幸せな時間は続く・・・2 『ハッピーフライト』
昨年のTVドラマ『ホテリアー』で、
田辺誠一さんは、緒方耕平というホテルの総支配人を演じました。
ラブストーリーとしては、
脚本に迷いがあったように感じられて、すごく残念だったんだけど、
ホテルに携わるさまざまな人間たちを描く群像劇としては、
結構面白いと思いながら私は観ていて。
で、その時、
若い出演者の受け皿になってドラマを下支えしている、
という感じと同時に、
ドラマ全体を確実に引っ張っている、という感じ・・
脇に徹するだけじゃない、田辺流のソフトな押し出しの強さ、
みたいなものも、
同時に味わえたような気がしたんですよね、緒方耕平で。
あいかわらず私の独り善がりかもしれないけど、
でも、私にとっては、それって、ものすごく嬉しい感覚で。
田辺さんの中に、遠慮なく自分を前面に押し出していく、というような、
演技をする以前に、相手役や視聴者に放たれる、
「田辺誠一本来の力強さ」みたいなものが、
かなり控え目に、ではあるけれど(笑)出て来始めたような気がしたので。
田辺さんの主演作品というと、私はまず『怪』の又市を思い出すんですが、
主役でありながら、自分が前に出て行くことをためらっている・・
主役としてドラマを牽引して行く力が不足している・・
あの時に私が感じた物足りなさって、
そういうところだったような気がします。
(あいかわらず独断と偏見含んだキツイ言い方してます。ご容赦)
でも、『ホテリアー』の緒方を観た時に、
もしも今、田辺さんが又市を演じたなら、
きっと、私が感じたそういう物足りなさを払拭してくれるんじゃないか、
と思ったんですよね。
あの時は出来なかったけど、今だったらそれが出来るんじゃないか、と。
俳優になったその時から、
抵抗なく主役をやれる俳優さんもいっぱいいるんだろうけれど、
田辺さんはそうじゃなかった気がします。
技術とか、気持ちとか、脇として作品を支える面白さとか、
主演として足りなかったもの、
主演ではなく別なところに惹かれていたこと、
等々から、一段二段と少しずつ踏み固めて行って、ようやく今、
本当に自信を持って主演を張れる俳優さんになって来たんじゃないか、
そして、そういう田辺さんをちゃんと見ていてくれた人がいて、
まさに今、そういう役が巡って来たんじゃないか、
という気がするのです。
今回、主演ということで、脇に徹する必要がない、
つまり、ドラマを下から支える必要がないわけですが、
だけど、田辺さんの感覚の中には、
そういう「脇からの視点」というのも間違いなくあると思うし、
主演だからと言って、それをあっさり脱ぎ捨てられる人ではない、
とも思うんですよね。
時任三郎さんとか、寺島しのぶさんとか、岸部一徳さんとか、
名脇役がたくさんいて支えてくれるのだから、
そういう人たちに遠慮なく甘えつつ、
同時に、今まで数多く演じて来た脇としてのバランス感覚をも保った上で
「堂々と主演として真ん中に立っている田辺誠一」に、
11月、是非とも映画館でお目に掛かりたい、と、願っています。
(これもまた、いつもの挑発口調です、すみません。笑)