「スタジオパークからこんにちは」〜徒然亭四兄弟

スタジオパークからこんにちは――徒然亭四兄弟
3月20日(金)のNHK「スタジオパークからこんにちは」は、
ちりとてちん』の「徒然亭四兄弟」こと、
桂吉弥さん(草原役)、青木崇高さん(草々役)、茂山宗彦さん(小草若役)
加藤虎ノ介さん(四草役)の特集でした。
4人がそれぞれひとりで出演した時のダイジェスト版だったのですが、
4人四様の個性が浮き彫りになっていて、
非常に興味深く、また、内容の濃いものにも なっていたように思います。


実は、茂山さんの回だけは、以前(2月12日)リアルタイムで観ていて、
狂言師の家に生まれた人間の、
壮絶な闘いと苦悩の日々を語る茂山さんの淡々とした語り口に、
すごく胸が痛くなってしまって、
草若(渡瀬恒彦さん)という天才落語家の子供に生まれた葛藤を、
だから、あんなにも切ないリアリティで演じることが出来たのか、と、
ようやく気づかされたようなわけなのですが。
今回改めて、小草若の、あの、
ちょっと何かあるとすぐ涙腺が決壊する無防備な子供のような
感情の放出が、
茂山さんの、心に防護壁を張らない
素直で豊かな感受性を物語っているような気がしました。


加藤虎ノ介さんは、このドラマに出るまで、ほとんど無名と言ってよく、
四草役で、爆発的な人気を得るまでは、
本人いわく「フリーター俳優」だったのだとか。
彼の語り口には、この人気を喜んでいる、というより、
どこか戸惑いのようなものの方が強く感じられて、
それがまた、見ているこちらの気持ちをキュンとさせる、というか(笑)
とにかく、彼の一言一言に萌えまくっておりました。(笑)


ちりとてちん』を毎回観ていて、非常に惹かれたのが、
この茂山さんと加藤さん。
彼らには、非常に複雑な屈折があって、その屈折が、
若狭塗り箸のように(笑)複雑な色合を演技の上に浮き立たせている
ように感じられて、
屈折した人間にこそ魅力を感じ、惹かれてしまう、
私のようなへそ曲がり者には、
たまらない魅力を持ったふたりに思えました。


それに比べて、
「背が高かったから、友人に『俳優になったら?』と勧められた」という
青木さんの屈託のなさといったら!(笑)
もちろん、そのときどき、
彼も大いに悩んだり苦しんだりしたのだろうけれど、
少なくとも、今回のスタパでは、そういう「負」の部分はあまり感じられず、
だからこそ、あの草々の、
どこかおおらかで大陸的な雰囲気が醸し出されたんだろうな、
そういう彼がいてくれたから、屈折しまくりのふたり(笑)も
救われる部分がいっぱいあったんだろうな、
――と、そんなふうに思わせてくれる雰囲気を持った人でした。


そして、草原役の桂吉弥さんが、
そんな個性派揃いの3人を、ソフトに、しかもコシ強く、大きく包み込んで、
「常識」のワクに、ゆるやかに3人を取り込んで行く、という・・・


このアンサンブルの良さが「徒然亭四兄弟」の大きな魅力なんでしょうね。


ちりとてちん』も、いよいよ今週が最終週。
最後まで、この4人と、彼らを取り巻く人々が描くドラマを、
楽しみたいと思います。




それにしても・・・
加藤さんといい、池鉄(池田鉄洋さん)といい、
小劇場系の俳優さんたちって、
どれほど苦労して俳優を続けているのでしょうか。
自分でどれほど満足の行く芝居をしたとしても、
それを観て、喜び、感動してくれる「観客」という存在がなければ、
「演じた」ことにはならない・・
観てくれる人がいて、心を動かしてくれる人がいて、
初めて「演じた」と言える・・
そのことを肌で知っているのは、本当は、
彼らのような人たちなのかもしれない――などということを、
IZO』や、『笑っていいとも!』や、今回の『スタパ』を観て、
あれこれ考えさせられた、翔なのでした。