『MR.BRAIN』(エピソード3)感想

『MR.BRAIN』(エピソード3)感想 【ネタバレあり】
興味はあったんだけど、実は1話・2話と見逃してしまいまして。
亀梨和也くんがゲストの今回は、絶対に見逃せない、と、早々に録画予約。
で、第3話にして初めて『MR.BRAIN』を観ました。


これ、けっこう面白かったです。
このドラマを「ミステリー」、主人公の九十九龍介を「探偵」と位置づけて、
犯人の殺人動機やら、トリックやら、を真剣に追うと、
あまりに「本格推理」から かけ離れていて、まったくつまらないんだけど、
たとえば「ヒューマン・ファンタジー」といったような、
(そんな言葉が本当にあるかどうか知らないけどw)
現実からちょっと逸れたお話、として捉えたら、
なかなか魅力的に感じられました、少なくとも私には。


で、こういう役になると 特に、
木村拓哉さんって、すごい力を発揮するように思える。
今回観ていて思ったのは、とにかくこの人の、受け皿としての器の大きさ。
ドラマの主人公として、というより、
ドラマ全体の支え役としての力量が抜きん出ていて、
観ていて、ものすごく安心感があって、
ストーリーがちょっとくらい緩(ゆる)くても、ぐいぐい彼に引き込まれて、
観せ(魅せ)られてしまう。
・・うーん、何だかねぇ、これほど素直にキムタクの力量の前にひれ伏すのは
初めてかもしれない、私。


同じような設定のドラマに『ガリレオ』というのがあったけど、
あの時の主人公・湯川学と、今回の九十九龍介が決定的に違うのは、
湯川が、常に物語の中心にいて、主人公として事件を解決するのに対して、
九十九は、あくまで側面から物語を眺めるに留まっているんですよね。
で、それは、脚本や演出の、主人公へのアプローチの違いもあるんだけど、
案外、湯川を演じた福山雅治さんと、
九十九役の木村さんの魅力の違いによって、
あるいは、それぞれの、役に対する捉え方の違いによって、
そうなってしまってる部分もあるんじゃないか、
なんて、また勝手な妄想をふくらませてしまったりしてw。


・・・話を戻します。
その、木村さんの、あえて先頭に立って引っ張って行かない、
全体を下支えして持ち上げている感じ、というのは、
相手が年下の、しかも後輩の、亀梨くんだった、
ということとは関係ないのかなぁ。
1話と2話はどうだったんだろう、ちょっと興味あります。
来週は佐藤健くんと木村多江さんがゲストらしいので、
その辺を確認したい気持ちに駆られていますが。(観る気まんまんw)


さて、『神の雫』以来、気になっている亀梨和也くん。
今回の和久井雅和という役は、背景がまったく描かれていないし、
結婚間近という後藤めぐみ(相武紗季)との関係も
十分に描かれているとは言えないし、犯行の動機そのものも弱いし、
だから、全体的にスカスカな感じにしか捉えられなくて、
感情移入しにくかっただろうと思うんだけど、
それでも、彼が、和久井という人間をどんなふうに作ろうとしたか、
というのは、かなり伝わって来たように思いますし、
その作り方は間違っていなかった、と思います。


まず、あのメガネに白衣はずるいだろう(似合いすぎ)
と思ってしまいましたがw
ビジュアルとしては、28歳、新進気鋭の研究医、という役柄に、
無理なく嵌(は)まっていたように、感じられました。


物静かで、あまり熱の感じられないキャラなので、
あえて力まずに、60%ぐらいの力で演じていたように見えたんですが、
表情は非常に細やかで、心惹かれた場面も多く、
今の若手俳優で、この表情を作れる人がどれだけいるだろう!と、
密かに感嘆したシーンもあったりして、
にわか亀梨ファンとしては、おおいに楽しませてもらいました。


特に、ラスト近くの九十九やめぐみとのやりとりは、
なかなか見応えがありました。
和久井の言ってることって、
言葉だけを拾って聞くと めちゃくちゃなところもあるんだけど、
それを言ってる和久井(を演じている亀梨くん)には、嘘っぽさがなくて、
観ていて素直に感情移入してしまいました。


ただ、60%の力で演じる、というのは、
自分の力を最初から最後まで60%しか出さない、というのとは
意味が違うはずなのですよね。
常にマックス(100%)の力を出す準備をしていながら、
それを70%ぐらいにセーブしたり、30%にグッと抑えつけたり、
かと思えば、一瞬100%解放したり・・
そういうメリハリをつけた上で、
観る側には、トータルで60%の力で演じているように見える、というのが
俳優の力の出し方としての「60%」なのではないか、と。
(このあたりは まったくの私見ですが)


それは、発声の仕方にも言えること。
静かで落ち着いた話し方、というのは、小声で話すこととは違う。
感情を高ぶらせることが出来ない役ならなおのこと、
しっかりと相手(視聴者)に言葉を伝える方法を身につけないと
いけないと思う。


そのあたりも含め、亀梨くんには、
まだまだ、俳優としての「技術」が足りない気がしました。

・・・と、あえて苦言を呈してなお、
今回、彼に一層 惹かれてしまった自分がいるわけですがw。


それは、先ほど書いた、
「魅力的な表情」や「言葉への気持ちの乗せ方」も含め
「役の‘輪郭’や‘感情’」を練り上げるための想像力や創造力が、
彼の中で、面白い具合に育(はぐく)まれている、
と感じられたから、なのかもしれません。


彼は・・彼もまた・・
役を自分の中に引き込むのではなく、役に近づいて行くタイプ。
外側から役を作り、そこにスッポリ入り込み、
「普段( KAT-TUN )の亀梨和也」としての気配を消して、
役に染まろうとする俳優。

うんうん、やっぱり彼も「こっち側」の人間(=俳優)だったか・・
なんてことを、好き勝手に妄想出来ることが嬉しいw。


今はまだ羽化(うか)しきれていなくても、いつか完全に羽化する時が来る。
こうやって、いろんな俳優から、何度も何度も、刺激を受けて、愛をもらって
そうして気づいて行く、自分の可能性に。
そうして蓄えて行く、自分の力を。


『MR.BRAIN』第3話。
私にとって、俳優としての亀梨和也
ますます興味深く感じられたドラマでありました。