7月24日通り(talk)

2004・12・24放送
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。
 

夢:これ聴いて、翔は大喜びしたんだよね。(笑)
翔:はい。 田辺さんがこういう役をやってくれた、ということが、ものすごく嬉しかったから。(笑) 
夢:翔は、初見の時、「ばっかやろー!な男、しょーもない男」って言ってたよね、サトシのこと。(笑) それでも、この役を田辺さんがやってくれて嬉しかったんだ。
翔:嬉しかったね。 こういう「二枚目」というだけで成り立っている役って、演じている人間に照れや逃げがあると、成立しない。 田辺さんって、今まで、そういう「見た目かっこいい役」に対して、変化球で当たることが多くて、結果、純粋に「かっこいい」という部分ではないところで、ちょっとずれたところで、まったく新しい評価を引き出していたようなところがあって。
夢:・・・・どういうこと?
翔:その役が持っている「性格」・・・というか「中身」の部分で。 三枚目の時は、ちゃんと三枚目であることを前提として演じているんだけど、二枚目の役だと、二枚目ということよりも先に、切ないとか痛々しいとか 優しいとか 純粋とか 情けないとか、そういう中身の部分を、役に乗せてぶつけて来ることが多かった気がするから。
夢:・・・ああ、うん・・・そうか。
翔:それはそれで、とても興味深いことではあったし、そういうところがまた田辺さんの大きな魅力にもなっていたんだけど。 でも、一度、田辺さんに、「かっこいい男」に直球でぶつかって欲しかったから。 どこにも逃げようのない、王子様としてしか存在しえない役、というのに、まっすぐに向かって欲しかったから。
夢:うーん、あたしとしては、サトシってあんまり誠実そうな男じゃなかったから、聴いてて、どうも田辺さんに合わない感じがしたんだけど・・・
翔:いや、私は逆に、そこが面白いと思った。 サトシが持つ、自己中心的で、不誠実で、甘ったれで、みたいなところ・・・「二枚目ゆえのわがままさと弱さ」みたいなところ・・・を、田辺さんがあんなふうに演じてくれたということが。
夢:二枚目ゆえのわがままさと弱さ、を、田辺さんがあんなふうに・・・か。
翔:そう。 特に、あの「甘さ」みたいなもの・・・自分はいい男だと自負していて、落としどころで、うまくその「甘さ」を使ってくるところ、なんかは、「一度田辺で味わってみたい」と思っていたところでもあったので、もう、聴きながら、きゃ~きゃ~喜んでた。(笑)
夢:・・・・う~ん・・・そうかぁ。(苦笑) いや・・・そういうところも含めて、なんか「薄っぺら」な感じがしたんだけどね、あたしは。 確かに二枚目かもしれないけど、それだけ、みたいな。
翔:(笑)
夢:・・・・ん?
翔:いや、その気持ちも分かる、と思ったから。(笑)
夢:え、そうなの?
翔:私だって、たぶん、サトシみたいな人間が本当に近くにいたら、生理的に受け付けない、とは思うしね。
夢:ああ、そうなんだ。(笑)
翔:でも、逆に、それを「役」として演じることは、すごく面白い、とも思うんだよね。 田辺さんが変化球を投げないで、直球で勝負している。 いろんな感情を乗せない、複雑な「中身」を乗せない、そこが面白かった、とも思うので。
夢:うーん・・・そうか。
翔:まぁ、ラジオだから、声だけだから、「これ」が出来たんだろう、とは思うけど。
夢:たとえばTVドラマで、演じてみて欲しい、と思う?
