『風林火山』(第16回)感想

『風林火山』(第16回)感想
前回、晴信(市川亀治郎)に「悪鬼」と言われた勘助(内野聖陽)ですが、
人の心を封印したように思われた勘助が、
由布姫(柴本幸)に出逢ってミツ(貫地谷しほり)の面影を見た時、
姫を殺せなくなってしまった・・非情になりきれなくなってしまった・・
そこに、彼の、唯一の弱点がさらけ出された気がしました。

勘助が、今後、由布姫との関係において、
本物の鬼になりきれない部分を持ってしまうことで、
武田の前途にも、さまざまな影が忍び寄ることになるのですが、
もちろん、この時の勘助には、知るよしもなく。


姫を殺さなかった(殺せなかった)ことを知った晴信は、
たぶん「なぜだ、勘助!」という思いが強かったに違いない。
今まで、一心同体、と言っていいほど、
一寸の狂いもなく晴信の内心を読んだ作戦を立て、それを実行してきた、
その山本勘助が、初めて、晴信の予想しなかった行動を取った、
そのことに対する少なからぬ疑問が、
晴信にあったような気がしてなりません。
「勘助が殺しきれなかった姫」・・・
晴信には、この時点ですでに由布姫への興味が差し始めている、
という感じがしました。


高遠頼継(上杉祥三)に対しても、諏訪頼重小日向文世)に対しても、
悪鬼そのもののような非情な面を見せ始める晴信。
戦わずして負けた頼重が痛感した晴信の「小賢(こざか)しさ」は、
兵は詭道なり(戦は騙し合いである)」という孫子の兵法の
根本を突いた言葉でもあったような気がします。
正々堂々ときれいに戦うことで、多くの兵を失い田畑を荒らすか、
悪がしこく、ずるく、きたなく戦うことで、
それらの損失を最小限に食い止めるか――

人の心を封印した二人の小賢しい悪鬼が、
この先、何を見据えて戦って行くのか、
小賢しさの奥にあるもの、詭道の先にあるもの、が何なのか、
興味深いところでもあります。


さて、今週の小山田信有(田辺誠一)。
この人の、勘助への興味って、ただならぬものがありますよね。(笑)
「勘助、やるなぁ!」「勘助、すげぇ!」みたいな感嘆詞が、
クールなあの表情の下に、渦巻いてる感じがする。(笑)
勘助の話題になると、ついつい乗ってしまう信有が、かわいいでごいす。