『だめんず・うぉ〜か〜』(第8話=最終回)感想

だめんず・うぉ〜か〜』(第8話=最終回)感想
「まだ片想いなんですけどね」
このナツ(山田優)の一言が、私にとっては救いでした。
小山内さん(田辺誠一)が、
まりあ(藤原紀香)をあきらめてすぐナツを好きになっちゃうとしたら
いくらなんでも、そりゃあんまり都合良過ぎるだろう、
と思っていたのですが、
そうじゃない、小山内はちゃんとまりあのことが好きで、
でも、まりあが自分に親身になってくれるのは、
気の毒な人を放っておけないからで、
彼女が本当に好きなのはブルース(宮迫博之)だということが
解かったから身を引くんだ、
で、まりあをあきらめたからナツにあっさり気持ちが移ってしまう
わけではなくて、
ナツが自分のそばにいるようになっても、
まだ、彼女が好き、という気持ちにはなっていないんだろう、
(いい人だとは思っていても。
のちのち好きになるかもしれないとしても。)
ということが、伝わって来る一言だったので。


小山内だけじゃなくて、
今回は、ナツにしても、まりあにしても、ブルースにしても、
それから、友子(青木さやか)にしても、
虻川(島谷ひとみ)にしても、
それぞれに、ある程度の「心の決着」というか「落としどころ」に
おちついてくれたので、何だかホッとしました。
主人公であるまりあとブルースは別にして、
小山内とナツ、まして、友子や虻川の「その後」については、
最終回だけでは、どう頑張っても描き切れないだろう、
と思っていたところだったので、
一応、ではあれ、それぞれの「着地点」を見せてもらえて、
私としては嬉しかったです。
虻川なんて、最後はほんとかっこよかったですもん。(笑)


どうなんでしょう、このドラマ、
毎回いろんなだめんずをゲストで登場させる、なんてことをしないで、
最初から、主要4人をメインにして、そこに友子や虻川の恋を絡ませる、
という展開にしていったら、
もっとフォーカスが絞れて、面白かったんじゃないでしょうか。


それと、飛行場でのブルースの狂言を観た時ほど、
このドラマがコメディでよかった、ブルースが宮迫さんでよかった、
と思ったことはありませんでした。(笑)
たとえ三枚目コメディアン志向(笑)の田辺さんでも、
ああいう狂言を演じて欲しいとは思わないし、
田辺さんでなくても、あれを本当の俳優さんが演じてしまったら、
たぶん、まったく笑えないし許せないと思う。

笑いを取る芸人だからこそ許される、たちの悪い「冗談」。
笑いを取る芸人だからこそ、
その「冗談」の中に潜ませることが出来る真実――
ただアップを多用して切ない表情ばかりを見せようとするのではなく、
(正直、そういうのは、たとえば田辺さんみたいな俳優さんには
敵わない と思う。笑)
最初から、もっとそのあたりを膨らませてあげていたら、
お笑い芸人・宮迫博之として、ブルースを演じる意味があったと思うし、
彼自身、もっとずっと伸び伸びと演じられたのではないか、
という気がしました。


さて、小山内(を演じた田辺さん)。
いくら不器用でも、今どきあんなに何も出来ない人がいるんだろうか、
というツッコミはさておき。(笑)
いや〜、今回も、私としては、
バシッとストライクを受け取れたような気がします。
いかにもマンガチックな前半のシーンも、
小山内の表情や仕草に嘘を感じることがまったくなかったし、
後半の急展開も、小山内のおおらかさと打たれ強さに無理がなくて、
小山内が自(みずか)ら(ナツの手を借りてではあれ)
不幸の中から見出したものが、きっと真の幸せに繋がるのだろう、
と思うことが出来て、よかったです。


以前、私は、自分を納得させるために、
自分の許容範囲でない役は、
赤井豪(『スクールデイズ』で田辺さんが演じた俳優)
が演じていると思えばいい、というようなことを書いたことがありますが、
今回の小山内は、馴染めないところもいろいろあったにも関わらず、
どうしても、田辺誠一が演じている、と思いたい自分がいて、
それはどうしてなんだろう、と思ったら、
きっと、脚本や演出が作った輪郭や中身はどうであれ、
田辺さんが小山内静という人間を演じている姿に、
赤井豪という逃げ道を作らせない、
揺るぎないものがあったからなのかもしれない、と。


あっちへ行ったりこっちへ来たり、上がったり下がったり、
ずいぶんと振り回されたにも関わらず、
特に後半は、さらに最終回は、小山内の輪郭も、中身も、
演じている田辺さんの段階では、しっかりとピントが絞れて、
不器用さの中に潜む優しさ、弱さの中に潜む強さを、
まっすぐに見せてくれた。


まりあのところを出て行く、と、まりあに伝えるところは、
一瞬だけど、本当にそのまま襲ってもいいぐらいのムードがあって、
(もちろんそうはならないんだけど。
でも『きみはペット』の時よりときめいた私。笑)
ドキドキさせられて嬉しかったし、
その後の、まりあへの心に沁みる一言も、
ペット系俳優(笑)の面目躍如たるものがあって、
脚本や演出に好き勝手に役を上下動させられたとしても、
そこから大切な部分、必要な部分を拾い集めて、色をつけて、味をつけて、
自分の意志で、いろんな振り幅を確実に見せてくれるようになった
田辺さんに、何だか、また、やられてしまったなぁ、
という気持ちにさせられたのでした。