「NHKステラ」(『風林火山』小山田信有特集)

NHKステラ(『風林火山』小山田信有特集)(9/14
「NHKステラ」(9/14号)は、『風林火山』小山田信有特集。
田辺誠一さんが表紙を飾っています。http://www.nhk-sc.or.jp/stera/
記憶が正しければ、
『からくり事件帖』(2001年)以来のステラ表紙ですが、
インタビューから受け取った内容の充実度という点では、
少なくとも私にとっては、雲泥の差がありました。


風林火山』における小山田の立ち位置は、
前半と後半で大きく色分けされます。
前半、武田の家臣でありながら、
郡内の領主という独自の立場を貫こうとする小山田を、
田辺さんは、「波紋を起こしたい」という言葉で表現していて、
それが、どこか、私には、
彼の作品『discord』になぞらえているようにも思えて、
それだけでかなり「うわ〜〜っ♪」という気持ちになったのですが、
後半、美瑠姫と出逢ってからの小山田の心情についての話は、
私にとっては、さらに衝撃的でありました。


私は、美瑠姫が産んだ子が自分の子ではない、と知った小山田には、
(美瑠が、戦に負けて敵国武田に売られ小山田の側室になった、
という経緯もあって)
彼女を愛すれば愛するほど、心の奥のどこかで、
「その子を得たことで、いつか美瑠が自分を捨てるのではないか」
という疑心というか、
姫との間に埋められない溝が出来てしまったのではないか、
という気がしたのですが、
そうじゃなくて、田辺さん自身は、あくまで、
「自分が彼女に‘幸せ’を作り出してやれると思っていた、
作ってやりたかった」という、
美瑠に対する「純愛」の気持ちを抱き続けていた、
という捉え方をしていて、
さらに、田辺さんの「自分の命というコマ・・」という言葉にぶつかって、
何だか、私自身、小山田に対する見方に、
決定的に欠落しているものがあったんだなぁ、と、
かなりショックでした。
小山田が、美瑠姫に対して、それほど一途で、純粋で、大きくて、
切ない気持ちを抱いていたなんて!
・・・しばらくの間インタビューの続きが読めなくなってしまったよ〜、
自分の読みの浅さが恥ずかしくって。(苦笑)


もちろん、小山田と美瑠の最期は、
大河の中のほんのひとつのエピソードでしかないのだけれども、
小山田の純愛は、完全に、勘助の由布姫への想いにリンクするもので、
この大河が、非常に男臭く作られていながら、
実は「男女の愛の物語」だった、という色合いを
晒し始める兆しになるのかなぁ、という気もしました。


今回のステラ、
田辺さん、インタビューだけでなく、写真の表情も、とてもいいです。
私は、5ページ右下の、腕を組んで正面を見据えている写真が好き。
顔の輪郭が、すごくシャープになっていてびっくりしました。
痩せましたかね。