『強行犯係・魚住久江〜ドルチェ2』感想

『強行犯係・魚住久江〜ドルチェ2』感想
ドラマが始まった時の、
「廃工場で誰かともみ合う男」「踊る男女」「赤ちゃんの前で刺される男」
の3ショットが、まったく融合性がなくて、
いったいどう繋がるんだろう、と、まず興味を惹かれました。


男が妻に刺された、と練馬北署に通報があり、
魚住(松下由樹)と峰岸(馬場徹)が現場に行くと、
赤ちゃんの横で、女(星野真里)が呆然としている。
さいわい夫は軽症だったが、妻は、なぜ刺したのか理由を言わない。


数日後、廃工場でひとりの男の死体が発見される。
警視庁捜査一課の金本(田辺誠一)・井上(KEIJI)らと、
練馬北署の合同捜査が開始される中、
死んだ男・稲森は、長野の門倉酒造に勤めており、
「金魚の涙」という名前の商標登録をめぐって、
妻に刺された男・吉沢とのトラブルを抱えていたことが発覚。


松本にある「NEXT STAGE」という店が、
事件に関連がある、と知った金本は、
所轄の魚住や原口(戸次重幸)とともに長野へ。そして・・


・・と、こうして、最初の3ショットが繋がって行くわけですが、
そこまで非常にテンポよくスピーディに話が進んで、引き込まれました。
ただ、東京でも 松本でも 事件関係者が次々と出て来るので、
正直なところ、一度観ただけでは、
ひとりひとりの行動や人間関係、事件との距離感などが、
私には、スムーズに把握出来なくて、
二度観て、ようやく全体の流れを掴むことが出来ました。


2時間ミステリーとしての謎解きや犯人探しに関しては、
とりたてて目新しい感じはしなかったですし、
ラストも、ちょっと安易にお涙頂戴に流れてしまったように感じました。
しかし、「金魚の涙」と「美保」という二つの名前・・
これらの名前が持つ意味と、その意味よりも大事なもの・・
そのあたりの着眼点は面白いと思いましたし、
何より興味深かったのは、
画面から伝わって来る 優しくて温かい色合いが心地良いことで、
それはやはり、松下由樹という女優さんが醸し出す
やわらかで穏やかな空気感の賜物なのかな、と思いました。


私が、このドラマの一番の見どころだと思ったのは、取調室のシーン。
もちろん、魚住が明穂から犯人に結びつく手掛かりを得る
重要な場面だから、とも言えるのですが、
松下由樹さんと星野真里さんという女優二人の、
役に染み込ませた感情を、お互いの上に積み重ね合い 深め合って行く、
その静かな応酬が、私には非常に魅力的に感じられたので。


前回の知美(内山理名さん)の時もそうだったけれど、
魚住が取り調べると、刑事と容疑者、というよりは、
女性対女性、という対等の関係になる。
魚住としては、事件に繋がる糸口を探り出す、というよりは、
同じ女性として、何とかして相手の心の糸を解(ほど)いてあげたい、
そういう気持ちのほうが強いんじゃないか、と思う。
その視線が、刑事としての彼女を まろやかにしているような気がしますし、
そこに松下さんがうまく溶け込んでいるように感じました。


他の登場人物の中では、
少ない出ながら、笹野高史さんが大きな存在感。
カメラが至近距離で表情を追う中、自然な感情を漂わせて圧巻でした。


安蘭けいさんは、
ハスキーボイスで、元宝塚の人じゃないか、とすぐ分かったのですが、
演技はとても自然で、違和感なく、
娘を心配するお母さん役を落ち着いて演じていて、好感が持てました。


刑事たちについて。
今回は、西岡徳馬さんに持って行かれてしまいましたねw
すごくかっこよかった。


所轄の刑事たち(ベンガル、戸次重幸、菅田俊馬場徹)も、
やや平板ではありますが、安定感がありました。
新参加のKEIJIさん(本庁刑事)も、いい味出してましたね。
そんな刑事たちの中で、
馬場くんが、魚住への想いをはっきりと表に出して来たり、
コミカルな場面もあったりして前回よりも一歩前に出て来た感じ。
戸次さんは、やっぱり残念な男なのねw
ラストクレジットのバックに流れる「原口の残念な真相・・!?」が
面白かった。スピンオフ作って欲しいと思いました。


さて、田辺誠一さん。
BGMと共に颯爽と登場する最初の場面がかっこよかったです〜、
大谷監督、どんだけ罪滅ぼししてくれるんだか。w
(大谷映画での田辺さんは、だいたいかっこいい役じゃないので)
最近、連ドラでは、良き夫やお父さんの役が多い田辺さんですが、
こういうシャキッとした役も出来ることを証明してくれて嬉しい。
ガサ入れの時の声の張り上げ方、機敏な動き、
やはり いのうえさん(新感線)のスパルタ稽古が功を・・(以下略w)


松下さんと田辺さんのふたりだけのシーンは、どこも好きでしたが、
前回すごく惹かれた屋上のベンチでのシーンが今回もあって、
魚住がタバコを勧めても断る金本、
その時に彼の左手薬指の指輪がさりげなく画面に映って、
何だかグッと来ました、二人の距離感がうまく出ているなぁ、と。


あと、手塚管理官(西岡徳馬)とのやりとりも好きです。
今回は、手塚がちょっと弱みを見せるところもあるので、
金本がもう少し貫禄ついてたら、もっと良かったのに・・とちょっと思いました。
まぁ、撮影時のハードスケジュールを思えば、仕方ないですが。
    (撮影は今年1月半ばあたりだったらしいですが、
     その頃は『ラストホープ』の撮影も『八犬伝』の稽古もあったので)


戸次さんとは、お笑いシーンがいろいろあって、楽しかったです。
一番好きだったのは、門倉酒造前で、
金本が、原口(戸次)に従業員の聴取を頼んだ後、
さっさと魚住と一緒に歩いて行ってしまうところ。
原口のアップに、金本が魚住に話す声がかぶるのですが、
完全に除け者になってる感じで、かわいそうだけど、何だかおかしかったw
ラストの「原口の残念な真相・・!?」の会話も良かったです。
クレジットをかぶせるのがもったいないくらいでした。
原口vs金本の面白シーン、
3分間ぐらいのを何本も作ったら楽しいのに・・と思いました。w



金曜プレステージ『強行犯係・魚住久江〜ドルチェ2』
2013年11月15日(金)21:00- (フジテレビ系)
出演/松下由樹 星野真里 戸次重幸 馬場徹 菅田俊 KEIJI
森山栄治笹野高史安蘭けいベンガル 西岡徳馬 田辺誠一 
監督/大谷健太郎   脚本/松本美弥子  原作/『ドルチェ』(誉田哲也
プロデュース/高石明彦(The icon) 鈴木香織(The icon)