『ラストホープ』(第8話)感想

『LAST HOPE/ラストホープ』(第8話)感想
「生きる覚悟」と「死ぬ覚悟」・・
坂崎多恵(石田ひかり)が残した
スターティングノートとエンディングノートは、
彼女が、潔(いさぎよ)く生き、潔く死に立ち向かった証(あかし)・・


「所詮(しょせん)はドラマ」などという軽い観方では
許されないような気分になってしまう程、
いろんなことが心に響いて、いろんなことを考えさせられて、
命の重みがズシンと伝わって来る、彼女の死でした。


杏子(谷村美月)が、多恵の生き方・死に方から学んだ、
「死ぬ覚悟を決めた。絶対生き抜いてみせる」という言葉も、
すごく良かった。
このドラマに出て来る患者さんたちは、
毎回、何かしら温かいものを心に宿しつつ前に進もうとしてくれるから、
命を賭けたギリギリの現場なのだけれども、
どこか「救い」があるような気がします。


高木(田辺誠一)や波多野(相葉雅紀)や橘(多部未華子)が、
手術中、脳死状態になるかもしれない、と分かっていても
手を止めることが出来なかった、
ひたすら患者の心臓を動かすことだけに夢中になった、
そこにある、医者としての反射神経というか、本能と言ったらいいか、
そのあたりのことを話すメンバーの会話も、興味深かったです。
(手術中、もっと画面からぶつかって来るような緊迫感があったら、
さらに伝わるものがあった、と思うのですが、そこがちょっと残念)


吉野万奈美(紺野まひる)と、多恵の話をする高木(田辺)。
この時の高木が本当に優しげで、
スターティングノートが、自分の恋人である紗枝から多恵へ、
そして、杏子や万奈美へ繋がって行くことで、
彼の中で、いくらかでも浄化され、救われるものがあったのかなぁ、
と、そんなことも思いました。


一方、坂崎多恵の死がセンターに与えたダメージは大きかった。
教授たちに糾弾される、鳴瀬。
しかし、彼は、院長にこう言い放ちます、
「身を引く、というのは、責任を取るポーズに過ぎない。
これからも、センターの医者の使命として、医療の限界に挑み続けます。
辞めない。それが私の覚悟です」


医療の限界に挑む限り、それが難しければ難しいほど、
今回のようなことは、頻繁に起こり得る。
世間や家族(遺族)からは一方的に非難され、
それどころか、橘(多部)のように裁判沙汰になることだってある。
それでも、そういう彼らの存在がなければ、新しい医療は生まれない。
「未来の医療」への礎(いしずえ)にはなれない。


そんな重いリスクを背負ってなお、
自分を信じて最大限の力を発揮し、医療に全力を尽くす・・
そういう気概を胸に秘めた医師たちを、
鳴瀬(高嶋)は、このセンターに集めたような気がします。
橘しかり、高木しかり、波多野しかり、荻野(小池栄子)しかり・・
副島(北村有起哉)にしても、金儲けというだけではない、
もっと自分なりの医療への想いや夢に添った「ビジネス」の姿を
追っているような気がするし・・


過去話。

古牧(小日向文世)が息子・聡史に語った
「行動の選択が人間の価値を決める」は、とても重い言葉だと思います。
息子がかばって命をおとした、その友達が意を決して古牧に謝りに来る、
その時のその子の気持ちを思うと、胸が苦しかった。
「聡史を誇りに思う」という古牧の言葉に、その子も救われたんじゃないか、
そのことで浄化されるものは、古牧にはなかったんだろうか・・
等々、あれこれと考えてしまいました。


橘(多部)が佐々木教授に詰め寄った時、
「金か?」という思いがけない言葉が出て来て、何だかドキッとした。
まさか金銭絡みの話になるとは思っていなかったので。
一気に生臭くなって、
それがどう本筋に絡んで来るのか、の興味も広がります。


波多野卓巳について。
斉藤仁美(霧島れいか)が、鳴瀬(高嶋政宏)に
「波多野卓巳くんの手術をやって・・」と頭を下げたのが、1985年。
この時、卓巳は2歳。
おそらく卓巳はこの時、病気も怪我もしていなかったんじゃないか、
という気がしますが、本当のところはどうだったのでしょうか。


そして、トンネル事故に遭った斉藤夫妻(神尾佑・霧島)が、
鳴瀬に懇願した、最後の希望・・
どうやらそれが、このドラマにとっての「ラストホープ」にも繋がって行きそう。
先端医療・再生医療が、ひとりの人間の命を救う「最後の希望」となる、
その道筋(ドラマ上の)が、少しずつ見えて来たようにも思います。
(・・と、私の頭の中で 妄想があれこれ勝手に疾走中w)


次回は、父と子のお話。
どこか、波多野(相葉)にもリンクしているように感じられます。
親と子を結ぶものは何か・・
ストレートに、遺伝子、と言うことも出来ますが、
でも、それだけに留まらない、
年月(時間)と感情の積み重ねで生み出されるものも、確かにあるわけで・・


先端医療・再生医療を扱ったこのドラマが、
そのあたりの「情感」をどう描いて行くのか、
引き続き、楽しみに観続けたいと思います。


ラストホープ
放送日時:毎週火曜 夜21:00- フジテレビ系

キャスト
相葉雅紀 多部未華子 田辺誠一 小池栄子 北村有起哉 桜庭ななみ 
平田満 高嶋政宏 小日向文世 / 谷村美月 石田ひかり 紺野まひる
スタッフ
脚本:浜田秀哉 演出:石井祐介
プロデュース:成河広明 古屋建自
『ラストホープ』公式サイト


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数日後に『八犬伝』観劇を予定しております。
よって、今後しばらくは『八犬伝』モードに入ってしまうと思われます。
ラストホープ』(第9話)感想は、
10話が始まるまでには、何とかしたいと思っておりますが・・
遅筆ゆえ、遅れてしまったらごめんなさい。