『853〜刑事・加茂伸之介』(第8話=最終回)感想

『853〜刑事・加茂伸之介』(第8話=最終回)感想
う〜ん、武藤班のみんなが、
こんなふうに加茂(寺脇康文)を認め、愛する・・ようになる前に、
やはり、あと2話分ぐらいのエピソードが欲しかった気がします。
いい雰囲気になったのは良かったんだけど、
いかにも急ごしらえにチームワークが出来た感じがして、
加茂と他のメンバーとの繋がりが、
しっかりと確実に深まって行く前に終わってしまって、
すごく もったいなかったなぁ、と思いました。


今回は、最終回ということもあり、
加茂の十年前の事件や、
愛口のふたり(有薗芳記平田裕香)の過去、等々、
今まで描き切れなかったところを出来るだけ埋め合わせして行こう、
という意図があったと思うんですが、
なんとなく全体にドタバタしてしまって、
おちついてストーリーを追いかけることが出来なかった。
これだけのものを1時間(1話)で収めるのは、
ちょっと無理があったんじゃないか、
出来れば、2話に分けて描いて欲しかった、という気がしました。


加茂×板倉(杉本哲太)=過去の相棒、と、
加茂×武藤(田辺誠一)=現在の相棒、との対比が、
事件に絡めて、もっと明確なコントラストとして浮き彫りになっていたら、
さらに面白かっただろうに・・
それぞれの心内(こころうち)が、もっと深く 役に反映されていたら、
工場跡での3人(加茂・板倉・武藤)の対峙が、
もっとずっと意味のあるものになっていただろうに・・と。


まぁ、私が感じたそのあたりの物足りなさは、どこかで、
加茂を、血の通った魅力的な人間として、
自然に、あったかく、豊かに演じた寺脇さんと対比しての、
武藤を演じた田辺さんへの不満、ということにも繋がっているのかなぁ、
という気がしないでもありませんが。


全体を通して、
加茂伸之介に対する武藤勇作、としても、
寺脇康文に対する田辺誠一、としても、
最後まで物足りなさを拭うことが出来なかったんですよね、実は。


もちろん、寺脇さんが主演である以上、彼をしっかり描く、
というのが大前提としてあるとは思うんですが、
加茂vs武藤という「対(つい)」の形でふたりを描くことによって、
より加茂の魅力(陽も陰も)が伝わる、という考え方もあるんじゃないか、と。
脚本や演出の段階で、武藤に対して、
加茂の対極に居る人間、という捉え方を十分にしてもらえなかったことが、
残念だったんだけど・・
う〜ん、それよりも、私がもっと気になったのは・・


そもそも、田辺さんは、武藤を、どうしてあんなふうに
ガチガチのカタブツにしてしまったのだろう。
何と言うか・・まるで血の通っていないロボットみたいで、
役そのものに、あまり魅力が感じられなかったのが、すごく残念だった。


いつもなら、たとえそういう設定であっても、
演じる田辺さんが、その中に、独特の「人らしさ」みたいなものを
うまく注入してくれることが多いんだけど、
この武藤に関しては、
そんなふうに、田辺流のいろんな色や味を出す前に・・というか、
出そうとしたところで、終わってしまった気がする。


もちろん、それなりに見どころはあったし、
今回の、板倉に銃を向け発砲するところなんか、
ファンとしては、「おお!かっこいい〜!」となかなかに萌えた
美味しくて嬉しいシーンではあったんだけど、
そこに至るまでの、武藤の加茂に対する気持ち、みたいなものが、
魅力的なものとして観る側に伝わっていないので、
素直に、ストレートに、武藤に感情移入することが出来なくて、
何だかすごくもどかしい、と言うか、残念、と言うか、悔しい、と言うか・・


先週、ふたりの間にちょっといい雰囲気が出て来て、
今週、ようやく少〜し魅力的な連帯感みたいなものが生まれて、
(あいかわらず水と油には違いないんだけど)
さぁこれから!という時に終わってしまうのが、
どうにもこうにも口惜しいし、
脚本にも、演出にも、そして演じている俳優にも、
武藤勇作という人間を、
これぐらいの描写(表現)だけで放り出して欲しくないなぁ、と強く思う。


番組公式サイトのインタビューで田辺さんが話していた
武藤勇作のウラ設定(スタッフが作ったもの)が非常に良く出来ていて、
すごく魅力的だっただけに、
それが実際のドラマ内ではまったく使われなくて、
すご〜くすご〜く残念だっただけに、
その部分を膨らませた武藤勇作を、いつかぜひ観てみたい!
たぶん、他のメンバーにもそういう背景があると思うので、
そのあたりを、ぜひ続編で!と、強くお願いしておきたいと思います。
(あいかわらず、えらそーな言い方で すみません)