『お母さんの最後の一日』感想

『お母さんの最後の一日』感想
う〜んう〜ん・・何だか途中から観るのが辛くなってしまいました。
これだけの俳優を揃えて、何で!?という思いが拭えない。

今まさに母親を病で失おうとしてる三姉妹の、
やるせなさや、辛さや、悲しさや、痛みといったものを、
制作側は、ただ、演じている美しい女優さんの美しい涙だけに頼って、
手っ取り早く伝えようとしているんじゃないか、
と思えてならなかった。


肉親を失う痛みは、こんなにきれいごとで薄っぺらいものじゃないはず。
もちろん、ドラマだからあえて明るく・・という考えも
分からないではないけれど、
それにしても、三人それぞれの感情が、ただ表面をなぞっただけで、
その深遠にまで届いていないように感じられたのが、とても もどかしかった。


常盤貴子さんにしても、京野ことみさんにしても、吹石一恵さんにしても、
彼女たちの涙は、素直な感情移入から生まれたもので、
こちらの心に響いたには違いないのだけれど、
それが、役の中に十分に消化された上でのものだったのかどうか、となると
いささか疑問を持たざるをえない。

彼女たちは、求められれば、
もっとずっと細やかで奥行きのあるお芝居が出来る女優さんのはずだし、
倍賞美津子さんも、橋爪功さんも、夏八木勲さんも、
そして原沙知絵さんや田辺誠一さんにしても、
演じ手として求められているものが少なくて(出番の多少という意味でなく)
自分を持て余しているように見えた。


2時間しかなかったから、そこまで掘り込んで作ることが出来なかった、
なんて言い訳は通らない。
最近観たDVD『ぐるりのこと。』も『アヒルと鴨のコインロッカー』も、
同じくらいの時間の中で、大事なものを失う切なさと心の痛みを
しっかりと表現していたもの。


脚本の北川悦吏子さんは、私が切ない恋愛系ドラマの最高峰のひとつ
だと思っている『愛していると言ってくれ』の脚本を書いた人。
その力量はすごいと思っているけれど、
今回は感情移入出来ずに終わってしまったのが、とても残念でならない。


視聴者はバカじゃない。
通り一遍の表現だけじゃなく、もっと複雑な心の機微(きび)だって、
ちゃんと受け止めることが出来ると思うんだけどなぁ・・・