今さら『37歳で医者になった僕』(第3話)感想

2012年4月〜6月に放送された連続ドラマです。

今さら『37歳で医者になった僕』(第3話)感想

今回は、何だか息苦しくなるほど切なかったです。
患者が亡くなった、ということもそうですが、
その死に関わった人たちの痛みが無理なくじんわりと深く表現され、
だからこそ余計に「死」の重みが伝わって来る・・
立場によって違う 彼らの感情の流れにリアリティがあって、
身につまされるものがありました。


末期の膵臓がんで余命半年、
ホスピスへの転院を勧められている木島(甲本雅裕)に、
治験段階の新薬の存在を伝える紺野(草彅剛/草なぎ剛)。
薬を使って助かったのは10人のうち7人、
しかし、残り3人は、長くて3週間 短くて5日で死んでしまっている。
「紺野さんが、治る、大丈夫だ、って言ってくれたら使う」
と、死の確率に不安を抱えた木島は言いますが、
森下(田辺誠一)や沢村瑞希水川あさみ)からは、
「医者の言葉には責任がある、
軽々しく治すとか治るとか言ってはいけない」と釘を刺されます。

医師として患者の気持ちにどこまで踏み込んだらいいのか、悩む紺野。
この時、一種のリトマス紙になっていたのが、
木島の娘から渡されたキャンディ。
担当医の新見(斎藤工)や沢村が受け取らなかったキャンディを、
紺野は受け取り、それを食べるのですが、
最後の一個は道路に落ちて、車に轢かれて粉々になる・・

キャンディをもらってしまったら、
医師は、患者のささやかな喜びや幸せばかりではなく、
死に至る哀しみや痛みも、全部まともに浴びてしまうことになる。
日々、多くの患者と接する医師にとって、
患者一人一人の想いや願いまで一緒に背負う、ということは、
とても大変なこと、辛いこと、とても苦しいこと。
だからこそ、医師は皆 キャンディを受け取らない、という線を引く。
だけど・・

木島からの、
紺野の献身的な治療に対する御礼と、
彼のおかげで、死にゆく準備ではなく生きる可能性に向かえた、
そのことに感謝する手紙を読んで、
「医者として失格かもしれないけど、治るって言ってあげればよかった。
ぼくはお守りを渡せなかった」と、堪(こら)え切れず涙をこぼす紺野。
「大丈夫」「治る」という言葉を、
最後までどうしても木島に掛けてあげることが出来なかった、
その紺野の苦渋に、こちらの気持ちも思わずシンクロ。
隣に座っていた沢村が、
そんな紺野の胸の名札をはずし、
医師ではなく紺野祐太という一人の人間に戻してあげる、
その無言の優しさにも胸が詰まりました。


たぶん・・
紺野は、きっとこれからもキャンディを貰い続ける気がします、
それがどんなに辛く苦しいことでも、
患者の「病気」や「死」に 慣れない自分でいるために。


追記。
1話の北村総一朗さん、2話の徳井優さん、そして今回の甲本さん・・
患者さんを演じた俳優さんたちはそれぞれ迫真の演技で、
その、役との向き合い方、病気との向き合い方に、
非常に真摯で丁寧で優しい気持ちや心がこもっているように思えて、
すごく惹かれました。

特に今回の甲本さんの、余命半年のがん患者の姿には、
それらしい、とか、うまい、とかいう言葉では十分でない、
もっともっとぎりぎりまで突き詰めた真剣な佇(たたず)まいがあって、
惹き込まれてしまいました。
伝わるものがたくさんある俳優さん、リスペクトです。


37歳で医者になった僕     
放送日時:2012年4月-毎週火曜 22:00-(フジテレビ系)
脚本:古家和尚 演出:三宅喜重 プロデュース:木村淳
原作:川渕圭一「研修医純情物語〜先生と呼ばないで」
「ふり返るなドクター〜研修医純情物語」
音楽:菅野祐悟 主題歌:「僕と花」サカナクション 制作著作:関西テレビ放送
キャスト:草彅剛 水川あさみ ミムラ 八乙女光 桐山漣
志賀廣太郎 鈴木浩介 でんでん 斎藤工 真飛聖 
田辺誠一 松平健  
ゲスト:甲本雅裕  『37歳で医者になった僕』紹介サイト