『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第1話)感想

『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』(第1話)感想 

『相棒12』終了後に始まった新ドラマ。
1時間の中にかなりの情報量を詰め込んであるので、
一度観ただけでは なかなか全体の流れが掴めなかったのですが、
二度観て、登場人物の立場やそれぞれの関係性、
それが事件とどう関わっているのか等々が呑み込めるようになって、
このドラマの面白さが見えて来た(私流の解釈ですが)ように思います。

分かりやす過ぎてサラサラッと流れてしまうドラマも多い中、
この「かなりの情報量」というのは、私にとってとても嬉しいこと。
とっつきにくいかもしれないけれど、
それだけ 見ごたえがある、ということでもあると思うので。

実際、テレビ朝日のこの時間帯の刑事ドラマに共通する実直な作り方が
この作品にも息づいていて、それが私にはとても心地よく感じられたし、
登場人物が男だらけの中、
初回から非常に緊張感のある空気が出来上がっていたのも、
すごく嬉しかったです。


密度の濃い脚本で、
レギュラーメンバーの設定からして単純ではなく、
なかなかのクセモノ揃いなのですが、
そんな中で 今回 私が一番魅力を感じたのは、
谷中刑事部長(西田敏行)でした。

「佐久(小澤征悦)が佐久が」と責任をなすりつけるような言い方にしても、
島野(田辺誠一)に対する物腰やわらかな態度にしても、
一筋縄じゃ行かないタヌキぶりが、いっそ心地良いw

西田さんが実に味のある演技をしていて、
憎たらしいには違いないんだけど、
何かもう一捻り(ひとひねり)あるんじゃないかという気もして、
だからなおのこと、無性に、その腹の中を探りたくなる。
ただの出世欲の塊(かたまり)なのか、
あるいは、もっと大きなことを考えているのか・・
佐久と島野を組ませたのは、
自分の言うことを素直に聞きそうにない目障りな二人を潰すためなのか、
あるいは、今までにない画期的なチームを作ろうとしているのか・・と。


所轄の新津(古谷一行)も良かったです。
佐久に自分と同じ一匹狼の匂いを感じて、
「あんた友達いないだろ」なんてグサリと言ってのけたり、
捜査に加わろうとしない屋敷(塚本高史)をさりげなく引き入れたり、
人の性格を読むのが巧みで、全体のバランスをしっかり見ている・・
古谷さんが持つ温和な雰囲気が、
たたき上げの刑事役にうまく染み込んでいるように思いました。


13係の中では、小菅(渡辺いっけい)が出色。
男だらけの刑事たちの中で、
彼が持つ 生活感のある感覚ってすごく大事な気がする。
佐久にも島野にも足りないものがある、
佐久は素直な物言いが出来ないし、島野は生真面目過ぎる・・
そのあたりの弱点を小菅は見抜いている気がするし、
彼自身が只者ではない空気を備えているのもいい感じです。


機動隊上がりの太田(神尾祐)の直情的な性格は
私にはまだちょっと馴染めないけれど、
加藤(田中隆三)や中藤(猪野学)や風間(篠田光亮)ともども、
人間性がもっと描かれれば、さらに面白さが増す気がするし、
そこにチームに溶け込もうとしない屋敷(塚本高史)が加わることで、
どんな不協和音が生まれ、それをどう克服して行くか、も楽しみ。


さて、肝心の佐久管理官と島野係長について、ですが。
正直なところ、谷中や小菅に比べると、
どうも いまひとつストレートに魅力が伝わって来ない気がしました。
視聴者の気持ちをグッと惹き付けるような派手さがなく、
メインとしての明確な個性をまだ存分に発揮出来ていないような、
ちょっと物足りない感じ、と言ったらいいか。

しかし、制作側は そんなことは承知の上なんじゃないか、
とも思うのですよね。
あえて二人を傑出した人物として描かず、
チームの一員として描くことで、
個々の魅力を結集した形で 「TEAM」としての魅力を見せよう、
群像劇としての面白さを見せよう、と考えているんじゃないか、と。

