『ふたつのスピカ』(第5話)感想

NHKドラマ8『ふたつのスピカ』(第5話)感想
4話まで続いた宇宙学校内での物語も、今回は外の世界へ場面転換。
夏休み、唯ヶ浜、浜辺のランニング、花火、淡い恋・・
青春真っ只中、という感じの第5話。

まぁ、連続ドラマによくある小旅行の回、っていう感じですが、
そんな息抜きの回ではあっても、5人の感情は、やはりしっかり描けていて
「選ばれた人間」の嬉しさと戸惑いと、
「選ばれなかった人間」の悔しさと嫉妬が、
唯ヶ浜という自然の中で、いろんな形で交錯して行きます。


中でも、留学候補の二名に選ばれながら
最後に選考から落ちるアスミ(桜庭ななみ)は、
その両方を経験するわけで、
友だちを蹴落とすようなことをしながら、結局は選ばれなかった、
その悔しさと、友達へのすまない気持ちが、
彼女の中で、交互にあふれて来ます。

そんな彼女を救ってくれたのは、
他でもない、彼女に蹴落とされた仲間たち。


「どうしてもって言うんなら、一緒に走ってあげてもいいわよ」
なんて、あいかわらず上から目線の、
でも、万里香(足立梨花)らしい励まし方や、
普段はノーテンキに明るい圭(高山侑子)の「私だって悔しい」という
心情の吐露など、
それぞれの立場や性格がうまく生かされた台詞が、
あいかわらずすんなりと心に届きます。


特に、万里香の性格というのは、本当によくわかる、って感じw。
最終選考に残れなくてふてくされちゃうところや、
圭にあたってしまうところ、も、
自分の感情をうまくコントロール出来ない、
自己チュウでわがままな彼女らしいし、
「仲間を蹴落としてしまった」と悔いるアスミの前で、
「英語のテスト39点〜!」と、アスミの最大の弱点を叫んでおあいこにする
彼女なりの不器用な優しさもまた好もしくて。


アスミが元気を取り戻す切っ掛けを作ってくれたのは、
そんな仲間たちだけじゃなくて、
実は、アスミの母・今日子の墓参りに来ていて、偶然アスミに出逢った
佐野(田辺誠一)の存在も大きかった。

たぶん佐野は、あせりや嫉妬を抱くアスミの気持ちに、
昔の自分を重ねていたんじゃないかなぁ。
アスミだけじゃない、万里香の気持ちも、ふっちー(大東俊介)の気持ちも
圭の気持ちも、みんな、彼自身、若い頃に経験してる、
そのことを思い出したから、
彼は、みんなの気持ちに添った言葉が、
掛けられるようになれたのかもしれない。


獅子号の事故、というのは、不可抗力には違いなかったんだろうけれど、
99.99%の安全を主張し切れなかった自分が許せなかった、
という友朗(高嶋政宏)の気持ちも、すごくよく分かる気がしました。

自分の案が採用された以上、採用されなかった佐野の分も、
より完璧なものを作らなければならない責任がある。
それが「闘って容赦なく勝った人間」の使命でもあったはずなのに・・
ひょっとして佐野だったら、
あの場で決して屈することはなかったかもしれないのに・・

そこに、もしかしたら佐野とは違った意味・違った形の、
友朗の羨望と嫉妬と後悔が潜んではいなかったか、と。


学生たちの、若さゆえの屈折や一途さも、キラキラしていいけれど、
やはり私は、歳が近い分w、
友朗と佐野それぞれが抱く複雑な想いの方に、より惹かれてしまう。
そして、ついつい深読み(妄想とも言うw)してしまう。
それだけの魅力が、友朗と佐野の 長い時を経て来た関係性にも、
演じているふたりの俳優にも、ある、と思うから。


だいたい、今回、
5人と同じような青春時代を過ごしていた
若い頃の彼らを(回想シーンでではあれ)見られるとは思ってなかったし、
「私もまだ40歳だ」なんて台詞が聞けると思ってなかったし〜w。


まぁ、正直、佐野には、もう少しの間、
辛辣な部分をなくさないで欲しかったし(いい人になり過ぎ)
特に今回、都合いいように使われ過ぎ、神出鬼没過ぎ、
とも思わないではありませんが、
まぁ、そこはそれ、田辺ファンとしては、出番多くてオイシイ・ウレシイ
というのが本音だったりします。
白いジャケットの佐野、かっこよかったし、
今まで観られなかった佐野のいろんな表情を観ることが出来て、
楽しかったし・・ねw。


最後のシーンは、
あまりにも唐突に野島ドラマみたいになって、
正直ちょっと引いたのですが・・

どれだけ才能があり、どれだけそれを認められていても、
挫折しなければならない、諦めなければならない人間もいる・・
来週、そんな秋(中村優一)の気持ちにどれだけ入り込んで行けるか・・
ドラマのための病気じゃない、スピカらしい決着のつけ方を
見せてくれることを願っています。



第4話感想の際、
橘プロデューサーのお話を紹介させていただいたこともあり、
ドラマスタッフのブログ記事にトラックバックさせていただいたのですが、
そのご縁で、あちらのブログからここに飛んで来て下さる方が大変多く、
とても嬉しく励みになりました。 ありがとうございました。