里見八犬伝

2006・1・2.3放送(TBS系)
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。


夢:翔は、さっきから「面白かった」を連発してるよね。(笑) かなり嵌(は)まった?
翔:初見当時もすごく面白いと思ったんだけど、今回観直して、 改めて、何て良質なジュブナイルだったんだろう、と。
夢:ジュブナイル、というのは「少年少女向け」という意味だけど・・・
翔:作り手側としては、明確に「ジュブナイル」として作っていたわけではないと思うけど、出来上がった作品としては、「時代劇」というより「ジュブナイル」と言った方がしっくり来るような気がしたので。
夢:たとえば普通のドラマ(時代劇)と どう違うの?
翔:私もはっきり区別がつけられるわけじゃないけど、全体的に分かりやすいし、「善」と「悪」の区別が、はっきりしているし・・・
夢:「勧善懲悪」ってこと?
翔:そう。 それと、「冒険活劇」みたいな、動きや展開の早さ、もあると思う。
夢:ああ、うんうん。
翔:あとは、「友情」。そして「夢と希望」。 未来に向けて、何かしらの明るい展望が持てるような結末になっている、とか。
夢:そうかぁ・・・
翔:昔はそういうドラマをけっこうやっていた、NHKの午後6時台とかに。(笑)
夢:うわ、ずいぶん昔だ・・・(笑)
翔:でも、今は本当に少なくなってしまった。 今回、このドラマを観ていて、大人はもちろん、子供にもしっかり観てもらいたい、だからこそ質の高いものを作る――そういう情熱というか、作る側の真剣さが伝わって来たような気がして、それが何だかすごく嬉しかった。
夢:うん。
翔:たとえば、壮大な草原を馬で疾駆する主人公たちとか、合戦の場面とか、NHKの大河ドラマと同じくらい気合が入っていた気がしたし、脚本・演出はもちろん、美術や音楽等スタッフの力の入れようというのが、画面からすごく伝わって来た。 何か新しいことをしてやろう、という前向きな姿勢、と言えばいいか。
夢:うん。
翔:そういうところで十分に満足する、ということが、このところTVドラマではあまりなかったので、嬉しかった、ということなんだけど。 ――そういう「本物」をこそ、ドラマ離れの加速する子供たちに観てもらいたい、という想いが、私個人としては強いので。
夢:なるほど。
翔:ただ、ジュブナイルが持つ明快な単純さ、みたいなものが、重厚な時代劇好きの視聴者には、物足りなく思われたかもしれない。 何となく、大きな活字の少年少女小説を読んでいるような感覚があったのも事実だから。
夢:大きな活字の小説、か。
翔:これが、すごく細かい活字の、難しい漢字が使ってある小説だったらどうだったんだろう、という興味もなくはないんだけど・・・たとえば去年の大河ドラマ風林火山』みたいに。(笑) でも、『八犬伝』なら、やはり「ジュブナイル」であることの方が正しい気がするので。
夢:あえて難しく重厚にしない、分かりやすくていいんだ、ということね。
翔:・・・・と、私は思うんだけどね。
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夢:さて、田辺さんだけど。 網干左母二郎という役は、本当に小悪党で。(笑)
翔:TVドラマでは ずっと「いい人系」の役が続いていたので、『アウトリミット』とか このドラマとか、久々に「色」のついた役を観られて楽しかった。
夢:あたしは正直ちょっと物足りなかったけどな。 もうちょっと信乃(滝沢秀明)と浜路(綾瀬はるか)の間に入って邪魔して欲しかった。(笑)
翔:確かに、田辺ファンとしては、そういう想いは少なからずあるけどね。 田辺さんなら、浜路への横恋慕にしても、信乃への嫉妬とかライバル心みたいなものにしても、もうちょっと深く、あるいは多彩に、網干の気持ちを描けたんじゃないか、という気もするから。 
夢:このドラマに対して「ジュブナイル」という観方をしたとしても、全体的に掘り下げ方が足りないんじゃないか、という気がしてしまったんだよね、あたしは・・・
翔:まぁ、そこまで掘り下げてしまうと、ジュブナイルの明快さに反するかもしれないから。
・・・私としては、田辺さんばかりじゃない、一緒に出ていた泉ピン子さんにしても、小日向文世さんにしても、小悪党、という色づけが本当にはっきりしていて、逆に気持ちがいいくらいだったので、田辺さんも同じような役作りで良かったんだ、と思っているけど。
夢:・・・・・・・・
翔:これだけ大きな物語の序盤を担(にな)わせてもらって、派手に死んで行った、ということに関しては、素直に光栄だったとも思うので。(笑)
夢:・・・・ん~・・そうかぁ・・・
翔:まぁ、もうちょっと「色」が強く出ていてもよかったかな、という気はするけどね。 田辺さん本来の優しさとか、線の細さとか、人の良さ、みたいなものが、滲(にじ)み出てしまっているところも多少あったので。
夢:やっぱり辛口。(笑)
翔:いやいや、辛口と言うばかりじゃなくて(笑)・・・だからこそ、浜路を抱きしめるシーンなどは、とてもいい雰囲気が出ていたようにも思うんだけれども。
夢:うん。
翔:とにかくこのドラマは「八犬士」の魅力を存分に味わってもらうことが第一。 大河ドラマのように それこそ1年ぐらい時間があれば、そのあたりまで詳しく描けただろうけど、5時間という制限の中では、ワキを複雑にしてしまうと、八犬士の魅力を十分に浮き立たせることが出来ない恐れがある。 たとえば菅野美穂さんとか、武田鉄矢さんとか、仲間由紀恵さんとか、重要な役を与えられた人たちでさえ、単純明快な性格付けが なされていたと思うし。
夢:ああ、そうか。
翔:そんな中、渡部篤郎さん演じる ゝ大法師(ちゅだいほうし)が、伏姫(仲間)への愛と献身というオイシイところを的確に演じていたのが印象に残った。 久しぶりに渡部さんらしい繊細さに出会えた、というか。 あとは、船虫を演じたともさかりえさんの はかなさ、みたいなものも印象に残った。
夢:八犬士については?
翔:初見の時に詳しく書いた(BBSpickup参照)けど、皆本当に魅力的だった。 中でも、今回観て改めて興味を持ったのは、勝地涼くんと佐藤隆太くん。 勝地くんはこのところクドカン宮藤官九郎)に重用されているし、隆太くんは念願の『ROOKIES』で川藤先生を魅力的に演じていて、だから余計に気になったのかもしれないけど。 このふたりの今後、というのも、注目して行きたい、という気がした。
夢:田辺さんともども?(笑)
翔:いやいや、田辺さんはまったく別格ですけど。(笑)