那月の絶叫が哀しい・・

「父さんを殺したのは竜崎刑事じゃない、八雲穂積‥かならず見つけます」と誓う那月。
そして夕也に、八雲の背後にいる黒幕を必ず見つける、と。‥この時の那月の眼が暗くて重くて強くて、惹かれました。
恒河から託されたリストの意味‥全員ガーランド国務副長官と関わりがあった、と気づく那月。

那月は、恒河を撃って捕らえられた竜崎と会います。「どうして操られてしまったのか、私の中にも闇があった‥」と竜崎。彼女の闇というのは具体的には描かれてはいないのだけど、何となく伝わって来ました、事件の芯に自分だけがたどり着けないあせりと言うか、那月への一種の劣等感というか‥
「それでも君は悪くない。僕が君を信じるんだ、相棒だからね」と言う那月の、全幅の信頼を含んだ優しさが心地よい。

リストの最後の一人を狙う八雲。警護していた神原が八雲を撃ち、八雲は意識不明の重体に。

恒河から預かった血まみれの手帳の解析。
ガーランドの息子が神原の妻子の交通事故死に関わっている、つまり、神原にはガーランドを狙う動機があることを突き止める那月。

ガーランドは裏でアジアの麻薬市場を牛耳る元締めであることが判明、鷲巣らによって神原の計画は止められました。
「こんなやり方でなく正しい方法でガーランドを糾弾すべきだった。1000人を救うために10人の犠牲が必要だったとしても、彼らの命を奪う権利は誰にもない。あなたは家族を奪われた怒りや悲しみから目をそらすために他人を犠牲にしたんだ」と那月。
「天草さんもその苦しみは知ってる」と夕也。「でも天草さんは間違えなかった」
病院から逃走した八雲に撃たれ、裁かれるべきは‥と言葉を残して死ぬ神原。
八雲は再び行方知れずとなります。

「殺意なき惨殺事件」の終結
‥うーん、裏四鬼神流の八雲を絡めたところはいいとしても、神原に関しては、事件との関連性に深みがあまり感じられなかったのが残念。妻子の死への無念が、もうちょっと強く観る側に訴えるものであり、共感を得るものであって欲しかった気がします。

那月は「闇の眼に操られた者たちは全員心身喪失が認められるだろうって」と言います。竜崎は「ここを出たら警察を辞める。天草が私を責めないのは分かってる。でも、私自身が自分を許せない」と。
「なら、竜崎刑事の分まで僕が許す。だから一人で背負わないでよ。竜崎刑事が相棒じゃないと嫌なんだ。戻って来るのを待ってるよ」と那月。
これは私個人の好みかもしれませんが、最後まで二人の関係が同僚のままで、甘ったるくならなかったのがとても良かった。

依然足取りが掴めない八雲の存在が不穏。
どこかから聞こえてくる口笛。消える。歩き出す那月。その後ろに八雲の姿。なんか‥ぞくぞくしました。危ういんだよなぁ‥警察の人間だろうと、主人公だろうと、那月はあくまで普通の人間なので、八雲の催眠術に掛かってしまう可能性はゼロじゃない。那月がこれから先も負の感情を持つことがないように‥と祈りたい気持ちになりました。

四鬼家。「誰かを信じるってことは、傷つくリスクと隣り合わせだ。急に裏切られるかもしれないし、ある日突然いなくなるかもしれない。それでも僕は信じることを諦めたくない」と言う那月。それを聞いて、「あんた相変わらずだな」と夕也。
次の事件に向かう二人。那月が明るく言います、「やっぱり僕たちは最高のコンビだね」——


―――最初は、天草那月というキャラになかなか馴染めなかったのですが、恒河との繋がりが見えてきたあたりからラストにかけて、どこかリアルじゃないジュブナイル的少年っぽさみたいなものが那月の姿に重なるようになって、しっくり来るようになったような気がします。それは、増田さんの持ち味がうまく役に沁み込んで来たからじゃないか、と私には思えました。(私なりの解釈ですが) 
一方、四鬼夕也の浮所さん。全体的に少し硬かったかな。もう少しセリフに感情が乗ってもよかったかも。でも、逆にその硬さが、那月の人当たりの柔らかさと‘対’になっていたとも思える‥難しいところです。

四鬼家のセットについて。
那月は四鬼家に居候しているのですが、この屋敷がなかなか味わい深くて、照明も自然光に近いほの昏い感じをうまく出していて、独特の世界観に引き込むことに成功しています。実在する建物かと思ったら、どうやらセットらしい。驚きました。
お手伝いさん役で竹原芳子さんが出ていたせいか、『探偵・由利麟太郎』を思い出してしまった。
そのあたりのレトロ感みたいなものは、四鬼家だけでなく作品全体から感じられるものでもありました。
そういう空気にしっくり馴染む田辺誠一さん、うん、好きだな~やっぱり。


 『ギフテッドSeason2』
放送: 2023年10月14日 – 12月2日 WOWOW毎週土曜 22:00 - 22:30
原作:天樹征丸(原作)雨宮理真(漫画)
脚本:木江恭 継田淳 三浦駿斗 
音楽:信澤宣明  主題歌:NEWS「ギフテッド」
演出:池澤辰也 室井岳人 最知由暁斗 室井岳人
チーフ・プロデューサー:市野直親(東海テレビ) 青木泰憲(WOWOW
プロデューサー:河角直樹(東海テレビ) 小林祐介WOWOW
黒沢淳(テレパック) 近見哲平(テレパック) 野田健太(テレパック) 
制作:テレパック(協力) 製作:東海テレビ WOWOW
出演:増田貴久 浮所飛貴
泉里香 小手伸也 中山優馬 田辺誠一 高橋克典 他