『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第2話)感想

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第2話)感想 【ネタバレあり】

ドラマ全体が練れて来たせいか、
初回以上に面白かったです。

今回もまた、警視庁・刑事部長の谷中(西田敏行)が、
所轄の署長が必要ないと言っているのにゴリ押しで捜査本部を設置、
佐久(小澤征悦)と13係が向かうけれども、所轄の猛反発を食らう、
といった、初回とほぼ同じパターンで話は進むのですが、
佐久以下のメインキャストのキャラクターが前回より掴めている分、
観ている側としてもすんなりと入って行けたし、
何と言っても、登場する刑事たちのキャラがみんな立っていて、
彼らの熱やプライドや男臭さが捜査本部の中でぶつかり合い、
ぶつかり合ううちに捜査の方向性が構築され、
冷静沈着な管理官のもと、
本庁も所轄も一緒くたになって事件解決に向けて突き進んで行く、
その流れが非常に魅力的にテンポ良く描かれているので、
観ているこちらまで、その熱に取り込まれてしまったような気分で、
画面に見入ってしまいました。

「うちのみんな 向いてる方向が違うと思う」
と言っていた所轄署の事務方の小松(少路勇介)が
本庁も所轄もなく全刑事が一丸となって事件を追う熱気に
目をキラキラさせるようになる・・
「捜査本部」のあるべき姿が、そこにあるような気がしました。


一方、本筋の事件の方も単純ではなく、
被害者周辺の人間たちの思惑が複雑に絡まっていて、
犯人と断定した男が死体で発見された場面では、
刑事たちの落胆がこちらにも伝わって来るようでした。

犯人が親友を陥(おとしい)れて犯行に及んだ理由を聞かれ、
「ただゆかりが憎かった」と答えたその言葉が、
高校時代からの犯人の感情を掘り起こして読み返したくなるような
意味深いものになっていて、とても良かったと思います。

ただ・・
なにせ、事件そのものよりも、刑事たちの人間的魅力が満載なので、
今回も、ついそちらの方に気を取られてしまったのも事実で。


佐久の「あなた方は駒です」という横柄なセリフは、
今回も、初っ端(しょっぱな)から挑発的に使われているのですが、
観て行くうちに、何となく理解出来そうな気がして来ました。

「捜査の基本など考える必要はない」
「すべての情報は私にあげて下さい。
誰が何をするかなどあなたたちが考える必要はない」
「そういう主観的な感情は捜査の邪魔になる」
「主観的な推測は捜査に必要ない」etc・・
刑事たちに向かって放たれたこれらの断定的な言葉も、
「あなたは警察官としてもっとも大切なことを忘れている」
と署長に向かって言った言葉も、
捜査に支障をきたすような私的判断や感情や
無駄な意地や雑念を一切振り払い、
クリアな眼と頭で捜査に全力を注ごうとする佐久の、
一途な姿勢のあらわれなんだろう、と。

そしてもうひとつ、
各々の役割を明確にする、ということ。
管理官が刑事たちの適性を把握して班割をし、
刑事たちがそれにそって班ごとに足を使って情報や証拠を集める、
集めたものを管理官が分析、精査、犯人を絞り込む、
係長が適切な指示を出し、刑事たちが犯人を逮捕する・・
この一連の流れが、カチカチッと気持ちよく嵌(はま)って、
事件解決に向けて何十人もの刑事たちが一斉に動き出す姿には、
思わずワクワクしました。

小菅(渡辺いっけい)は 佐久を
身体のほとんどが脳みそで出来ているクモに例えたけれど、
どんな優秀な脳みそを持っていても、
手足を自在に動かせなければ獲物は捕まえられない。
「あなたたちは駒です」というのは、要するに、
佐久(管理官)という脳みそを持ったクモの手足になって、
余計なことを考えずに捜査に打ち込んで犯人を捕まえてくれ、
という意味なのではないか、と。


