『ふたつのスピカ』(第3話)感想

NHKドラマ8ふたつのスピカ』(第3話)感想
今回(3話)から5話まで脚本担当が替わる(荒井修子さん→松居大悟さん)
と書いてあったので、その点、注目していたのですが、
いわゆる教訓的な「よく練られた良い台詞」がなかった代わりに、
それぞれのキャラを生かした、というか、キャラに踏み込んだ台詞が多くて、
改めて、楽しんで観ることが出来ました。


アスミ、ふっちー、圭、万里香、シュウ、の5人が
それぞれ違った色を持っている、
それが、さらに今回、より鮮やかに染め分けられて来たような気がします。


アスカ(桜庭ななみ)の、宇宙に行きたい!というまっすぐな夢が、
周囲の人たちの気持ちを全部すくい取ろうとして生まれたものであること、
彼女の夢は、彼女一人のものではなく、多くの人の「想い」の結集であること
だからこそ、彼女は、揺るぎなくその夢に向かって行けるのだ、ということ。
「ロボットが壊れても誰も悲しまない」という桐生(向井理)に、
「でも(ロボットを作った)桐生さんが哀しむ」とアスミが応えた、
その言葉の中に、アスミが背負おうとしてる大きな大きな「み〜んなの夢」
の端っこが見えたようで。


ふっちー(大東俊介)の決断。
「なぜ自分は宇宙飛行士になろうと思ったのか」・・
その想いの根っこにある、大切なものに気づいた彼。
たぶん、これから目指そうとするところが、
きっと彼が、今まで気づかないまま求めていた ベストポジション。
恋敵の相手(桐生)は、確かに、相当手ごわい かなりのいい男だけど・・
でも、私はあなたの味方です!w


圭(高山侑子)の、劣等感から来る痛みも、すごく良く分かる。
「やっぱ、仲間を蹴落とさなくちゃいけないんだよ」
頑張っても頑張っても追いつけない、彼女が言うから、台詞が生きている。


万里香(足立梨花)の、素直になれないちょっとひねくれたところも好き。
「佐野先生(田辺誠一)の言ってることは間違いじゃない」
そういえば彼女の性格、どこか佐野先生に似ている。


そしてシュウ(中村優一)。
彼は、何であんなに優しいんだろう。
誰の想いも理解して、誰の気持ちにも自然に近づくことが出来て、
そして、その人が今一番欲しいと思ってる言葉を
かけてあげることが出来る・・
原作は読んでないし、アニメも観てないんだけど、
彼の今後を知ってしまった(某新聞のインタビューで)身としては、
だからこそ の優しさなのか、と、泣けて来る・・・


佐野先生は言いました、
     「実らない努力があることを、肝に銘じておけ」と。
塩見先生(かとうかず子)は言いました、
     「世の中に無駄な努力などひとつもないのよ」と。
一見矛盾しているように思われる二つの言葉。
しかし、これらの言葉が、
実は、どちらも間違いではなく正解である、ということ・・
5人が、どういう形でそのことを理解して行くのか、
そのための道筋、が、かすかに見えたようにも思える回でした。



さて、佐野先生。
こちらの背景も、徐々に明らかになって来て、ますます興味深し。
特に後半は、思いがけず、宇宙への純粋な憧れや夢、
さらには、学生想い の面が出て来て、一気に感情の幅が広がった感じ。
(おい、こら、そこの学生、
 もう「ロボットみたい」なんて言わせないぜっw)


特に、有名な「地球は青かった」という言葉に熱心に注釈を加えるあたり、
まるっきり宇宙好きの少年テイストになっちゃってる佐野の、
でも どこかやっぱり不器用な言い方が、いとおしくてw。
そこに すかさず突っ込む拝島さん(本上まなみ)グッジョブ!
(橘プロデューサーもおっしゃってましたが、
 あの場面の田辺さんの演じ方、私も好きでした)


―――しかし一方で、
佐野にはまた、終わりに出来ない大事なこともあって。
そのあたりをどう決着つけるのか、非常に気掛かりなところではあります。
(原作ではどうなっているんでしょうか)


佐野の夢・・ 友朗(高嶋政宏)の夢・・
二人がそれぞれに失ったもの、
これから見つけて行かなければならないもの・・
大人は大人なりに、夢の手前で止まったままの残酷な「現実」に、
立ち向かわなければならなくて・・


瑞々しく、鮮やかに、一歩を踏み出そうとする学生たちの後ろで、
まだ踏み出せない、まだ囚(とら)われている、
そんな大人たちの哀しみや躊躇(ちゅうちょ)や戸惑いや憂いや後悔が、
どうか、いつか少しずつ晴れて行きますように・・・


アスミの「夢」が、
彼らを、また、明るい日差しのもとに導いてくれますように・・・


と、願わずにはいられない、佐野と友朗の再会の場面でした。