最後の戦犯(talk)

2008・12・7放送(NHK
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

夢:戦争もの、というか、戦時中のものは、田辺さんは今までやったことがなかったんじゃない?
翔:そうだね。 私の勝手な印象だけど、「田辺誠一」と「戦争」 というのが 全然そぐわないと思っていたので、このドラマに出ると聞いた時、ちょっと不安もあったんだけどね。 軍人じゃなくて、お医者さんの役だと聞いて、納得したんだけど。
夢:確かにね~、田辺さんって、軍服のイメージないよね。
翔:・・・いや、コスプレとかで着る分には、十分にかっこよくはなるだろうけど、実際のドラマとなるとね・・血なまぐさい戦場に立つ姿が、まったく想像出来ないので。
夢:田辺さんには、カーキ色の軍服が似合わない気がする。
翔:・・・さっきから妄想フル回転させて考えてるんだけど、頭の中で、その姿がうまく像になってくれない・・・(苦笑)
夢:どうしてだろう?
翔:たぶん田辺さんは、そういう役をやりなさい、と言われたら、ちゃんとこなせるとは思うんだよ。 ただ・・・これは、私の勝手な捉え方なんだけど、今まで多くの役を演じて来て、中には、人を殺したり、傷つけたり、という、そういう人間もいたけれど、なぜか、田辺さんが演じると、人を傷つけることで一番傷ついてるのは自分自身、という、そういう人間になってしまうんだよね。
夢:・・・・・・・・
翔:沢木(サイコメトラーEIJI)にしても、織田(らせん)にしても、健二(ブルースハープ)にしても・・ね、まぁ、それらは若い時の作品だったから、ってこともあるかもしれないけど、でも、田辺さんが根っこに持っているのは そういうものだ、と 私は思うし、そういう田辺さんが今回のようなドラマで一番力を発揮出来る部分はどこか、と言ったら、今のところは、この役のように、戦争現場を外から見つめている人間、というところだと思うので。
夢:う~ん・・そうかぁ・・
翔:この野田秀和は、修(ARATA)の姉・静子(原沙知絵)の元夫で、今は離縁してしまっているけれど、ずっと静子を愛している、という設定。 愛しているのに、なぜ別れたか、というと、静子に子供が出来なかったから、ということだけど、そのあたりにもたぶんドラマがあるんだろうな、と、そういうことを観る側に自然に想像させる夫婦の関係になっていたように思う。
夢:何というか・・重苦しい雰囲気をやわらげてくれる存在だったよね。
翔:そうだね、静子を愛している、と言う部分が揺らがないので、感情移入しやすかったし。 
夢:うん。
翔:それほど好きなら何故離縁したのか、と言えば、きっと、「野田家」という医者の家系を継ぐ者として、厳格な親と衝突し続けることが出来なかったんだろうな、と。 静子は、そのあたりの秀和の押しの弱さを、彼が持ってる親への思いやりや優しさゆえのこととは思いながらも、内心 悔しくも残念にも思っていたんだろうし、秀和は、愛する者を護り切れなかった忸怩(じくじ)たる想いがあったんだろうな、と。 いずれにせよ、そこには、あの時代の より一層 厳格な「家制度」としての閉塞感がある。そのあたりも、よく出ていたように思う。
夢:田辺さんと原さんのやりとりも、すごく良かったよね。
翔:ふたりが醸し出す空気感から、本当にいろんなものがじんわりと伝わって来た。 長い会話じゃないんだけど、ちょっとしたニュアンスで、静子は、強がり言ってるけど、秀和が来てくれて嬉しかったんだろうな、とか、秀和は、離れてしまったことで、一層、静子を護ろうとする気持ちが強くなってるんだろうな、とか、それぞれの言葉の裏にある本当の感情が浮き上がって来たように思う。
夢:うんうん。
翔:たとえば、秀和の「ばかたれ」なんて、ほんとにもう静子に惚れてるんだなぁ、って、すごく伝わって来たから。(笑)
夢:いや、あの「ばかたれ」は私も好きだったなぁ、なんか可愛らしくて温かくて。(笑)
翔:そうだね。 だから、秀和の中には、いろんな周囲の思惑やしがらみとは別のところで、そういうものを超越した「静子への想い(愛情)」があるんだろうな、って思うんだよね。その想いは、たとえ戦争だろうが家制度だろうが何だろうが、彼から奪うことは出来ないんだ、と。
夢:なるほどね~・・
翔:そういう「秀和の揺らがない確かな気持ち」が、田辺さんが演じることで、より一層、観る側に伝わって来るような気がしたから・・
夢:うんうん。
翔:このところ、そういう役どころも多くなっている気がする。 『風林火山』とか、『ホテリアー』とか、『肩ごしの恋人』の最後とか、『ベルナのしっぽ』とかも、さまざまな葛藤はありつつも、相手を優しくしっかりと包んで、確実に愛する、そういう揺らぎなさを持った男性になっていたように思うし・・・
夢:ああ・・確かにそうだね。
翔:役にそういった「大きさ」を含ませるようになった最初の作品は『恋のから騒ぎ~十億の女』だったように思うけれども。
夢:・・・あ、なるほど。
翔:その「優しく包むような愛情表現」というのは、今後の田辺さんの大きな魅力のひとつとして、役を演じる上で役立って行ってくれる部分じゃないか、と私は思うんだけど。
夢:うんうん・・
翔:だから・・『ゴースト~ニューヨークの幻』が日本でリメイクされる、と聞いた時、サムの役をぜひ田辺さんに、と 願ってたんだけどね、内心では。 死んだ人間が愛する人を護る、なんて、そういうロマンチックな展開のお話こそ、田辺さんはぴったりだ、と、信じ切ってたので。(笑)
夢:ん~、それはあたしも観てみたかったなぁ!
翔:そうでしょう? 何か、田辺さんって、若い頃よりも、ずっと、そういう まろやかな役がしっくり来るようになった気がするから、いつかそういう役もやって欲しい、と、私の夢は、また広がって行くんだけどね。(笑)
夢:どこまでも貪欲だね~あいかわらず。(笑)
翔:それは自覚してる。(笑) だけど、田辺誠一という人は、そういう夢をいつまでも持たせてくれる俳優さんだと思ってるから。 今の田辺さんなら、ファンがそれぞれに多種多様な夢を持っていたとしても、あまり苦にならないんじゃないか、と思うので。(笑)
夢:苦にならない、かぁ、 いいね~。 確かに そういう想いを全部吸収してくれそうだもんね、今の田辺さんなら。(笑)