そう考えると、メインキャラとしてはあまり馴染のない
小澤征悦田辺誠一という落ち着いた俳優のチョイスも、
なるほど、と うなづける気がします。


佐久管理官。
これだけクセのある主人公というのも なかなかないと思うのですが、
民放初主演の小澤征悦さんが演じる、ということで、
観る側に先入観や特定のイメージを抱かせることがなく、
佐久の人間性や能力を想像させにくくする、と言う意味でも、
なかなか興味深いキャスティングだし、
これから魅力的なキャラクターに育って行くんじゃないか、
という気がしました。

小澤さんは、カチッとした硬さを持つ俳優さん。
その硬さが、佐久の ‘他者と相容れない性格’ を、
うまく表現してくれそうな気がします。


対する捜査一課13係の係長・島野誠は、
これまでの刑事ものにも たびたび主人公として登場しているような
‘いかにもまっすぐ’ なキャラクター。
「あなたたちは駒です」と言い切り 上司にへつらう佐久とは 衝突必至、
案の定、「あなたのやり方は間違ってる」と、
最初から喧嘩上等の不穏な空気。

演じている田辺さんは、
ここまではっきりした物言いをする役というのは
今まであまりなかったと思うのですが、
今回はかなり思い切って熱い人間を演じています。


誰も寄せつけようとしない佐久と、
検挙率ナンバー1の13係を作り上げた島野。
今のところ水と油のこの二人が、
どういうふうに事件を解決し、どう心を通わせて行くか、
つまり、佐久管理官と島野率いる13係が
いかにチームとしての力を最大限発揮出来るようになるか・・

興味深いのが、二人に共通する現場主義。
出世に興味のない二人は共にノンキャリアだそうで、
あえてキャリアコースに乗らず、現場で指揮を執ることに専念、
というところに、今後二人が歩み寄るきっかけがあるような気もします。


佐久も島野も、
たとえば前クールの『隠蔽捜査』の竜崎と伊丹のような
単純明快な性格ではないし、いろいろ背負っているものもあるせいか、
小澤さんも田辺さんも、まだ自分の役を確実に掴んでいる感じがしなくて、
少しもどかしいところもあるのは確かですが、
ドラマはまだ始まったばかり。
今後、二人が、
どんなふうに それぞれの役に入り込み、馴染んで、光を放って行くか、が
佐久と島野が作り上げる「TEAM」の色味にも繋がって行きそうで、
その過程を観るのも とても楽しみです。


事件解決までの流れについて。
そんなふうに「最強のTEAM」が出来上がるまでをメインにして、
そこを掘り下げて描こうとすると、
事件そのものの密度が薄くなってしまう可能性もあるのですが
今回、捜査本部立ち上げ時の所轄の立ち位置や、
警視庁と検察庁の縄張り争い、天下り等々の「なるほどネタ」も含めて、
テンポよくまとめていて、なかなか興味深かったですし、
見ごたえもあったように思います。

チームの成長と事件の解決・・
二つのバランスをうまく取りながら、
見ごたえ・噛みごたえのあるドラマを作って行って欲しいですし、
検挙率ナンバー1という13係の底力がまだ見えていないので、
いずれそのあたりを魅力的に描いてくれることも、
期待したいところです。


追記。
公式サイト、キャストの人物設定がなかなか面白いです。
この設定がうまく生かされたドラマになって欲しい。
倉科孝靖さんのインタビュー「管理官とは」も読みごたえがありました。
管理官側から事件を見ると、またちょっと違って見えるのかな、
なんてことを思いました。



『TEAM〜警視庁特別犯罪捜査本部』     
放送日時:2014年4月-毎週水曜 21:00-(テレビ朝日系)
脚本:吉本昌弘 監督:猪崎宣昭 ゼネラルプロデューサー:松本基弘(テレビ朝日
プロデューサー:藤本一彦(テレビ朝日) 金丸哲也(東映) 和佐野健一(東映) 
音楽:吉川清之 主題歌:加藤ミリヤ×清水将太「ESCAPE」 制作:テレビ朝日 東映
キャスト:小澤征悦 田辺誠一 塚本高史 神尾祐 田中隆三 猪野学 篠田光亮 
渡辺いっけい 西田敏行  ゲスト:古谷一行  『TEAM』公式サイト