はみだし俳優の使い方

 田辺誠一さんみたいに、
役のワクの中にすっぽり収まらないタイプの俳優さん(笑)
を観続けてると、
演出は本当はどう思ってるのか、というのが、すごく気になります。
だから、「男優倶楽部」で、監督さんたちが田辺さんをどう見てるか、
を知ることが出来たのは、とても嬉しかったんですが。

 

さて、演出家が、
設定した役からはみ出しちゃってる俳優をどう見てるのか、ですが。
もし、その演技が、演出(監督)の意図するものと違っていたら、
もう一度やり直しを命じればいいんですよね。
それが出来るのが、演出(監督)という立場なんだから。
だけど、それをやらないまま、
はみ出してる演技を本番に使ったのだとしたら、
それはもう、演出としてOKを出した、ということなんだと思うんです。
そして、演出がそういう形でOKを出す、というのは、
演出が想像していた以上のものを俳優が見せてくれた場合、しかない。
うまい言葉が見つからないんだけど、
それって、俳優が演出に勝った、ということだと思うんですよ。
しかし、そういう演技を採用して、
なおかつ作品として「過不足ない」ものに見せて行く、
そこに演出の手腕、というものがある、とも言えるわけで、
それが出来てようやく、
演出が俳優と引き分けられる、ということなんだと思うのです。
俳優と演出との、そういう切磋琢磨、丁丁発止が、
作品をより高いものに練り上げて行く原動力になるのではないか、とも。

 

ドラマって生き物みたいで、怖いなあ――
でも、だからこそ面白い、とも思えますが。
そういう中で生きてる俳優さんたち、
生き残るには、かなりの根性がないとダメなのかもしれませんね。