『鍵のかかった部屋』(第11話=最終回)感想

鍵のかかった部屋』(第11話=最終回)感想
気になっていたドラマだったのですが、
実際に観たのは、3話と この最終回だけ。
ちゃんと全部観ておけばよかったなぁ、と、ちょっぴり後悔。


まず、メイントリオである
榎本(大野智)・芹沢(佐藤浩市)・青砥(戸田恵梨香
のキャラ付けがうまいなぁ、と思いました。
それぞれの立ち位置が、シンプルでありながらしっかりしているので、
物語の土台部分でブレるところがなく、
私のように1話だけ観た人でも、すんなりとドラマの中に入って行ける。


最近の佐藤浩市さんは、本当に面白いです。
三谷幸喜作品(THE 有頂天ホテルザ・マジックアワー等)や
宮藤官九郎作品(少年メリケンサック)での
コメディ体験が効いているのでしょうか、
こういう、どこか大人げない役にもすんなり納まって、
人間味を十分に保たせつつ、
榎本や青砥のような硬質な役の間に挟まっても、違和感がないのが凄い。


まったく「女」を感じさせない青砥も、
戸田さんが演じると、さらに純粋に少年のような肌触りになって、
それが、このドラマを、昔の推理小説みたいな空気感
にしてくれていたのも興味深かったです。


榎本径役の大野智くん。
一本調子で感情をあまり出さない役、というのは、
一見簡単そうで、さほど演技力がなくても出来るんじゃないか、
と思われがちですが、私はそうは思わないです。
こういう役は、演じる人間が薄っぺらだと、とても貧相に見える。
演じる人間に厚みや深みがないと、
魅力的なキャラにはならないと思うのです。


そりゃあ、たとえば古美門研介(@リーガル・ハイ)あたりに比べたら、
俳優としてのエネルギー消耗は7割引って気がするけれどw
3割に凝縮して表現する難しさもあるわけで。


大野くんは、「若冲ラクルワールド」(NHK)で、
芸術的感性の鋭い人だな、という印象を改めて持ったけれど、
今回の榎本にしても、俳優として、というより、
もっとマニアックな視点から役作りをしているような気がして、
そこがすごく面白かったです。
何だろう・・粘土をこねて「榎本径」という人形を作って、
それを大野智が操ってる・・みたいな。
・・まぁそれは、
私の個人的な「大野智 考」に過ぎないのかもしれないけれど。


最終回のゲストは玉木宏さん。
実は、私はこの俳優さんがちょっと苦手で、
あまりいい印象を持ったことがなかったのだけれど、
平清盛』(NHK大河ドラマ)の源義朝がとても良くて、
俳優として、ヤマをひとつ越したんじゃないか、という気がして。
(偉そうな言い方ですみません)
今回の佐藤学という役も、
以前に比べ、格段に感情に深みが出ていたように思いました。


ドラマ全体としては、
主人公・榎本が、無表情で感情を出さない、ということもあり、
あまり感傷的・人情的になり過ぎず、
硬質な、一種のゲーム的な雰囲気があって、
それが、事件の構成にも、登場人物にも、画面にも一貫していて、
探偵ドラマのニューカマーとしても面白いと思いました。
カメラの視点とか、一瞬の暗転とか、演出が面白いなぁ、と思ったら、
松山博昭さん(『ライアーゲーム』の監督)だったんですね。


最後の榎本の表情が魅力的でした。
リーガル・ハイ』とともに、続編があったらぜひ観たいドラマです。