『地の塩』(第1話)感想

新年のご挨拶もしないまま、2月も終盤になってしまいました。
すっかりご無沙汰してしまって申し訳ありません。
パソコンを新しくしました。(PC歴15年にして3台目、初のノートPC)
そのため、このブログも、
以前とは違った表記になってしまうところがあるかもしれませんが、
書いている人間(私)には変わりがないのでw
相変わりませず今後もおつきあいいただければ幸いです。

では、『地の塩』感想をどうぞ。------

 

『地の塩』(第1話)感想 【ネタバレあり】
久しぶりに観ごたえのあるドラマに出会いました。
脚本も、出演者も、演出も、音楽も、すべてが上出来、
人物描写が巧みな上に、先の読めない展開がテンポ良く密度濃く流れ、
画面から目を離すことが出来ないほどの吸引力があって、
ドキドキしながらあっという間に1時間が過ぎてしまいました。

たとえば同じwowowの『空飛ぶタイヤ』などは、
社会派ドラマとしての生真面目な一面を持ちつつ‘人間'を丁寧に描き、
ドラマとして非常に面白い作品に仕上げていたと思うのですが、
この『地の塩』は、
考古学という一見地味な研究分野に
捏造(ねつぞう)というスキャンダルを絡ませ、
さらには、未解決殺人事件というサスペンス要素まで盛り込んで、
大衆向けのエンターテインメントとして より興味深く観せよう、という、
いい意味で 非常に欲張りで意欲的な作品になっているように思います。
(最終回までこの姿勢が崩れないよう薄まらないよう祈りたいです)

 

メインとなる考古学の分野の人々については、
神村を筆頭に 真摯に一心に研究に打ち込んでいる という印象ですが、
肝心の神村は、高潔な学者とばかりは言えない、
人を魅了するカリスマ性の裏に、
人間臭い俗っぽさや彼なりの欲を持ち合わせているようにも思えて、
そこに大事な何かが潜んでいるような いないような・・
その曖昧さが何を意味しているのか、気になるところ。

考古学の大発見の陰でうごめく政治家・官僚・出版社等の利権。
教科書の内容や新聞紙面が、
こういった‘大人の事情'で作られることもある、というあたり、
お定まりのサイドストーリーとしてではなく、
主筋に深く関わってくるかもしれない、といった含みも感じられて、
なかなか興味深かったです。

一方の殺人事件も、早々に犯人のキャラが明確に示されて、
それがどうやらシリアルキラーの様相を呈しているようにも見え、
殺された少女の骨が発見されたことにより、
さらに次の事件に発展して行くような匂いを感じさせて、
これからどうなって行くのか、今後の展開が非常に気になります。

予告を観ると、かなり重要な言動がちりばめられているようですが、
はたしてそれが視聴者へのトラップ(罠)なのかどうか・・
次回もさらに楽しみです。

 

■ 登場人物について。

短い時間の中に、主な登場人物の思想や生活空間まで描き、
それも一人一人が単純な味付けになっていないので、
皆 非常に魅力的です。
それぞれの役に 明確な存在理由(その人を通じて伝えたいもの)が
あるからなのかもしれません。

 

何と言っても、
「神の手」を持つと言われながら何か秘密を抱えているらしい
考古学者・神村に、大泉洋さんを配したことが大きかった。
この人の 人好きのする柔らかさと 全てを読ませない掴みどころのなさが
役にとてもマッチして、
それが、このドラマの先に横たわる不安定で魅力的な揺らぎに、
うまくシンクロしていたように思います。

神村が思わせぶりな行動を取ると、
それが本気なのか 引っ掛けなのか まったく読めなくて、
もどかしいんだけど、そこがまたドキドキ感に繋がっていて、
ドラマの世界観にどんどん惹き込まれてしまう・・
演出としてわざとそういうふうに描いているんだろうけれど、
何となく大泉さん本人の持ち味にも繋がるような気がして、
まるで あて書きされたんじゃないかと思うほど。

 

