『風林火山』(第21回/消えた姫)感想

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風林火山』(第21回/消えた姫)感想
いや〜、なんだか安易に文字にするのも
躊躇(ちゅうちょ)してしまうぐらい、
ものすごく密度が濃かったですね〜!
私としては、今まで21回観て来た中で、
間違いなくベスト3に入る内容でした。
大河ドラマで、ここまで深い愛の物語を見せられるとは!!


由布姫をこういう女性に描いた・・
彼女の晴信への複雑で激しい情念の籠った恋慕を、
こういう形で表現した・・
脚本の大森寿美男さんに、改めて脱帽、です。

他のドラマに出てくる「好きです」とか「愛しています」とかいう言葉が、
陳腐で安っぽく感じられる程でした。


由布姫は、線の細い最近の若手女優さんが演じるのは
とても難しいと思うのですが、
柴本幸さんは、まだ上手いとは言いがたいのだけれど、
芯にしっかりとした強さがあって、見事に嵌まっていた気がします。


それと、今回は、何と言っても山本勘助!〜内野聖陽!!
いやもう、私にしてみたら「やっと!」ですよ、
やっと内野さんの‘奥深さ’が感じられるシーンを観ることが出来たなぁ!
と、嬉しくて仕方ないです。


これはあくまで私個人の感覚なんだけれど、
内野さんって、表情とか動きとかでしっかり表現していて、
役の内側の感情、という部分は、
必要以上には上乗せして演じていない気がするんですよね。
でも、どのシーンも「間違いない演技」を観せてくれている中で、
ごくまれに、ほんの微(かす)かに「破綻」が入ることがある。
そういう時の内野さんは、本当に魅力的だ、と思うのです。
ごくまれ、で、ほんの微か、だからこそ。


それにしても、
由布姫と勘助、さらに、晴信(市川亀治郎)を含めた3人は、
何という深い深い情念の連鎖に繋がれてしまったのだろう!と、
改めて思う。

その確固たる連鎖に弾き飛ばされてしまった感のある
三条夫人(池脇千鶴)。
でも、この人も、だから由布姫を恨んだり憎んだりする、という、
単純な悪役の思考に走らないところが、また、いいと思う。


このドラマは、全般に、
あまり「言葉」に頼り過ぎないところがいいですよね。
脚本が書き過ぎていないし、演出も言葉だけの単純な表現を求めていない。
俳優の演技、という部分に委(ゆだ)ねられたものがちゃんとあって、
それを、演じ手がきっちりと掴んで演じている。
本来「芝居」(演劇)とは、そういうものだと思うのですが、
今のTVドラマは、全体的に、
そういう部分で満足を得ることが少ないのが寂しいです。


さて、今週お休みだった小山田信有(田辺誠一)ですが、
来週はしっかり出番がありそうですね。
内野さんとは逆に、
感情が揺らぐ様(さま)を、いつも、自然と演技に滲(にじ)ませてしまう田辺さん。
(いや、そこがまた好きなんだけど。笑)
今後、信有メインのシーンもあると思われるので、
そこで、脚本・演出が、この人をどう使おうとするのか、
それに田辺さんはどう応えるのか、
9月に放送される最期に向かって、どういう小山田信有像が
出来上がって行くのか、おおいに楽しみにしたいと思います。