今さら『刑事7人』(シーズン6)感想

先月「シーズン7」の放送が終了しましたが、こちらは昨年(2020年)8月からTV朝日系で放送された「シーズン6」の 今さらながらの感想となります。

現在の顔ぶれ(海老沢・野々村が新加入)になって3シーズン目。
メンバーそれぞれの持ち味や立ち位置、チームとしての動きも、前回(シーズン5)以上に練れて来た感じがします。
天樹(東山紀之)が、専従捜査班の一員として、海老沢(田辺誠一)や水田(倉科カナ)や青山(塚本高史)や野々村(白洲迅)と一緒に、毎回アグレッシブに足で捜査しているのが嬉しい。(何だか『TEAM』を思い出した、懐かしいなぁ‥)

捜査班の仕事としても、1話で消えた「0-A」(データ化の必要ない解決済みの事件や事件性のない事故事案が入っていた箱)絡みの事件が、‘現場に残された数字’という共通項によって1・2話から3・6・9話へと繋がり、まったく無関係と思われたそれぞれの事件が最後にひとつに縒(よ)り合わさって全体像が浮かび上がる、という流れは、このシーズンに一つの芯を通した感があって興味深かったです。

複雑な出来事が幾重にも重なり、次から次へと息つく間もなく展開して行く中で、捜査班が、それぞれの数字の意味を解きながら事件を解明し、少しずつ根気よくそれらを結び付けて行く・・
事件の全容が解明されたかと思ったその後にさらに一捻りあって、それらがまたさらに最後の事件の犯人に繋がって行く・・

まぁ確かに甘いところや突拍子もないところも間々あって、「いやいやそれはありえないでしょ」と突っ込みたい気持ちも正直あったりするけれど、その嘘っぽさを補う心惹かれる何かが またちゃんとあったりして。
たとえば3話、助成金が受けられなくなるかもしれないからテロを起こす、ってかなり無茶な話で、犯人の猟奇的犯行には正直ちょっとついて行けなかったりもした(いくら演じているのが篠井英介さんでも説得力持たせるのは困難)んだけど、公安の室井沙織(佐藤寛子)というキャラクターの描き方が魅力的だったので、興味が途切れなかった、とか。
事件に関係する人間(ある時は加害者、ある時は被害者、またある時は双方)が、単純でなく それぞれに深みがあって、そのバックグラウンドもちゃんと描かれているから、たとえばメルヘンやファンタジーの色付けをしたり、思い切ってとんでもない展開になったとしても、基本的な面白さがブレないんだな、と。

全9話の中で私が特に興味深く感じたのは、6話と7話。
6話は青山がメインの回。
スリードへの引き込み方がうまく(片桐(吉田鋼太郎)と島村監察官(久世星佳)の密談が効いている←私こういうの大好物w)、青山が関わった事件のウラにあるもうひとつの(本当の)事案が最後に明らかになって、亡くなった朱子野波麻帆)・橙花(三木理紗子)親子の背負った重荷が正しく解(ほど)けて行き、青山も救われることになる。
メンバーが、仲間だからといって、安易に青山の言葉を鵜吞みにして軽々しく逃亡の手助けをしないのも良かったです。
そのかわり、何が本当で何が嘘なのか、を、青山が何をやったのか、またやらなかったのか、を、全員が全力で調べ上げる、事件の真実をあぶり出すために。それこそが青山を救う道に繋がる、と信じて。
疑いが晴れた後、二人だけになった時、水田が青山に言う、「人間誰だって常に正しくいられるわけじゃない。だからもし私が間違ったことをした時には、その時はあんたが私を正して」
このシャキッとした二人の関係性が、シーズン7の初めの「水田と青山が〇〇」というとんでもない展開wに繋がって行くのかな、という気がしました。
あ、それと、掴みどころのない情報屋・百田(河合郁人)が魅力的でした。今後の出演もありそうで楽しみです。

7話は、あるタワーマンションを人間社会の縮図と捉え、メルヘンチックな味付けを含んだ寓話的仕上がりになっていて、それもまた、このドラマが持つ、特徴的で魅力的な空気感に繋がっているように思えました。
全体的に不思議な肌触りで、老人(斉木しげる)の死の原因が思いがけないものだったことも含め、観終わった後、もっとも印象に残った回になりました。
中でも、(私の個人的な嗜好が多分に入っているかもしれませんが)佐藤和子を演じた赤間麻里子さんが出色の出来で、とても惹かれました。

「刑事7人」と言いながら、今シーズンも全員がそろった回は少なく、8話など天樹・野々村・片桐・堂本(北大路欣也)の4人しか出ない、という回もあったのですが、それはそれで面白かった。
前シーズンまでは、全員が出ていないと、「刑事7人」なのになんで7人いないの?と物足りなく感じたりしたのですが、この8話などは、かえって少ない人数だからこそ深みが出たような気がするし、そういう使い方もありだな、という気がしました。

シーズンものというのは、長く続けば続くほど、マンネリをいかに防ぐか、が難しくなって来ると思うのですが、3話の潜入捜査といい、5話の休日といい、そういうメリハリもあって、(正直それらが全部功を奏したとは言えないところもあったにせよ)面白かったです。

片桐が上層部との交渉役となって暗躍したり、野々村がキャンプを仕切ったり、青山が同じ施設出身の女性の相談に乗ったり、水田が秘書として潜入捜査したり・・最初にも書きましたが、各々のカラーみたいなものが より前に出て来て、捜査班内でのメンバーそれぞれの持ち味(個性)がより明確になることで、チームとしてもより魅力的になって来た気がします。
エビちゃん(の中の人)のファンとしては、3話・4話など 片桐が不在の時、海老沢がてきぱきと指示を出し、天樹も含めたメンバー全員が「はい!」と応えるのがと~っても快感でしたw
海老沢がシーズンを重ねるごとにチームに溶け込んで 天樹と対(つい)に近い立ち位置となる(ファン目線だとそう見えてしまうのよね~すみませんw)ことで、天樹だけが突出した才能を持っている特別な人間というわけではない、天樹もまた普通の人間である、という描き方がされているような気がして、今回、そんなふうに天樹がいい意味でチームの一員として馴染んで来たことで、メンバーのところまで降りて来てくれた(=そんな天樹がとっても魅力的)、全員がフラットになった(=チームワークがさらに良くなったんじゃない?)、と感じられたことが、私としては 何だかとても心地良かったし、しっくり来たし、観ていてとても嬉しく楽しかったです。

『刑事7人』(シーズン6)    
放送:2020年8月5日-毎週水曜 全9話 TV朝日系
脚本:吉本昌弘 吉原れい 吉高寿男 保木本真也 徳永富彦 井元隆佑 
監督:兼﨑涼介 塚本連平 安養寺工 大山晃一郎
音楽:奈良悠樹
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子テレビ朝日
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子テレビ朝日
プロデューサー:山川秀樹(テレビ朝日) 貴島彩理(テレビ朝日
和佐野健一(東映) 井元隆佑(東映
制作:テレビ朝日 東映
出演:東山紀之 田辺誠一 倉科カナ 白洲迅 塚本高史
吉田鋼太郎 北大路欣也 他
公式サイト