『荒神〜AraJinn〜』感想:7

型、に嵌っているんだけど染まりきってはいない田辺さんだったような――
ああ、そうですね、確かに。(笑)
田辺誠一さんって、基本的には、
そういう人(染まれる人)ではない気がしますし。
でも、私としては、今回、
最後まで「田辺さんの実体」を掴むことが出来ないままだった気がするので
私の中では、染まった感があったのかもしれません。(笑)

いのうえさんは、『ガラスの仮面』の時の田辺さんを称して、
「異物感」とおっしゃってたけど、(なんちゅう言い方や。笑)
でも、たぶんそれって、作り手として観てる人も、観客として観てる人も、
多かれ少なかれ感じていたものだと思うんです、
速水だけじゃなくて、田辺さんが演じる全ての役で。

けれども、今回の風左衛門は、
田辺さんの欠点でもあり大きな魅力でもあるそのあたりを、
スッパリと切り捨ててる、というか、覆い尽くしてる感じがして。
うーん、いや、
切り捨ててると思えるほど完璧に覆い尽くしてる、という方が近いかな。
(切り捨てて欲しくない、というワタシの願望、ありあり。笑)

その、良くも悪くも「田辺らしい」ところを、
田辺さん自身が確信犯的に覆ったのか、
いのうえさんのお導き(笑)によるものか、判断はつかないけれど、
とにかく、ああいう形になって舞台の上に出て来た、
あの風左衛門+アルゴールになった、というのが、
これから、長く長く俳優(特に舞台俳優)をやって行く上で、
ものすごい財産になるのではないか、という気が、私はするんですけどね