ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない(talk)

2009・10公開
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

夢:誰も文句のつけようがないくらいの、二枚目な いい人。こういう役、めずらしいよね。 
翔:昔、こういう役を観たい!って熱望してた時期もあったんだけどね・・・ 実際にそういう役が巡って来ると、いい人過ぎて、二枚目過ぎて、つまらない、という、へそ曲がりな自分がいたのも事実で。 
夢:え~!?こんな素敵な藤田さん観て、つまらないですかぁ?(笑)
翔:ネット小説とか携帯小説が原作のものって、すごく分かりやすいんだけど、あまりにベタで、分かりやす過ぎてヒネリが効いてないことが多くて、この藤田さんにしても、なんだか「出来過ぎ」「いい人過ぎ」という感じがしてしまって・・
夢:う~ん・・・
翔:いや、それは単に、私が普段あまりそういう作品に接しないから、そう思う、というだけのことかもしれないんだけど。
夢:・・・・・・・・
翔:それと、この時期の田辺さんって、あまりにも広範囲にいろんな役をやっていて、それがまた、それぞれに面白くて興味深くて、だから私、ただの「いい人」ってだけじゃ 満足出来ないカラダになってしまっていたのかもしれない。(苦笑)
夢:満足出来ないカラダ!(笑) ・・まぁね、一青(@神の雫)やら TELYA(@少年メリケンサック)やら アクが強くて面白い魅力的な役をいろいろやってた時期だし、沢田(@空飛ぶタイヤ)や佐野(@ふたつのスピカ)にしたって、ただの二枚目じゃなくて 深みがあったから、この藤田さんみたいに「普通にかっこよくて いい人」ってだけじゃ物足りない、っていう気持ちも分からないではないけど・・・
翔:初見の時は・・ね、そう思ったんだけど・・
夢:だけど?
翔:今回、久しぶりに観たら、けっこう ときめいてしまいました。(笑)
夢:あ・・な~んだ、そうだったの?(笑) 何だったんだろうね、翔の気持ちを変えさせたものって。
翔:この映画って、1時間40分ぐらいの尺しかなくて、すごくコンパクトにまとめてあるんだよね。 で、初見の時は、田辺さん演じる藤田という役が十分に描き切れていない気がして、映画そのものは好印象だったんだけど、藤田はちょっと物足りないなぁ、と思って・・・ せっかく「いい人」をやるなら、藤田の背景にあるものを、もうちょっとしっかり描いて欲しかったなぁ、と。
夢:そうかぁ・・
翔:だけど、今回観たら、1時間40分という 映画にしては短い尺が、逆に、マ男ひとりにグッと集約される形になって、あちこち散漫にならずに、リズムよくストーリーが進んで行く結果にもなっていたのかなぁ、と。 
夢:うんうん。
翔:こういう作品を映像化する場合・・まぁ、マンガ原作物もそうだけど、まず、脚本家や監督が、原作をどれだけ消化しているかが大切だと思う。 その上で、映像化することによって、さらに原作に何を上乗せすることが出来るか・・・
  この映画は、マンガ的で単純ではあっても、出来上がりとしては あまり薄っぺらなものになっていなくて、伝えるべき内容をきちんと伝えようとしていて、それが、この映画の魅力として、ちゃんとこちらに伝わって来たような気がしたから。
夢:なるほど~。 
翔:あと、俳優さんたちの 役への嵌(はま)り具合も、すごく良かったように思う。 マ男を演じた小池徹平くんが、想像していたよりずっと説得力のある役作りをしていて、マンガチックな展開なのに、どこか切実な感じもちゃんとあって、可愛らしい見かけによらず しっかりした芯がある俳優さんなんだな、と思ったし、品川佑さん、池田鉄洋さん、千葉雅子さん、中村靖日さん、マイコさん、田中圭さん、森本レオさん・・といったブラック会社の面々も、それぞれ持ち味をうまく発揮して、あの冗談っぽい空間の中で、極端なキャラを的確にこなしていたように思うし。 
夢:うん。 
翔:彼らと対比する形で、北見敏之さん・朝加真由美さんという生活感あるキャラクターが、マ男の両親として存在したのも良かったし。 そのあたり、それぞれの役のポジションにおける色のつけ方というのは、俳優さんたちの力はもちろんだけど、佐藤祐市監督の手腕によるところも大きいんじゃないか、と。
夢:うん。
翔:で、田辺さんに話を戻すと、最終的に この映画全体のトーンをかなりの割合で決定づけていたのは、田辺さんだったような気がする。 さっき、マンガチックな展開、と言ったけど、そんな浮き気味の落ち着かなさの中で、あの強烈なメンバーが揃ったブラック会社に、とにもかくにも「適度な重さ」を持たせられたのは、田辺さん演じる藤田の存在が大きかったんじゃないか、と。
夢:適度な重さ・・かぁ・・・
翔:重過ぎてもダメ、軽過ぎてもダメ・・・ ブラック会社における藤田というのは、そのあたりのバランスが難しかったんじゃないかと思うんだけど、田辺さんが持つ、軽やかさと、落ち着きと、甘さと、渋みとが、うまい具合に役に練り込まれて、あのメンバーの中で異質にならない、にもかかわらず落ち着いた存在感のある、絶妙なキャラクターになってたんじゃないか、と、今回観直して、そんなふうに思ったから。
夢:ん~、そうかぁ・・・
翔:確かに、役としては、きっちり描いてもらってはいなかったんだけど、そういう意味では、満足感があったから、こういう役も、またいいなぁと思えたのかもしれない。
夢:なるほどね。
翔:何だかんだ言って、諸葛亮孔明田辺誠一を観ることが出来た、ってことも大きかったんだけど。(笑)
夢:そうそうそう!そうだよね~!! 翔も言ってたけど、あれは眼福だったなぁ! いつかやって欲しいわ、コスチュームプレイも。
翔:そうだね~、壮大な歴史ロマンなんていうのもいいよね。
夢:うんうん! 『風林火山』の小山田とか、時代劇もすごく良かったけど、もうちょっと派手なのも観てみたいよね。
翔:でも、私は観てるんだけどね、田辺さんのコスチュームプレイ。
夢:え?え?どこで!?
翔:『荒神』で。
夢:・・・あっ!風賀風左衛門かぁ!
翔:・・・・(笑)・・・・
夢:・・・う~ん・・やっぱりあれを見逃したのは、もったいなかったなぁ!!
翔:でも、ああいう役は、今の方が合ってる気がするけど。
夢:そう?
翔:・・・というか、今の田辺さんで観たい!と、今回この孔明を再見して、改めてそう思ったから。 以来、また風左衛門みたいな役を いのうえ歌舞伎あたりで観たいなぁ!と、密かな願望を抱いてるんだけどね。(笑)
夢:いやいや、いいんじゃない?「密かな願望」。 そんなことポロッと言ってると、結構実現したりするからさ。(笑)
翔:そうかぁ・・そうだね。(笑) じゃあ ちょっと、「密かな願望」を‘大きい声’で言っておこうか。
夢:‘大きい声’で、ね。 行くよ・・
翔:夢:田辺誠一のコスチュームプレイが観たいぞーっ!(笑)