『ラストホープ』(第7話)感想

『LAST HOPE/ラストホープ』(第7話)感想
前回あたりから、患者の病気の治療だけでなく、
心のケア、というところにも踏み込んで来た気がします。


「治療のために、やりたいこと全部我慢して来た、
なのに白血病になった。
どうせ死ぬなら、治療の苦しみから解放されたい。」
余命半年と診断され、治療を拒む西村杏子(谷村美月)に、
何とかして希望を見出してやりたい、と、
波多野(相葉雅紀)は、坂崎多恵(石田ひかり)に杏子を会わせ、
病気が治った後の夢を書くスターティングノートを勧めます。
ノートは、もともと高木(田辺誠一)の恋人・紗枝が書いていたもの。
紗枝から多恵へ、そして杏子へ・・と、
ノートを通じて「想いが繋がって行く」感じが
じんわりと温かく伝わって来て、ほっこりしました。


一方、荻原(小池栄子)は、
「患者と医者が全力で立ち向かわないと勝ち目はない。
私は、杏子ちゃんのためなら、何ひとつ諦めない。まかせて、私に。」
と、力強く励まし、やがて杏子も、前向きな気持ちになって行きます。


・・これって、本当に、医療の理想の姿ですよね。
先端医療という、命ぎりぎりの現場で、
何のために患者を治療するのか、と言ったら、
患者の身体を健康な状態に戻してやることももちろんだけれど、
そうすることで、患者の心を再び前向きな気持ちにさせ、
生きる希望や夢を体内に満たしてやるため、なんじゃないか、と。


そのためには、医師が、揺るぎない存在として、
患者に寄り添う必要がある。


前回の、副島(北村有起哉)の
「私は、私以上に優秀な眼科医を知りません」
という言葉もそうだったけれど、今回の荻原の、
「私は、杏子ちゃんのためなら、何ひとつ諦めない」
という言葉もまた、どれほど患者を勇気づけるものだったか。


命に直結する現場で治療に携(たずさ)わる医師は、
患者に、絶対と言えるぐらいの安心感を与えなければならない。
患者(とその家族)との信頼関係=気持ちの繋がりを築けなければ、
「命」を扱えない。


そのあたり、医師という仕事が、
実はとても繊細なものだ、ということが伝わって来ましたし、
それに対する医師の負担や重圧がどれほど大きいか、
どれほどのリスクを抱えているのか、を考えると、
何だか胸が痛くなってしまいました。
もちろん、その分、報(むく)われた時の達成感・充実感は
計り知れないものがある、というのも、確かなことだろうとは思いますが。


次回、多恵の病状の急変が、杏子にどんな混乱を引き起こし、
それを、医師たちがどうやってケアして行くか、
そして医師たち自身が、自分の気持ちとどう闘って行くか・・
難題はまだまだ続きそうです。



一方、過去話も、核心に近づいて来たように思います。


斉藤健(高橋一生)の登場、
しかも彼は再生不良性貧血で余命1年・・
そのあたりから、私の妄想が、一気に膨らんでしまいました。


彼の病気は、後天性ではないのかもしれない、とか・・
斉藤夫妻が何とかして息子の命を救いたいと願ったことが、
すべての発端になっているんじゃないか、とか・・
そこに大きく関わっているらしい波多野卓巳の存在、とか・・
彼が生まれて来た理由、とか・・


20数年前に立ちはだかった医療の限界。
しかし、先端医療はめざましく進歩している、
年を経て行くごとに、救える可能性は高くなって行くに違いない、
そこに、彼らは賭けたのかもしれない、とか・・


それは、「正面突破出来る問題じゃない」という副島の言葉や、
「先端医療だからこそ・・‘未来の命’も救えるかもしれない」
という鳴瀬(高嶋政宏)の言葉の意味にも
繋がって来るんじゃないか、とか・・


古牧(小日向文世)の研究の最も有効な使われ方、とか・・


私の頭の中では、
このドラマの哀しくて優しくて切なくて温かなエンディングが、
徐々に形になって来ているわけですが・・
・・・まぁ、だからそれは、
所詮(しょせん)私の妄想の話でしかないんだけれども。w