島野係長(田辺誠一)にデスクを命じた佐久の本当の狙いを、
島野本人は気づいていなかったかもしれないけれど、
捜査が進むにつれ、島野が自然と佐久の意図をくみ取って、
「適切な指示」をどんどん出して行くようになり、
やることがなくなった佐久がそれを黙って満足げに見ている、
その表情を観た時、
彼が島野に求めたものと、その先にある理想の「TEAM」の姿が
何となく見えたような気がしました。


さらに私が感じた このドラマの魅力の一端・・

こんなに、スマートでもない、かっこよくもない、
だけど、生き生きとした息遣いの感じられる
人間らしい汗の感じられるドラマは、久しぶりのような気がします。

太田(神尾佑)が歯を磨いている横で、
小菅(渡辺)がモーニングコーヒーを飲んでいたり、
目覚ましの音に驚いて止める風間(篠田光亮)の向こうで
中藤(猪野学)がアイロンをかけていたり、
という 捜査本部の朝の描写には和(なご)まされたし、
公衆トイレで 加藤(田中隆三)が所轄の刑事に「あと何件だ」と尋ね、
「80件ですね」と言われて渋い顔をする、など、
期限までの10日間、刑事たちが靴底を減らして調べ尽くす様子も
とても丁寧に描かれていて、好感が持てました。


そんな中で、佐久の抜け目ない策士の一面もちゃんと描かれていて。
小松を使って一芝居打った、というのもそうですが、
私が一番興味深かったのは、岩瀬に指輪の調査を依頼したこと。
「これは島野係長に・・」と言う岩瀬に
「質の良い経験を積んだあなたのほうが適任」と、
島野が聞いたら目くじら立てそうなことをシレッと言うあたり、
人をうまく策に乗せて使う手練れぶりは相当なもの。

屋敷(塚本高史)が DVDを所轄に向かって放り投げ、
その生意気な態度が所轄の刑事の怒りをかってボコボコにされた後、
ホテルでスカイツリーを見て「きれいだなぁ」とポツリと呟く彼に、
りんごを持って行くように言うところも良かったです。
‘策’ というより、むしろ、捜査本部の空気に馴染めない屋敷に、
佐久がほんの少し手を差し伸べたようにも見えたけれど。


一方の島野も、
ただひたすら佐久に反発して激昂するだけだった前回に比べ、
捜査の中でどんどん佐久のやり方を吸収して行く
その呑み込みの速さや、過去の資料に関する優れた記憶力など、
秘めた力を丁寧に引き出されていて、
キャラに深みが出てきたように思います。
13係を使って別捜査に動く、
メンバーとその密談をする窓枠の中の島野の表情が魅力的でしたし、
ラスト、「(佐久を)人間としては好きになれねぇな」
ともらす岩瀬(ダンカン)に同調するように口元を緩める島野も良かった。

田辺さん、このドラマではものすごく良い姿勢を保っています。
何となく時代劇で武士を演じている時と似ている気がして、
それもまた嬉しかったです。


佐久と島野の阿吽(あうん)の呼吸が感じられるようになり、
チームとして前進したかのように思える「管理官×13係」ですが、
一方で、谷中のタヌキぶりはあいかわらずで。
   ただの出世欲の塊(かたまり)なのか、
   あるいは、もっと大きなことを考えているのか・・
   佐久と島野を組ませたのは、
   自分の言うことを素直に聞きそうにない
   目障りな二人を潰すためなのか、
   あるいは、今までにない画期的なチームを
   作ろうとしているのか・・
なんて前回書いたけれど、ここで謹んで訂正させていただきます。
谷中は佐久と島野の能力を見抜いたうえで、
自分の出世のために
二人を最大限利用しようとしていただけなんですね。

だとすると、いずれ、
‘佐久+島野’ vs `谷中’ なんてことにもなって来るんでしょうか。
いやいや、潰すか潰されるか、じゃなくて、
『相棒』の杉下と小野田官房長みたいな関係になって欲しいです、
個人的には。


『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本:吉本昌弘 監督:猪崎宣昭 ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日) 金丸哲也(東映) 和佐野健一(東映) 
音楽:吉川清之 主題歌:加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 制作:テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 西田敏行  ゲスト:ダンカン 少路勇介  『TEAM』公式サイト