『ラストホープ』(第9話)感想

『LAST HOPE/ラストホープ』(第9話)感想
9話を初めて観た時に、
あまりにもセリフがサラサラッと流れて行ってしまっているように思えて、
おいおい大丈夫か?と心配になったのですが、
再見したら、あまり気にならなかった。
セリフの意味を噛み締めながら真剣に観ていると、
感情過多な言い方は、かえって邪魔になる気がして、
特にカンファレンスなど、無機質っぽい話し方で丁度いいのかもしれない、
なんて、今更なことを考えたりして。
久しぶりに、全体のセリフのスピードが速かったから、
ちょっと戸惑ったのかもしれないです、
最初の頃は、そのスピード感を楽しんでいたはずなのに。(苦笑)


さて、9話。
今回の患者は、経済界の超VIP・町田(中原丈雄)。
彼のすい臓がんの治療について、カンファレンスするメンバーたち。
例によって、波多野(相葉雅紀)のスイーツがヒントになって、
皆で治療法のいい流れを組み立てることが出来たのに、
それを大学病院に持って行かれてしまいます。


初の再生治療(坂崎多恵=石田ひかり)が失敗に終わったことで、
大学側が、センターに不信感を持つようになったのが原因。
(正確には、失敗したのではなく間に合わなかったのですが)
相当難易度が高かったにも関わらず、町田の手術は成功。
大学病院にも、高木並みの優秀な外科医がいた、ということでしょうか。


ところが、彼はほどなく合併症になり、再びセンターに戻って来ます。
そして・・ というところまでが、今回のお話。
予告を観ると、次回は「生体肺移植」ということになりそうですが、
町田と二人の息子(要潤石田卓也)との関係が、
大きなポイントとなって来るようですね。


重篤な患者の治療のために、
健康な人間の身体にメスを入れ、リスクを背負わせる・・
いくら治療のためとは言え、
本当にそれが、医療のあるべき正しい姿なのかどうか。
いや、お互いの気持ちの繋がりや情も絡んで来るから、
移植をしようとする人間側に、
自分の身体の一部を与えてでも救いたい、という明確な意志があれば
問題ないのかもしれないけれど、
たとえばそれが、何の意志も持たない小さな子どもだったら・・
遺伝子等の問題で、移植はその子にしか出来ない、と判断されたら・・
移植を受ける患者が、すぐにでも手術しなければならない状態だったら・・


誰かを救うために、誰かを(わずかでも)危険にさらすことを考えると、
何とか、移植に依(よ)らない治療はないのか、と思いますが、
このドラマでは、そこに、一筋の光明を与えているようにも思います。
すなわち、細胞を初期化して再生し直す、という
古牧(小日向文世)の「細胞リプログラミング」研究の存在。


実際、本当にそんな研究がなされているのかどうかは分かりませんが、
iPS細胞のことを考えると、あながち夢物語でもないのかなぁ、
という気がします。


ドラマでは、その研究に、2つの問題を重ねています。


ひとつは、日本では、認可までに長い時間がかかってしまう、ということ。
今までも、メンバーの間で何度も話題にされて来たし、
今回のカンファレンスでも、大きな問題として話されていました。
日本の医療研究はすごく進んでいるのに、
国の認可の問題があって、実用化は他国に先を越される、と。


もちろん、丁寧に行うことで、より安心して使える、
より臨床の安全性が高まる、というメリットもありますが、
「安全性を求めているあいだに、何人死ねばいいんです!?」
という副島(北村有起哉)の言葉の意味も大きくて。


高木(田辺誠一)との会話の中で、
紗枝(高木の元恋人)の有効な治療薬が、
当時の日本では未認可だった、それがあれば助かったはず、と語る副島。


「認可の問題は、現場の医者が考えなければならない」
「それを私が考える、どんな手を使ってでも」
という副島の言葉は、なかなか物騒なものをはらんでいますが、
一方で、彼が考える「医療ビジネス」の姿が、
明らかになって来た気もします。


もうひとつの問題は、
肝心の古牧が、自分の研究が公(おおやけ)にされることを
あまり望んでいないように思われること。


彼の基礎研究は、100万人を救うほどの価値あるものなのに、
彼は、他のこと(息子を再生すること)に気を取られている。
そのことにイライラを募らせる副島。
自分が考えるビジネスを軌道に乗せるためには、
小牧を説得しなければならないのですが、果たして・・?



過去話。


斉藤夫妻・四十谷・桐野・・彼らに共通する研究とは何か?
その研究の解析過程での不明瞭な点とは?
「偶然の産物から生まれた」という斉藤の言葉の意味は?
宇田(前田亜紀)は、なぜ、橘(多部未華子)に
「あの事件の原因はあなた」だと言ったのか?
斉藤仁美のお腹の子供はいったい・・?
等々、まだまだ分からないことも多いのですが、それはそれとして。


今までセンターが行って来た数々の手術や治療・・
センターのメンバーたちに複雑に絡む過去話・・
それらすべてを包含しつつ、
私には、何となく、物語全体の歯車が、
ひとつの命を救うために動き始めた気がします。
町田の命はもちろんですが、
もうひとつ、すべての人々の願いや想いを背負った命がある・・


残り2話、その「ラストホープ」に向かって、
ドラマはどんな展開を見せてくれるのでしょうか。
そして、私の妄想は当たっているのでしょうか。w



今週の高木(田辺誠一)。
副島との会話で、フッと弱みを見せるシーンも良かったし、
(脚本の浜田さん、北村さんと対のシーン作ってくれてありがとう〜♪)
鳴瀬(高嶋政宏)に複雑な心境を語る場面も良かったし、
おねえちゃんの香りを嗅いで橘に突っ込まれるところも、
真一(要潤)に辛らつなことを言う波多野に、
またかよ〜、と何とかストップかけようとするところも、
カンファレンスで、橘の「大丈夫なのか」というツッコミに、
ちょっと不安になってしまうところとか、
波多野に、スイーツ早く食べろ、と言うところとか、
俺を誰だと思ってる、なんて、すぐ強気になっちゃうところとか、
かと思うと、陰で町田の手術のシュミレーション死ぬほどやってたりとか、
やること言うことすべてに、高木らしい すごく多彩な味わい が
染み込んでいたように思います。


他のメンバーにしてもそうですが、
キャラ設定が脚本段階ですごくしっかり出来ているので、
どういう人間なのか、という輪郭が明解で心地良い。


特に、高木は、
喜怒哀楽すべて、いろんな感情を幅広く出せる役なので、
観ていて本当に楽しいです。
ちょっとサジ加減を誤って 白石(@デカ☆黒川鈴木)になってしまった、
なんて感じられたことも以前はありましたが、
今回は、同じようなシーンで、少しだけテンションを落とすことで、
うまく「高木のキャラ」として成立させていて、
カンファレンスでの軽〜いタッチの高木を観ていて、
妙に感動してしまいました。


いや〜、もうあと2回しか高木を観られないのか、
何だか無性に淋しいなぁ!


・・ということで、これから引き続き第10話を観たいと思います。
どんな展開が待ち受けているか、わくわく。


ラストホープ
放送日時:毎週火曜 夜21:00- フジテレビ系

キャスト
相葉雅紀 多部未華子 田辺誠一 小池栄子 北村有起哉 桜庭ななみ 
平田満 高嶋政宏 小日向文世 / 中原丈雄 要潤 石田卓也 高橋一生
スタッフ
脚本:浜田秀哉 演出:葉山裕紀
プロデュース:成河広明 古屋建自
『ラストホープ』公式サイト