一方、高木(田辺誠一)が背負うのは、
やはり、リスクの問題、ということになりそうですね。
2000冬NYで、
彼に再び医師としての道を拓いてくれた大森(小木茂光)が
何故「医者を辞める」と言ったのか。
連想されるのは、三枝久広(@ジーンワルツ)。
ああいう事例は、アメリカの方が多いような気がするし。
(あくまで私個人の印象ですが)


リスクへの恐れが、大森の、医師としての行動を制限してしまう、
ということになって行くのかどうか・・
彼が言った、「来月帝都大に行く。交換研究員制度で20年ぶりの日本だ」
も、かなりいろんな意味を含んでいるようで、気になります。


古牧(小日向)の研究は、
やはり「Clone」という方向に進んでいるらしい。
そんなことになるのかなぁ、と、うっすら想像してはいたんですが、
最初の頃は、まだそれをSFや夢物語としか捉えられなくて、
そんな方向に進んでしまったら 話について行けなくなるんじゃないか
と、ちょっと不安で複雑な気持ちもあって。


でも、7話まで観て来て、
先端医療の凄さをいろいろ実感させられた今は、
そういうことが実際に起こりうる時代になっているのだ、と、
素直に納得し、受け入れている自分がいて、
古牧の心情を考えた時に、ばっさり切り捨てる気持ちにもなれなくて。
でも、もちろん、それは、いくら最愛の人のためであっても、
人間の入り込んではいけない神の領分だ、という想いは根強くて。


彼の研究がどういう実をつけるのかは分からない・・けれど・・
結局、彼がいつも聴いている落語のお題が、
最後には 効いて来るのかな、という気もしていますが。



浜田秀哉さんの脚本について。
謎の正体が徐々に見えて来るにつれ、
改めて、脚本の構築の緻密さに恐れ入っています。


以前『ライアーゲーム〜The Final Stage』という映画を観た時に、
リンゴゲームのルールや、登場人物の綿密な動かし方、等々、
数学的な組み立て方の面白さに嵌(はま)ったことがあったのですが、
このドラマも、まるで「ジグソーパズル」のように、
ひとつひとつのピースの置き場所が綿密に練られていて、
四隅から置かれ始めたピースが、思わぬところで繋がったり、
予想外の図柄を浮かび上がらせたりして、
こちらの想像を軽く超えて来るので、本当に一瞬も気を抜けなくて、
だから、いつも、1時間が 信じられないくらい速く、
あっと言う間に過ぎて行く感じがするし、
毎回、3回4回と何度もリピするのが当たり前になっています。


予告でさえ、重要なヒントを見つけ出す大切な手立てになるから、
最後まで集中力を緩めることが出来ない。
次回予告も、「波多野卓巳くんの手術をやって・・」なんて
重要なセリフがポロッと出て来ているし。
まったく、本当に、次の火曜日が楽しみでなりません。



今回は告知も良かったです。
高木と副島が同じイヤホン使っているところが、萌えポイントでした。
(いい大人なのに可愛いんだよね、二人とも)
私にとっては、田辺誠一北村有起哉が並んで立っている、
というだけで、相当「すごいこと」だったりします。
だから今回、二人並んでタブレット覗いてたシーンも嬉しかったです。w


う〜ん、二人が本格的に対(たい)で演じるシーンというのは、
今後もないんでしょうかねぇ。
非常にもったいない!と思うんですが。



ラストホープ
放送日時:毎週火曜 夜21:00- フジテレビ系

キャスト
相葉雅紀 多部未華子 田辺誠一 小池栄子 北村有起哉 桜庭ななみ 
平田満 高嶋政宏 小日向文世 / 谷村美月 石田ひかり 紺野まひる 他
スタッフ
脚本:浜田秀哉 演出:葉山裕記
プロデュース:成河広明 古屋建自
『ラストホープ』公式サイト