『肩ごしの恋人』(第3話/情けなくて涙が出る)感想

『肩ごしの恋人』(第3話/情けなくて涙が出る)感想
うん、今回も面白かった。
1話<2話<3話と、少しずつ焦点が絞れて来ている感じがします。
まぁ、あれこれツッコミどころはあるけれども、
とりあえず、それぞれ悩みを抱えてるんだなぁ、というのは、
伝わってきました。
みんな、何かを掴もうと足掻いている、という部分を、
萌(米倉涼子)とるり子(高岡早紀)を中心に、重々しくなく
軽快に描いているので、深刻にならずにさらっと観られます。

でもまぁ「実際はそんなもんじゃないぞ!」と
リアルなものを求めてしまったら、
相当 物足りなくはあるんですけれどもね。(笑)


萌-るり子-崇(佐野和真)トリオと、
柿崎(田辺誠一)-文ちゃん(池内博之)-リョウ(要潤)トリオの対比は
『2001年のおとこ運』の20代と30代の対比に近いようにも
思うけれど、
個人個人のキャラの立たせ方は、今回のほうが、
ずっとうまい気がするし、共感出来る部分もずっと多いです。


登場人物が発する言葉の数々も、なかなか含蓄があって面白い。
上司だった高崎(若村麻由美)が最後に萌に言った「頑張って」など、
「頑張れなんて言わない」と言ってたはずの彼女の口から
発せられたものだからこそ、
萌に対する高崎なりのエールになっていたような気がします。
(それにしても若村さん、魅力的だったなぁ!)


脚本は、1話からずっと後藤法子さん。
番組開始早々の段階で、すでに8話の初稿が上がっている、と、
橋本プロデューサーのブログにあったので、
たぶん最後まで彼女が書き通すのだと思います。

最近のドラマは、
数人の脚本家が回ごとに持ち回りで書くことも多いのですが、
今回の後藤さんは、そういう点でも、周りの雑音にまどわされず、
しっかりと、自分の書きたいことが書けているのではないか、
だから、ひとつひとつの役がとてもビビットで、
描き方にブレや揺れがないのではないか、という気がしました。

今回は、特にるり子が、負けず嫌いなところとか甘え上手なところとか、
少しずつ彫りが深くなって来て、とても興味深かった。


最初から異彩を放ってる文ちゃんもまた、どんどんキャラを深めていて、
柿崎に投げかける視線が本当に一途で、胸が痛くなるほど。

一方の柿崎も、萌と出逢ったことで、自分の中で揺らめくものがあって。
割り切って選んだはずの自分の生き方に、疑問を持ち始めていて。
特に<キッチュ>での柿崎の表情は、どれも、
自業自得ではあれ、誰にも甘えられない大人としての
「迷い」や「逃げ」との格闘が感じられて、見ごたえがありました。

リョウの、深い海に沈んだような色合いも好き。


キッチュ>で、この3人がそれぞれの憂鬱を抱えて、
ポツンポツンと話すところは、
ドラマ全体の流れとは別のところで、すごく惹かれたシーン。
まさか3人だけのシーンがあるとは思わなかったので、どきどきして、
息を詰めながら観てしまった。(笑)
期待に違わぬ緊張感・・・! 静かな青い火花がバチバチと・・・!(笑)
いや〜、この3人を観るだけでも、十分に価値がある、
とさえ思ってしまいました。(笑)


今週の柿崎祐介。
少しずつ、話し方を変えていますよね。
でも、まだまだ本音を晒してない、心からの「言葉」じゃない、
という気がします。
彼は、萌に対してさえ、まだ、上っ面だけで接しているんでしょうね。

その、どこか着地してない浮遊感、というのは、
夢のカリフォルニア』の中林にも感じたのだけれども、
あの時は、中林のことを「弱い」とは思いこそすれ
「ずるい」とは思わなかった。
私が、柿崎をずるいと感じるのは、本音を見せないことを含めて、
万事「大人」な対応をしているからなんだろう、と思う。

そういう柿崎は好きになれないけれど、
柿崎をそういうふうに演じている田辺さんの演技は、本当に好き。(笑)
大袈裟な動きを取れない分、
演じる側としては、難しいところもあるんだろうけど、
あいかわらずこの人は、実に繊細に、輪郭の中に感情を注入して来る。


それと、これはもう確信犯だと思ったのは、自分のパーツの使い方(笑)
ホテリアー』の緒方総支配人を演じていた時に、
「自分の見せ方」みたいなものが解かって来たんじゃないか、
と思ったのですが、
今回の柿崎のほうが、ずっと掘り下げて作っている感じがします。

髪型や色もそうだけれど、
表情や指の使い方など、完全に「どう見えるか」を
計算している気がする。(笑)
結婚指輪を緩めたり、顎に指をあてたり、眼の焦点が合わなかったり・・・
私はもう、そういう細かい「柿崎祐介の造形」(by田辺誠一
を観ることが出来るだけで、嬉しくて嬉しくてしょうがない。(笑)


来週もいろいろと田辺プレゼンツの美味しいシーンがありそうなので
楽しみにしたい、と思います。