『853〜刑事・加茂伸之介』(第1話)感想

『853〜刑事・加茂伸之介』(第1話)感想
定番・磐石の刑事もの、まずは無難な滑り出しだったんじゃないでしょうか。
寺脇康文さんというと、やはり『相棒』の亀山薫の印象が強くて、
今回、同じ刑事ものだし、どうキャラを変えて来るんだろう、
という興味があったんですが、
亀山が、右京(水谷豊)とのバランスを考えて、
少し控え目でおとなしめな役作りだったのに比べると、
この加茂伸之介は、最初から全開ですっ飛ばしていてw
寺脇さんが、そういう加茂を、
とってもいきいきと魅力的に演じているなぁ!と・・
かつ、力強くドラマ全体を引っ張って行ってるなぁ!と・・
ものすごく頼もしく感じられました。


強行犯六係のメンバー(佐々木=富田靖子、浜=菅原大吉、
真島=戸次重幸、酒井=林剛史、綾松=新谷真弓、)の中では、
菅原さんが、一番自然に役に馴染んでいて、
寺脇さんと一緒に、すごくいい空気を作っていたように思いました。
戸次・林・新谷さんあたりも、いい雰囲気。
でも、富田さんはまだ、
しんなりとは馴染んでいないように私には感じられたし、
捜査一課長・三原役の金田明夫さんも同じく。


ただ、脚本や演出段階でのキャラクターの色というのは、
ちゃんと出来上がっている感じがするので、
そのあたりは、回を重ねて行くごとに練り上げられて行くんじゃないか、
で、チームとしてのいい意味でのデコボコ感
(全員が和気あいあいにならない)も、
さらにメリハリがついて、味わい深くなって行くんじゃないか、
とも思いました。


加茂行きつけのスナック「愛口」(なんっちゅう名前だw)の
有沢(有薗芳記)やサチコ(平田裕香)も、何やらワケありな様子で、
(こんなところでフードファイトのパイナップルプリンセスちゃんに
会えるとは!)
今後どうスジに絡んで来るのかが楽しみです。


さて、京都府警捜査一課 強行犯六係の係長・武藤勇作=田辺誠一
田辺さんの役幅の広さには、もう、ちょっとやそっとじゃ驚かないけど、
ふわんふわんの亜蘭由紀夫(小公女セイラ)から、
眉間の立てジワ5本wカチンコチン武藤への、このとんでもない跳躍力には
驚きを通り越して、笑うしかない、って感じです。w


小公女セイラ』のすぐ後にこのドラマ、
さらに、今月末には『ハッピーフライト』のTV放映があって、
3月初めには『ライアーゲーム』(映画)も控えている、という・・
四役みんな色が違ってて、それをほぼ同時期に味わえる、
この人ゆえの面白さ。


とはいえ、武藤という人間は、
現段階では、私には どうにも味気なくて物足りなかったです。
ここ最近の、作り込んだ独特の味のある役造形や、
Twitterでの はっちゃけたイメージが焼きついているせいか、
人間味の薄い役を、いかにも「作っている」という感じで見せられると、
役の上で対角線上にいる寺脇さんが、
生身の人間としての熱を存分に魅力的に振り撒いているだけに、
なおさら物足りなさを禁じえない。


二人の立ち位置といい、部屋の空気感といい、
ゴンゾウ』に近い気もするけれど、
黒木(内野聖陽)vs佐久間(筒井道隆)のように、
対立する中で、お互いの心の深い傷が浮き彫りになる、といったような、
複雑な心理描写はあまり描かれない、
あくまで午後8時台の刑事ドラマらしく分かりやすく、
という方向性を受けての、ああいうキャラ造形なのだ、と言われれば、
そうなのかもしれないけれど。


ステマティックが売りの武藤なのに、
PCひとつで何でも済ませちゃうあたりも、ちょっと寂しかったかなぁ。
とにかく、今のところの武藤、背景も何も描かれてないので、裸同然。
まぁそれは、佐々木(富田)や三原(金田)にも言えることだけれど。


ただ、加茂の「カン」に対する武藤の「推理」という対比が、
今後もうちょっと色濃く出て来ると、
二人の色(持ち味)の対比にも繋がって、さらに面白くなるかなぁ、
という気もしました。


いずれにしても、この時間帯の刑事ものであれば、
事件そのものの面白さももちろんですが、
その底に流れる人間の情みたいなものがはっきり描かれないと、
視聴者の確実な支持というのは得られないんじゃないか、と思うし、
そういう世界に足を踏み入れて、ああいう武藤を作った以上、
田辺さんが、これからどう彼を生かして行くのか、
カチコチに固まった武藤を、どうほどいて、温かく豊かにして行くのか、
そのあたりを楽しみに、観続けて行きたいと思います。