『ベルナのしっぽ』感想

ベルナのしっぽ』感想
最初のころに、隆一(田辺さん)のナレーションが入るのですが、
これがすごく良くてね〜〜。
あのかっこいいギルバルスの声にあんまりときめかないで、
普通の夫でありおとうさんである隆一の声にこんなにときめくって、
何なんだろう、とか思いながら、映画を観始めたわけですが。(笑)


いや〜、久々に、素直に感動しました。
どこにも派手なところはない、
どちらかと言ったら地味な作品なんだけれど、
変にドラマチックな作りにしなくて正解だったと思う。

病気やそれに伴うハンデ、どこまでも従順な犬、かわいくて健気な子供‥
ドラマとして泣かせる要素はふんだんにあるのに、
それを見せ場(泣かせどころ)として使っていないあたり、
TVドラマでこれでもかと泣かせようとするあざとさを感じることの
多い身としては、非常に共感が持てました。


ただ、迫力ある映像とか、画面いっぱいに広がる美しい風景とか、
そういう、大画面で観る意味のあるシーンがほとんどないこともあって、
映画というワクでは、物足りないと感じられたことも事実。
こういう、登場人物を日々の生活の中で淡々と追って行くような作品は、
むしろ、TVドラマとして制作したほうがしっくり来たのではないか、
とも思いました。


出演者たち―――
しずく/白石美帆さん。
ちょっと気の強いしずくを好演。
自然な時の流れを、メイクや衣装だけでなく、
演技としても変化をつけていたのが印象的でした。
おかあさん役はどうだろう、と思ったのですが、とても自然でした。


しずくの母/市毛良枝さん。
やさしすぎて、つい手を貸そうとしてしまう。
しずくに反発されるのですが、最後には、やはり支えとなってくれる。
普通なら、このあたりの役が、泣かせどころとして使われるのでしょうが、
あまりウエットにならず、押さえどころで出てくるだけなのが、
かえって良かった。


隆太/中村咲哉くん。
「おかあさん」というセリフがあまりにも自然でびっくり。
大きくなった隆太役の子も良かった。
いや〜最近の子役はみんな上手いわ〜。


隣人/根岸季衣さん、しずくの友人/坂谷由夏さん。
ふたりとも適役。 暗く、重くなりがちな物語を、明るく軽くしてくれた、
とても重要な役まわりだったように感じました。


隆一/田辺誠一さん。
私が泣けたのは、彼が、あまりに違和感なくおとうさんを演じていたから
ということもあったんですよね、実は。
(あまりに普通で地味なので、ファンの人たちの中には、
つまらないと思う人も多いのではないか、とも思うのですが。笑)
非常に控えめなんだけど、ものすごく安心感がある。
なんだか、しずくや隆太が、隆一という大きなトランポリンの上で、
ポンポン自由に飛び跳ねてる感じがしました。(笑)


今回、田辺さんが見せてくれた、裾野の広い大きさは、
私としては、役は違え、
最近たびたび感じられる空気感ではあったのですが、
特に、子供に対する「おとうさん」としての隆一を演じる田辺さんは、
誰よりも子供を愛する揺るぎない強い優しさを示してくれていた
ように思えて、なんだかものすごく嬉しかったです。

30代で、こんなに「おとうさん」が似合う俳優さんになるなんて、と、
ファンになって10年近く経って、
今、そんなふうに感じてる自分自身に感無量。(笑)

あ〜いやいや、私個人の感慨はともかく(笑)
こういう、子供にきちん向かう役を、もっと本格的に観てみたい、
と思いました。