『仁〜JIN〜』
2009秋クールの中で一番面白いドラマでした。
最終回、中途半端な結末だと不満を持った人が多かったようですが、
密度濃く作ってあったそれまでの1回1回を思うと、
あそこですべてに決着をつけるのは無理だし、
原作がまだ連載中ということを考えれば、
はっきりとした結末をドラマで描いてしまうのは、
難しいのかな、という気もしました。
ただ、『龍馬伝』の初回を観て思ったのですが、
仁(大沢たかお)が、
坂本龍馬(内野聖陽)という人間と深く関わってしまった以上、
そして現代の知識と技術を持った医者である以上、
歴史の流れの中で、龍馬がどういう最期を迎えるかを知っている仁が、
彼を救おうとするのは当然だろうし、
けれど、彼を救えば、そこから先の未来は、おそらく、
野風(中谷美紀)を救った時よりも
(仁の未来(中谷)への想いの深さとは別なところで)
さらにさらに大きな変化が起きるだろうことは、
十分に予想されるわけで。
その時、仁がいったいどういう結論を下し、龍馬に接するのか、
そこのところを描いてこそ、
仁が「幕末」という時代にタイムスリップした意味があるのだろうし、
そこのところを描かなければ、
この物語が持つ壮大なテーマの核に近づけないのではないか、
という気がしました。
そうなってこそ、龍馬を内野さんが演じる意味があるのではないか、とも。
そのあたりを、いずれぜひ、映画よりも連続ドラマとして、
じっくり時間を掛けて、観せて欲しいと思いました。
大河ドラマ『龍馬伝』
過去二作が女性脚本家によって非常に綺麗に作られた、
そのことに対する私の超個人的な不満を、
見事に覆してくれたような気がします。
まず、何と言っても私好みだったのは、
主人公が、最初からデキた人間として描かれていない、というところ。
もともと弱虫だった龍馬が、母の死によってさらに屈折する、
そういう陰影を背負っている、という設定が、
私としては、すごく興味深かったです。
とは言っても、演じているのが福山雅治さんなので、
決して重苦しくはならない、そこもまた、私には面白く感じられました。
龍馬が放つ屈折した光は、
やがて明るい色に染まる時が来るようにもなるのでしょう。
その一方で、対極にいる弥太郎の屈折は、彼の心を覆い尽くしたまま、
どこまでも昏く重く、沈んでしまったままなのかどうか・・
そのあたり、龍馬と弥太郎の対比がどう描かれるのかも、楽しみです。
それにしても・・
香川照之さんは本当にすごいですねぇ!
正岡子規として出演した『坂の上の雲』と同じ時間帯、
時代としても、それほど大きな差のないこの大河ドラマの、
まさに初っ端(しょっぱな)、
岩崎弥太郎としての風情が、第一声が、
当然のようにまったく違ったものとして演じられるのを観た時に、
同じ時間帯だろうが、同じような時代だろうが、またかと言われようが、
どうしても香川照之を使いたい、と思う制作側の気持ちが、
よく分かったような気がしました。
対する龍馬の福山雅治さんはというと、
まだ足が地面にしっかり着いていない、というか、
何となく周囲からちょっと浮いてる感じがするんですが、
逆に、そういうところが、この物語の龍馬には、
すごく合っているように思われました。
二人の子供時代を演じた子たちがまた、
非常に違和感のない、大人たちの風情に似たところがあって、
私のツボに入りまくりでした。
でも、だからと言って、前回のように、
何度も何度もいろんなところで使われる、というのは、
ちょっと勘弁して欲しいですけど。
龍馬と弥太郎の周辺の人たちでは、やはり、
今のところ、武市半平太(大森南朋)と以蔵(佐藤健)に惹かれます。
大森さんも、佐藤くんも、いい意味で色が突出していなくて、
周囲に馴染んでいて、面白いなぁ、と。
ただ、ここに、田辺誠一と森田剛を入れたらどうだったんだろう、
という妄想消えずw。(@IZO)
特に以蔵は、今のところ本当に「普通の人」なので、
それが「狂犬」と言われるようになるまでを、脚本はどう描くのか、
あるいはこのまま普通の人で押しちゃうのか、
そしてそういう以蔵を佐藤くんがどう演じてくれるのか、
大森・半平太がどう関わるのか、そのあたりもすご〜く楽しみです。
人間と人間が、かっこよさもかっこ悪さも含めて、
本気でぶつかり合う・・
時代を背負った男たちの体温が、観ている側にも伝わって来る・・
俳優たちの「熱」が、芝居に過不足なく練り込まれる・・
脚本・福田靖 演出・大友啓史 という顔合わせも、
私としてはすごく惹かれるところです。