翔:1クールの連続ドラマじゃしんどいかな。(笑) でも、これが放送された2年前(2004年)よりも、今のほうがなおさら出来そうな気もするし、観ているこちらも、なおさら照れないで済むんじゃないか、という気もする。
★    ★    ★
夢:いつもと違って、いきなり田辺さんの話になってしまったので(笑)、これからは、ストーリーとか他の出演者の話をしたいと思うけど。 まず、他の出演者について。
翔:サユリ役の酒井若菜さん。 「夢見る夢子さん」というだけじゃない、ちょっと「けだるさ」みたいなものもあって、いい感じだった。 モノローグとか、弟と言い争ってるところとかも、フッと出てしまったり、ぶつけずにいられなかったり、とか、いろんな感情を普通に持っている女性に思えた。 
夢:うん。
翔:安藤役の小市慢太郎さんは、この時の声が印象に残っていて、逆に、他の仕事が気になりだした。 『救命病棟24時』や『クイール』でさらに好きになりました。
  絵描き役のスネオ・ヘアーさんは、ちょっと舌足らずで独特の柔らかさがあって印象的だったし、他のキャスティングも良かったと思う。
夢:ストーリーについては、ちょっと引っ掛かってたところがあったんだって?
翔:いや、サトシのところに行こうと決心するサユリに、「待ってるから」と言ってくれる絵描きくんという安全パイを用意しておく、というのは、どうなのかな、と、最初思っていて。
夢:・・・・・・・・
翔:何もかも捨てて、サトシのところにぶつかって行く、そういうギリギリの状態にサユリを追い詰めないと・・・0(ゼロ)かサトシか、というところまで行かないと、サユリはどっちに転んでも痛い思いをしないで済んでしまう。 それじゃ、物語の幕引きとしては、弱い気がしたので。
夢:うんうん。
翔:でも、絵描きさんは安全パイじゃないんだな、と、捨てて行く大事なもののひとつなんだな、と、今回聴いていて、そう思えたので、納得が行きました。
夢:絵描きさんの方が、明らかにサユリを幸せにしてくれそうな気がするけどね。(笑)
翔:私もそう思う。(笑) でも、私、最初聴いた時、サユリは、振られるために東京に行く、と決め付けていたんだけど、ひょっとしたら、そうでもないのかな、って。 少なくとも、サトシが、アキコとサユリの間で心揺れる、そういうことがあるんだろうな、って、そう思うようにもなった。 
夢:・・・・そう?
翔:それは、サトシが、サユリと逢っている時に、二枚目としてのカラを脱いでいるような気がしたから、なんだけど。
夢:・・・え?
翔:何となく、気が楽、というか、ホッとしている感じがしたので。 田辺さんがサトシをやっていたから、そう感じたのかもしれないんだけど。(笑)
夢:・・・・・・・(笑)
翔:それがサトシにとって「恋」なのか、と言ったら、たぶん違うんだろうし、サトシはコウジ(サユリの自慢の弟)ほど大人じゃないから、すったもんだするとは思うんだけど、可能性はゼロじゃないんだから頑張れ、と、エールを送りたい気になったんだよね、サユリに対して。
夢:・・・・うーん・・・なるほどねぇ・・・(笑)
翔:あ、でも、サユリに対しては幸せになって欲しいと思ったけど、サトシに対しては、逆に、「もっと傷つけ!」と思ったけど。(笑) 
夢:えっ!?
翔:サトシは、傷つくことでやっといろんなことを学べるような気がするから。
夢:・・・・ああ、そうか・・・・
翔:考えてみたら、私、今まで田辺さんが演じた役で、もっと傷ついてもいい、と思ったものは、ほとんどなかった。 それは、田辺さんの役が、役の中ですでに傷ついていることが多かったから、なんだろうと思う。 
  また、役としてはそうでなくても、演じている田辺誠一という俳優に、「傷ついて欲しくない」と思わせる何かがあって、そういうものを、彼のファンである私が、役を通して勝手に感じてしまった、ということもあるし。 ・・・もちろん、あくまで、私個人の感覚だけど。
夢:うんうん。
翔:だけど、最近は、そういう、「傷つかないで欲しい」と思いながら、心に防護ネットを張りつつ観ないと安心して観られない、みたいなことって、ほとんどなくなっていて。
夢:防護ネット・・ね。(笑)
翔:(笑) 今までの出演作品を改めて追ってみると、そういうことを、この作品の頃(2004年頃)から、自然に感じられるようになって来たのかな、と、そんなことも思ったりして。 そういう意味でも、なかなか印象に残る作品だった気がします・・・あくまで、私にとっては、だけど。(笑)
夢:うーん、そうか・・・そういう観方もあるんだなぁ・・・(笑)