『肩ごしの恋人』(第8話/衝撃の夜 別れの朝)感想

肩ごしの恋人』(第8話/衝撃の夜 別れの朝)感想
え〜〜っ、何なんだよぉ!この展開は!――ってご立腹の方、
多数いらっしゃると推測されますが。(笑)
実際に萌(米倉涼子)と崇(佐野和真)が抱き合うってシーンがなくて
ホッとしたわ、私は。(笑)

だいたい、崇が本気で萌に惚れてる、とも、
萌が崇を柿崎(田辺誠一)以上に好きになってる、とも、
私にはどうしても思えないんですよね。
妊娠、という事実があったとしても、それは、
本当に愛し合ったふたりの「愛の結晶」としての子供ではない、
と思っているし・・・・・なんてことを言うと、
かなり誤解を招いてしまうかもしれないですが。(笑)


かなり無茶な論法になるかもしれないのですが、
誰かと心安らかな繋がりを持つ、ということが、今の萌には必要なのだ、
その結果としての妊娠・出産も、彼女の深い傷を癒すのに
必要なものなのだ、という気が、私にはするのです。

彼女の恋愛に対する臆病さは、
大学時代にレイプされた、というところから派生している。
そこからきちんと立ち直れないまま、今日まで来てしまった。

るり子(高岡早紀)のように、
男(人)に頼る、男(人)に寄り掛かる、ということが出来ないのは、
もちろん、萌の生来の性格もあるのでしょうが、
彼女の心の深いところで、その時の傷が塞がっていないから、
なのではないでしょうか。

倫理的にどうこう言うよりも、もっと切実な問題が、萌の中にある。
そこを乗り越えなければ、本当の恋愛は出来ない。
だからこそ、まず「家族」のような関係を育むことが出来た
崇との「繋がり」が必要だった、
と言ったら、あまりにも都合のよい解釈になってしまうでしょうか。


萌から「もうやめようよ」と言われ、振られた柿崎。
今後の身の振り方を思案中。
彼の中では、萌とのことは「不倫」ではないのですよね。
奥さん(中山恵)と別れるかどうかというのは、萌が原因ではない、と、
はっきりと柿崎の口から語られたことが、私にはすごく救いになった。

こういう細かいところで、上手いなぁ、と思えるところが随所にある。


柿崎の奥さんについても、なぜ柿崎のところに戻って来たか、と言えば、
やっぱり柿崎のことが好きだったんだろうな、と思うのです。
いや「どこが!?」って言われるの承知の上で書いてるんだけど。(笑)
好きだ、という気持ちを、こういう形でしか表せない、
そういう人もいると思うから。


優柔不断な柿崎は、とうとう文ちゃん(池内博之)に一喝される。
「ぐずぐずしないではっきりしろ!」と。
このシーンが、私にはすごく気持ちがよかった。
こんなふうにはっきりと、柿崎の心の鎧を剥がそうとしてくれる人を
ずっと待っていたから。

一歩前に進むために、
萌が誰かとの温かい繋がりを必要としていたように、
柿崎は、本当に傷つくことが必要だったんじゃないかな。
そうして、その痛みを、
ちゃんと心に感じることが必要だったような気がする。


明日はいよいよ最終回。ひとりひとりが、それぞれに
さまざまな結論を出すことになるのでしょう。
最終回のあらすじを読むと、
どうやら、皆 ほんの少しでも前に進む、という形になりそうで嬉しい。


再び、萌の前に立ち、手を差し出す柿崎。
それを素直に受け容れることが出来たら、
萌も成長したことになるんじゃないか、と私は思うのですが、
もし、受け容れられなかったとしても、
萌の肩ごしには柿崎がいて、そのことに気づいた萌が心を揺らす・・
そのあたりに、このドラマの、
原作とはちょっと違った展開があってもいいのではないか、
という気がしますが、さて、実際にはどうなるのでしょうか。

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柿崎を演じている田辺さんについて、私が感じたことを少し。

原作をパラパラと斜め読みした感じでは、
柿崎って、最初から最後まで取り乱すことなく、
かっこよく自分の気持ちを収めていて、
それゆえに、どこかリアリティに欠けてる、というか、
萌との関係にしても、
本当に傷つかないで終わってるような気がしたのですが、
(あくまで私個人の印象です)
ドラマでは、最初のそういう見た目かっこいい部分が
どんどん剥がれ落ちて、彼の内側に、人間らしい悩みや迷いが
渦巻いているのが明らかになってしまっている・・・
そういう、ちっともかっこよくない部分が、
田辺さんが演じる柿崎にはあったのですよね。

それって、どこまでもクールな原作の柿崎とは違っている
かもしれないんだけど、私は逆に、観ていてすごく興味深かったです。

絵に描いたようなかっこよさ、というのは、
所詮、絵に描いたようでしかない。
クールな柿崎、の時は、遊びでしかなかったはずの萌が、
柿崎の「生身」に触れることによって、
次第に彼に惹かれて行った、というドラマの流れは、
確かに、原作の柿崎の「美しさ」みたいなものを
壊してしまったかもしれないけど、
より人間としての重みを持った描かれ方をしているような気もします。

演じている田辺さんも、
「人の弱さ」みたいなところに同調してしまうので、
特に、今回のような役の場合、
突き放して綺麗に演じられる人じゃないんだなぁ、と、
改めて、そんなことを感じました。
強い人間を演じる時は 綺麗な色味のままなのにね〜・・・不思議な人だわ。