『明日の記憶』感想:3

明日の記憶』感想:3
さて、田辺誠一さん。
いつものことだけれど、
田辺さんが出ていなければ、おそらくこの映画を観ることは
なかっただろう、と思うと、
今回も、田辺さんに感謝したい気持ちでいっぱいです。
そして、この映画に出演している田辺さんを見ることが出来て、
ほんとに嬉しかったです。
‥‥あぁ‥すみません、
ミーハー少女のファンレターみたいになってます。(爆)


閑話休題―――――さて、田辺さん。(笑)
田辺さんが演じた園田という男は、
プレゼン以外はほとんど言葉を発していないんですよね。
非常に寡黙で、しょっちゅう佐伯に怒られてる様子を見ると、
たとえば袴田吉彦さん演ずる安藤あたりのほうが、
佐伯との距離もずっと近くて、
園田よりもずっとチャッチャと要領良く仕事がこなせそうな気がする。
だけど、そういうちょっと物足りないところのある園田を選んだのは
佐伯で、
じゃあ佐伯は、園田のどういうところを気に入ったんだろう、と思った時、
きっと、真面目なところ、実直なところ、
やれ、と言われたことに真剣に取り組むところ、
おべっかの使えない不器用なところ、
そして、何があってもまず第一に仕事のことをを考えるであろうところ、
あたりなんだろうな、と、そんなふうに思える風情というか雰囲気が、
園田にはあるような気がしました。

後でプログラムを見たら「野心家」と書いてあって、
でも、映画の中の園田は、まったくそういう感じがしなくて、
そういうところがまた、何だか、田辺さんらしいなぁ、と。(笑)


佐伯の異状にはみんな気づいていたのだけど、
その原因を一番最初に調べようとしたのは園田で、
勝手に佐伯の薬を調べる、という卑怯な手を使い、
しかも上司に告ったために、仲間に糾弾されることになったけど、
最初に園田が突き動かされた「どうしてなんだ!?」という思いは、
それを知ることで佐伯の弱みを握ろうとか、陥(おとしい)れようとか、
そういう類(たぐい)のものではなくて、
純粋に「仕事」の心配をして、のことだったように思えました。


この、仲間からの糾弾の時も、最後に佐伯に声を掛けられた時も、
園田の表情からは、園田の気持ちというのがまったく見えて来なくて、
でも、一言も言葉を発しない中に、
言いたいことをうまく言葉に出来ない園田が、
グッと何かを堪(こら)えてる様子が伝わっても来て、
私には、乏(とぼ)しい表情(表情に大きな変化をつけない)であったがゆえに
かえって、園田という人間が理解出来るような気がしました。


最後に園田に声を掛けた時、
佐伯は、園田という男に失望していただろうか、と考えたのですが、
きっとそんなことはなくて、
なんだか逆に、本当はおまえには力があるんだぞ!
これからの営業二部は、お前が引っ張らなきゃいけないんだぞ!
と励まされてるような、そんな気さえしてしまったのですが、
それは、私が園田(=田辺)贔屓(びいき)なせいでしょうか。(笑)


佐伯が会社を去る時、
ガラス越しに深々と頭を下げる園田。
ああ、たぶん、こんなふうに、
膝にぶつかるぐらい深く深く頭を下げる園田だから、
佐伯は彼を買ってくれてたんだろうな、と、そんなこともふと思いました。


前回の映画出演作である『イン・ザ・プール』の大森を観た時、
俳優・田辺の目指したところに思いを馳せて、
ひとりでウルウルしてたのですが、
今回の園田の演じ方は、さらに先に進んだ、という感じがしました。
基本的に「何かをやりたい」俳優さんなんだろうけれど、
今回は、大森の時以上に「何もやってな」くて、
何もやらないところで勝負して、何もやらなくてもちゃんと伝わってて、
そういう、余分なものをどんどん削ぎ落として、
灰汁(あく)みたいなものが抜けて、観てる人の心にツルンと入り込める、
そういう俳優さんになったんだなぁ‥なっちゃったんだなぁ‥と、
大森で感無量になった部分を、改めてリピートしてる感覚がありました。
多彩な表情を持つ人だから、
出す気なら、いろいろ出せたと思うのですが、
今回、たぶん「あえて」そういう作り方をしなかったというあたり、
私としては、とても興味深かったです。


しかし‥‥
このあと、7月には、よりにもよって(笑)
園田と真逆の、あの「鴻ノ池先生」(スクールデイズ)を観るんだと思うと
ちょっと腰が引けてしまいますね〜〜。(爆)
七三分けでジャージ姿の田辺に会わなきゃいけないのかぁ〜‥と。(笑)
せっかく園田で味わった深い余韻を、
ぶち壊されそうでコワイなぁ〜。(笑)
でも、ま、それが田辺ファンの醍醐味でもあるわけですが。 (笑)