神村が発掘した前期旧石器時代の塩名遺跡を
他に先駆けて載せる決断をした
出版社の教科書担当者・佐久間里奈に松雪泰子さん。
真摯に仕事に向かう姿勢に濁りがなく、
それゆえにこれから苦しみが始まって行くことになるのでしょうが、
周囲に翻弄されるこういう役は松雪さんの雰囲気にぴったりで、
この人だけは最後には笑顔になって欲しいなぁ、と
つい肩入れしてしまいます。

 

文部科学省資料保存庁次長・沢渡に陣内孝則さん。
神村に力を貸しているようでいて、
彼をうまく利用してのし上がってやろうという野心が潜んでいるようで
なかなか油断ならない。

 

神村に心酔する後輩・馬場に田中圭さん。
次回予告に「えっ!?」という場面があって楽しみ。

 

他に、新聞記者で里奈の元夫でもある新谷に袴田吉彦さん、
神村と手話でやりとりする母親・悦子に朝加真由美さん、
13年前に殺された少女の姉・米松小枝子に岩崎ひろみさん、
人骨発掘を偽造だと訴える男・国松にきたろうさん、
神村の恩師で日本考古学連盟名誉会長・桧山に津嘉山正種さん等々、
派手さはないものの 味わい深い面々。

 

その中でも、私が一番興味を惹かれたのが、
13年前の未解決殺人事件にからむ柏田を演じる板尾創路さん。
柏田が持つ‘闇'を ゆるゆるとなめらかに演じていて、
だからこそ怖さが浮き上がって来るような作り。
「考古学上の大発見と捏造」という硬派の社会派ドラマに、
一気に、しかもまったく違和感なく、サスペンス要素を吹き込んでくれた。
柏田が今後どんな行動を取るのか、神村とどう絡むのか、も
楽しみなところです。

 

13年前の殺人事件を警視庁捜査一課として担当、
迷宮入りになったことで奥多摩北署に配属転換され、
やる気をなくしている刑事・行永に田辺誠一さん。
神村が遺跡発掘現場でその被害者の骨を発見したことから、
もう一度調査に乗り出すことになります。

刑事役を数多く演じている(特にこの半年は4本も!)田辺さんですが、
この行永という男は、その中でも非常に魅力的な人間に私には思えました。
登場人物の多いドラマなのにもかかわらず、
人となりをきちんと描いてもらっているので、
彼が抱き続けて来た13年間にわたる慙愧(ざんき)の念と、
被害者への悼(いた)みとが無理なく伝わって来る。

そんなふうに 脚本における人物造形がしっかりしている上に、
田辺さんがその上に塗り重ねた色味が魅力的で、
彼のファンとしては、行永を観るのが本当に楽しかった。
しょっぱなのキャパ嬢との絡み、「ヤクザだもん」という言い方、
鼻つまみ者の屈折、上司への直談判、
神村へのタメ口、遺骨となって帰って来た被害者の霊前で見せた表情・・

この先、神村の手を借りて柏田を追うことになる、ということは、
田辺さんが洋ちゃんと力を合わせて板尾さんを追う、ってことなわけで、
大好きな俳優さん3人がこういう位置関係で並ぶなんて、
何て私得!と密かにほくそ笑む私なのでありましたw

 

地の塩=聖書に出てくることば。イエス=キリストの教え。
腐敗を防ぐ塩のように、世の中の模範的な人であれとの意
                             (番組公式サイトより)

 

『地の塩』     
放送日時:2014年2月16日-毎週日曜 22:00-(WOWOW
脚本:井上由美子/演出:鈴木浩介 演出補:権野元/音楽:村松崇継
プロデュース:青木泰憲 河角直樹 制作協力:国際放映
キャスト:
大泉洋 松雪泰子 田辺誠一 田中圭 板尾創路 陣内孝則
袴田吉彦 岩崎ひろみ 勝部演之 朝加真由美 大野百花 河原崎健三 きたろう 津嘉山正種   『地の塩』公式サイト