『ふたつのスピカ』(第7話=最終回)感想

『ふたつのスピカ』(第7話=最終回)感想
う〜ん・・・NASA広報(神保悟志 他)の描き方が
型にはまった、いかにも悪役らしい悪役
になってしまっていたのが、少し残念だったなぁ。
ここまで、一人一人の多面性を描いてくれていたドラマだっただけに、
彼らに対しても、ただ憎々しいだけじゃない、
どこかで、自分の仕事に熱心なゆえに無遠慮になってしまう、といった、
無理のない説得力を持たせてやることは出来なかったものか、と。


まぁ、最終回に初めて出て来た登場人物に それだけ厚みを持たせるのは、
すごく難しいことだとは分かってるんですけどね、
彼らなりの、仕事への一途な情熱を見せて欲しかったな、
(捻じ曲がってても薄汚れててもいいから)
という思いが消せませんでした。
その情熱が、結果、相手(アスミと仲間たち)を傷つけてしまう、
というような流れになったとしても、
少しは、広報の人たちにも共感が持てただろうに、と。


まぁ、でも、彼らが放つ、お決まりの「腐臭」みたいなものが、
友朗(高嶋政宏)のきっぱり割り切った力強い言葉によって、
一刀両断にされるさまを観るのは、非常に小気味良かったけれど。


実は、この場面を観るまで、
友朗を高嶋さんが演じる意味、というのが、どうもよく分からなくて、
最初から ずーっと納得出来ないままで、
自分の中で、ちょっと消化不良になりかけていたのだけれど・・

友朗の大きさ、懐の深さ、頼もしさ、娘への絶大なる信頼・・
それらが、一緒にいた佐野(田辺誠一)の存在さえ吹き飛ばすほどの
(ゆえに、田辺ファンとしては、ちょっと嫉妬さえ覚えるほどのw)
確かさ、で演じられたのを観た時に、
「だからこそ、の高嶋政宏」だったのだなぁ、と、おおいに納得出来ました。


アスミ(桜庭ななみ)・ふっちー(大東俊介
万里香(足立梨花)・圭(高山侑子)に関しては、
今回も、全体的に、無理のない、素直な流れになっていたように思います。
はっきりした悪役の登場で、
四十九日あたりは、いささか あざとくなりかけてしまったけれど、
秋(中村優一)のメッセージが、そのあたりを上手く浄化してくれて、
言って欲しい、と思っていたことを、ちゃんとアスミに伝えてくれたので、
なおさら心に沁みて、泣かされてしまいました。


ラソンも良かった。
ふっちーにも、万里香にも、圭にも、譲れない何か、がある。
追い抜いて行くアスミに、ひとまず自分の夢のカケラを預けたとしても、
いつかきっと、アスミに託した夢のその先に跳んで行って、
自分の夢を叶えてみせる、と、
決意を新たにする彼らが、すごくたくましく見えました。


そうなんだなぁ・・
どんな「夢」でもそうだけれど、
宇宙に行く、なんて夢は特に、普通の人にはなかなか描けない、
あまりにも壮大で、掴みにくいものだからこそ、
それを夢見た人々の「絶対に行きたい!」という気持ちの積み重ね
がなければ、決して叶わないものだ、とも言えるわけで。


人は、そうやって進歩して来たのですよね。
人の夢の上に自分の夢を重ねて、
自分の夢の上にまた誰かの夢が重なって・・
多くの人のそういう「夢=想いや願い」が、
確実に、新たな世界へ向かう一歩一歩に繋がって来たのだし、
またその先の一歩一歩に、確実に繋がって行くに違いないのだ、と。

そんな「夢の連鎖」が・・「人の想い」の広がりや成長が・・
こんなに気持ちのいいドラマとして描かれたことが、何だかすごく嬉しい。


5年後、というドラマのラストは、蛇足に感じられないこともないし、
親切過ぎるようにも思うけれど、
あえて、夢を掴んだアスミの姿を描きたかった、というスタッフの気持ちも
何となく分かるような気がしました。
アスミが実際に宇宙飛行士になったことで、
「そこから先」のみんなの夢が、
ただの夢ではなくなったような気がするから・・
ドラマにちりばめられた数々の言葉の行き着く先(収束場所)を、
きちんと見せてもらえた気がするから・・


さて田辺誠一さん。
最後は、友朗においしいところを譲った、という感じでしたが、
まぁ、納得のフェードアウト、という気もしました。
10年前の事故以来 時間が止まってしまった百合との関係に、
ほんの少しでいいから進展があれば なおさら良かった、とも思うけれど・・
ワキとしては、このあたりまで描いてもらうのが精一杯だったかな。


田辺ファンの正直な気持ちとしては、
中盤まではともかく、
終盤は完全にアスミたちの助言者の立場でしかなかったので、
佐野自身のドラマがもっと観たかったなぁ、というのが、
わがままな本音だったりしますが。


さておき。
こういうジュブナイルドラマで、こういう立ち位置の田辺さんを観るのは、
私としては、すごく面白かったです。
佐野が、最初から、分別ある思慮深い大人で、
未熟な若者たちを正しい方向に導く完璧な指導者だったら、
こんなに惹かれなかったと思うw。
佐野の欠けた部分、足りない部分、が、
アスミたちと出逢ったことで埋まって行く・・
そういう「大人の成長」を、わずかでも見せてもらえたことが嬉しかった。


また、ドラマ全体を通して、
佐野という役を、そういうふうに作ろうとした脚本と、演出と、
それを田辺さんに演じさせたいと思ってくれたプロデューサーと、
実際に演じた田辺さんの、
互いが互いに寄せる信頼関係みたいなものが感じられて、
観ていて、すごく気持ちが良かったです。


そういうスタッフとの信頼関係は、田辺さんだけではなくて、
他の出演者からも伝わって来たこと。
だからこそ、こういう良質のドラマが作れたのだ、という気もします。

いつも、こんなふうに納得づくで気持ち良くドラマを観られたら、
本当に幸せなんですけどね〜w。