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『風林火山』（第１７回）感想
いや〜、重かったですね〜。観ていて、苦しくなってしまった。
まぁ、長い大河の中には、こういう回があるのも仕方ないのでしょう。
「武田晴信の心に芽生えた闇」の部分を、
この段階で描かなければならない、
と脚本・大森寿美雄氏は、判断したのでしょうね。
国が大きくなればなるほど、
晴信（市川亀治郎）は、どんどん過酷な決断をしなければならなくなる。
そこに巻き込まれたさまざまな人の痛みを、
誰に預けるでなく、擦（なす）り付けるでなく、
すべて全部、自分が引き受けよう、と、
そのために、自分は人の心を捨て、鬼にでも何にでもなってやるのだ、と、
晴信が、ついに、そう決心したように感じられた今回。
まだ乳飲み子の寅王丸を戦にかり出し、
切腹させた諏訪頼重（小日向文世）の愛娘・由布姫（柴本幸）を
側室にする――
周囲の人々の眼が「冷酷」「残忍」という方向に固まって行けば行くほど、
晴信の、孤高の人間としての悲哀が、どんどん増して行く。
その闇は、おそらく、山本勘助（内野聖陽）でさえも埋められない。
それでも、彼もまた、自ら由布姫の怨みを買うことで、
晴信の悲哀に、無意識のうちに近づこうとしていたのかもしれないけれど。
晴信の闇に翻弄される人々・・・
特に、禰々（桜井幸子）の悲痛な姿には、
胸が締め付けられる思いがしました。
（桜井さん、失礼ながら、こんなに場を圧倒する空気を作れる人だと
思っていなかったので、本当に驚きました）
由布姫は、今のところはまだ、庇ってくれる人（勘助）がいるけれど、
この人もいずれ、晴信の闇に取り込まれてしまうことになるのでしょうか。
むしろ、彼女の強さとぶつかり合うことで、
晴信の苦しさがやわらげられるのではないか、という気もしますが、
そのあたり、勘助との絡みも含めて、今後を注目したいところです。
ヒサ（水川あさみ）と平蔵（佐藤隆太）も、
大きな意味では、武田（晴信）に翻弄されている、と言えるわけで。
あいかわらず一途な平蔵の姿に、ほろりとさせられました。
さて、小山田信有（田辺誠一）。
その立場や境遇から察するに、おそらく、この人が、武田家臣団の中で、
最も晴信の悲哀を身を持って感じられる人なのかもしれない。
だからこそ、寅王丸を戦の駒として使う、という
残酷な提案をすることも出来た、ということでしょうか。
けれども、おそらく、この人は、
晴信のように「本当の鬼」にはなりきれない。
なりきれないからこそ、晴信にどんどん惹かれて行くのだ、
そういう小山田だからこそ、田辺誠一が演じる意味がある、
という気がするのですが・・・ごめんなさい、
これは多分に、田辺ファンである私の妄想が入っているかもしれません。
