『ふたつのスピカ』(第6話)感想

NHKドラマ8『ふたつのスピカ』(第6話)感想
ちゃんと予約セットしたはずなのに、DVD録画に失敗・・(泣)
でも、今夜は たまたまリアルタイムで観ていたので、よかったです。
1回観ただけのうろ覚えの感想になりますが、ご了承下さい。


今回は、秋(中村優一)の死、という大きな悲しい出来事がありました。
今回のような「メインキャラの 病気による死」というのは、
よくドラマに使われるシチュエーションではあるのですが、
安易に、ただお涙頂戴のためだけの展開になっていることも多く、
人一人の命を賭けて訴えようとするものが、あまりに弱くて、薄っぺらで、
がっかりすることの方が多かったりします。

今回の秋の死が、そうならなければいいが・・と、
ただ ドラマを盛り立てるための道具にならなければいいが・・と、
いささかの不安がなかったわけではありませんでした。


しかし、さすがにスピカのスタッフは、
そのあたりのことは十分に考慮してくれていたようです。
秋の発病から死までを、あまり感情過多にならずに、短時間で凝縮させ、
むしろ、秋の死によって、
彼から「想い(夢)」を引き継ぐことになる友人たちの姿を
キメ細やかに描くことによって、
逆に、秋の不在を浮き彫りにして行く、という、
ドラマチック過ぎない、堅実な、
しっかりと体温の感じられる作りになっていたように思います。


病気を受け入れた後の秋が、
死に近くなるにつれ、どんどん透明度を増して行く、
その、秋の周囲に生まれた澄んだ空気が、
彼のさまざまな無念を浄化してくれているようで・・
秋をそんなふうに演じた中村くん、本当に素晴らしいと思いました。

そして、彼が妹(菊里ひかり)に語った
「夢を実現させるための一番の近道は、同じ夢を持つ友達を作ること」
という言葉には、このドラマの芯を成すとても深い意味が
含まれているように思われました。


秋が走り残した950周を、みんなが引き継いで走れ!
という大西先生(ゴルゴ松本)の提案に、
まずアスミ(桜庭ななみ)が走り出し、
万里香(足立梨花)やふっちー(大東俊介)が続き、
やがて生徒たちが全員走り出す中で、
(かたく)なに走ろうとしない圭(高山侑子)。
そんな彼女に、ふっちーが「近江!」と声を掛け、
その声に後押しされるように、ようやく走り出す。
全速力で駆け抜ける1周。
ふっちーを抜き、万里香を抜き、ついにアスミを抜いたところで、
立ち止まった彼女は号泣する・・
お葬式で秋に花を手向けた時でさえ泣かなかった圭が、
秋が走るはずだったランニングを担うことで、やっと秋の死を受け入れ、
泣きじゃくる姿に、こちらも思わずもらい泣きしてしまいました。


そして、そうやって、秋の「夢」は、みんなに引き継がれる・・
まるで、超新星が、爆発して粉々になった後、
その塵(ちり)が、新しい星の誕生を促(うなが)すかのように・・
みんなが分かち合った950周は、
秋の「夢」を分かち合い、育て合うことに繋がって行く・・

――このエピソードが、私は、このドラマで一番と言ってもいいくらい、
とてもとても好きになりました。


「人の本当の死」とは、肉体が滅びることではなくて、
人々の記憶から忘れ去られることだ、と、よく言われます。
秋の生命は、彼の「夢」を引き継いだ彼らによって、永遠に生き続ける・・
ひとりの若者の死が、このドラマで、そういう描かれ方をしたことに、
何だか勝手に胸が熱くなっている自分がいました。


この時の、秋のマラソンカードもそうだけれど、
今回は、小道具の使い方がとても上手かったように思います。
さくらが弾くピアノ(猫ふんじゃった♪にあんなにジ〜ンと来たの初めてw)
手作りのプラネタリウム、エロ本w、圭が撮った写真、
ぽんかんジュース、宇宙に行ったらやることノート、等々・・
どれもこれも、人と人を繋ぐ絆(きずな)になっている、
そのことに、またホロリとさせられて・・


さて、そんな彼らと呼応するように、
大人の夢も、また少しずつ動き始めたようで・・
友朗(高嶋政宏)が、ロケットの設計図を佐野(田辺誠一)に見せ、
「ロケット設計の会社を立ち上げたい。協力してくれないか」
と持ちかけます・・が・・・
うーん、この時の佐野の表情が、ものすごく硬くて、
どうも、すんなり受け入れられない、という雰囲気だったように
思われたのですが・・ 私の勘違いでしょうか。
(録画失敗で、確かめようがないのがつらい・・)


いずれにしても次回はもう最終回。
果たして大人ふたりの夢はどこへ向かうのか、
本筋のアスミたちの今後と共に、
彼ら大人たちのこれからも、しっかりと見届けたいと思います。