『木更津キャッツアイ〜ワールドシリーズ』感想

木更津キャッツアイ〜ワールドシリーズ』感想
生きている人間たちの上に、時間は「普通」に流れて行く―――


前回の『日本シリーズ』が、すごくいろんな要素を入れ込みすぎて、
ドタバタになってしまったのに比べると、
今回は、きっちりと真っ向勝負で来たなぁ、という印象。


日本シリーズ』にしても、
真夜中の弥次さん喜多さん』や『熊沢パンキース03』(舞台)にしても、
むしろ、その、
ドタバタで跳躍力のある「いい加減さ」の中に溶け込ませた、
クドカン宮藤官九郎)独特の「死」の描き方・・・
恐怖や畏怖を 内に秘めた怒りみたいなものに転化させて、
どこかでパーンと破裂して、粉々になって、
で、その粉々になって四方八方に飛び散ったものを、
あえて集めたりまとめたりしない・・・みたいなところが、
逆に、私には、非常に興味深く感じられもしたのだけど。


今回の、あまりにも真っ当で美しい「ぶっさんの死」の描き方には、
そういう「はじけてそのまんま」という「収束させない収束の仕方」
を続けて来たクドカンが新たに見せた、
「死んだ人間」からの視点があるようで、それもまた興味深かった。


死んだ人間は歳を取らない―― 生きた人間たちは歳を取る――
それは当然のこと。あたりまえのこと。「普通」のこと・・・
そうして積み重ねられて来た3年という月日が、
ぶっさんを、彼を愛した多くの人たちの「思い出」という場所、
本来いるべき場所、に、連れて行ってくれることになる。


残された人間の「心残り」も、死んだ人間の「心残り」も、
「時間」という残酷で優しい流れの中に、いつかゆっくりと融けてゆく・・・「ぶっさんの死」が、
周囲の人たちの「思い出」という正しい場所に辿り着くまでに、
3年という月日が必要だった――というお話。


それにしても、やっぱりキャッツのメンバーは素敵だなぁ〜♪
ぶっさん(岡田准一)も、バンビ(櫻井翔)も、アニ(塚本高史)も、
マスター(佐藤隆太)も、うっちー(岡田義徳)も、
3年経って、大人になって、
ますますかっこよくなっていたのが嬉しかった。
演じている彼らの成長が役に反映されて、
役そのものに、さらに魅力的な色味を重ねているように感じられたことが、
とても嬉しかった。


小日向文世薬師丸ひろ子古田新太山口智充阿部サダヲ
ユンソナ・・といったお馴染みのメンバーに加え、
栗山千明橋本じゅん、MCU、高田純次、といった新顔の人たちが、
それぞれ非常に良い味を出していたのもまた、嬉しかったです。