『涙そうそう』/『医龍2』感想

涙そうそう』/『医龍2』感想
涙そうそう
「約束された切なさ」が、きれいに結実した作品。
幼い頃から兄妹として育った血のつながらない青年と少女が、
やがてお互いに恋心を抱き、
しかし、その想いを最後まで言葉にしないまま、
一方が病で死んでしまう・・・
―――こんなふうにあらすじを書いてしまうと、
いかにもお涙頂戴のベタな映画にしか感じられないのだけれども、
土井裕泰監督・吉田紀子脚本が、
誠実に丁寧に兄妹とその周辺を追い、描こうとし、
妻夫木聡長澤まさみが、素直にその想いに応えて演じていたおかげで、
気持ち良く泣ける映画に仕上がっていたように思います。


確かに「泣ける映画」ではあっても、
さぁ感動しろ!さぁ泣け!というあざとさがあまり感じられなかったのは
そういうスタッフ・キャストの力ももちろんだけれども、
沖縄というおおらかな風土と、流暢な方言、音楽の力も大きかった。
どこか突き抜けた明るさと、寂しさと、
その両方が、画面からゆるやかに伝わって来たような気がします。


ただ・・・
私の中のどこかに、この映画のすべてを受け容れることが出来ない
へそ曲がりな部分があるのも確かなのですよね。
それは多分、『解夏』等を観た時にも感じた、
「約束された切なさ」が、約束されているがゆえに破綻(はたん)がない・・
きれいに出来上がり過ぎている・・
という、ものすごくわがままで贅沢な「物足りなさ」なのかもしれない。


妻夫木くんは、本当に上手い俳優さんだなぁ!と、
彼が出ているどんな作品を観ても思います。
この人は、どういう役をやっても「妻夫木聡」なんだよなぁ!
それは、木村拓哉がどんな役をやっても「木村拓哉」であることと
似ている。
キムタクはそこから抜け出ようとあがいているようにも見えるけれど、
ブッキーは、そういう自分に素直に酔うことが出来るんですよね、
きっと。
その違いが面白いと思うし、
そこがブッキーの強みであり、弱みでもあるような気がする。


医龍2』
いくら超一流の外科医でも、こんなに困難な状況って滅多にないだろう、
とは思うのですが、
その嘘っぽさを、登場人物それぞれのキャラの個性と魅力が救っている、
という気がします。

このドラマには、私の好きな俳優さんがふたり出ています。
阿部サダヲ高橋一生
彼らは「役を通して自分を見せる」のではなく、
「役を作って役になろう」としているように、私には思えます。
作っているのだから、どうしても「嘘」が混じる。
その嘘を、嘘と感じさせないように、彼らは「演じる」。
演じている彼らは、自分の役に時に寄り添い、
時に喧嘩し、捻じ伏せつつ、
「役」を手繰り寄せ、「役」を練り上げ、作り上げる。
ふたりを観ていて、私がすごく惹かれるのは、そのあたり。


妻夫木くんのように、
どんなに破天荒な役をやっても、
妻夫木聡としての「美しさ」が損なわれない、
それもすごいことではあるんだけど、
私は、すごくへそ曲がりだから、とんでもない役をやると、
こちらの予想を越えるとんでもない方向に跳んで行っちゃうような、
変な俳優さんが好きなんだなぁ!(笑)