トップランナー(MC総括)(talk)

2001・4・12-3・23放送(NHK総合)
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。
 

  夢:来てしまいましたねぇ、『トップランナー・MC編』・・・
  翔:そんな哀しげな顔しないで。(苦笑)
  夢:でも、翔は、最初、田辺さんが『トップランナー』のMC(司会進行役)をやる、と聞いた時、かなり期待してたんだよね?
  翔:田辺さんは、人のことをあれこれ知りたがって、いろいろなことを訊く、みたいなこと、苦手なんじゃないのかな、と思っていて、その田辺さんが、MCをやると知って、そういう自分からステップアップしたくて引き受けたのかな、と、そんなふうに思ったものだから。
  夢:田辺さんに、目的意識みたいなものがあった、と?
  翔:そう思った。でも・・・
  夢:決していい評価を貰えたわけじゃないよね。
  翔:相手のことを知ろうとすれば、まず、こちらが裸にならなければならない、その辺の思いっきりの良さ、みたいなものが、最後まで出て来なかったように思う。
  夢:どうしてだろうね、俳優としては、あんなに自分を晒(さら)そうとしてる人なのに・・・
  翔:どこまで突っ込んで訊いたらいいのか、とか、いろんなことを考え過ぎるのかもしれない。 相手のことを考え過ぎて、かえって身動きが取れない、みたいな。
  夢:そんなムズカシイ言葉使わなくてもいいだろ、とも思ったりしたけど。(笑) でも、どうしてそうなっちゃうんだろ?
  翔:相手の懐(ふところ)に飛び込んで、相手の心を覗(のぞ)き込んで、相手が不快にならない程度に掘り出して・・・という作業を、何のわだかまりもなくすんなり出来る人と、そうでない人がいるんじゃないかと思う。
  夢:・・・・・・・・
  翔:自分がどう、と言うことよりも、まず、他人(ひと)への興味がないといけない。 でもそれは、その人がやったこと、作品、業績、に対する興味だけじゃダメなんだよね、きっと。 何よりもまず、向かい合った人に対して、「人間」としての興味を持たないと。
  夢:・・・・うーん。
翔:それと、田辺さんの場合、作品を作る人でもあるわけだから、他のMCには見つけられない何か、他のMCだったら流してしまうような何か、を、相手から探り出す、そんなことも可能だったんじゃないか、と思うんだけど。
  夢:そこまで行かなかったよね。 最後まで、台本に書いてあることを言葉にするのが精一杯、という感じだったもの。 途中、よくなってきた、と思ったら、最終回で、またドーンと落されて。
  翔:・・・田辺さん自身、その辺を壊せたら、すごい進化だと思うんだけど・・・・
  夢:そうだね。 ――まぁ、その中でも、いくつか心に残ったものはあって。
  翔:はい。 
  夢:翔もあたしも、一番に挙げるとすれば、やっぱり・・・
  翔:窪塚洋介くん、ですね。
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  夢:休止してた≪翔夢BBS≫を、7ヶ月ぶりに開ける決心をさせた、という、伝説の・・・(笑)
  翔:伝説、って・・・(笑) ・・・まぁ、他に、田辺さんがTVドラマ2本に出演していた、という理由もあったんだけど。
  でも、「何かあるに違いない」と期待して、結局、期待以上、というか、ものすごく大きなものをガツーンと受け取った、と、ヒシヒシと感じたから。 やはり間違っていなかった、と、すごく嬉しかった。
  夢:田辺さんと窪塚くんと並んでるだけで・・・
  翔:・・・無性に嬉しかった・・です。(笑)
  夢:うんうん。(笑) ちょうど『GO』(注・行定勲監督、2001年度日本アカデミー賞受賞作品)が完成した頃で、映画のCMみたいだった、と感じた人も多かったみたいだけど。
  翔:でも、それより何より、まず、彼の俳優としてのスタンスみたいなものが、すごく興味深かったから。 どう言ったらいいか・・・・とにかく、ものすごく揺さぶられるものがあった。
  夢:うん。
  翔:田辺さんの中で、「自分にとっての俳優という仕事」 ってどれだけのものか、『ハッシュ!』という作品があったとは言え、少なくとも、この時点ではまだ、決定的なものを掴んでいなかったように思える。・・・もちろん、私見だけど。
  夢:うん。
  翔:でも、窪塚くんの話を聞いていて、「俳優」というものに「自分のすべて(強い部分も弱い部分も)」を乗せていいのだ、乗せる価値のあるものなのだ、ということを、再認識した、というか、窪塚洋介が「俳優」をすることによって得た圧倒的なエネルギーの力で、俳優・田辺誠一が、ある意味、完全にねじ伏せられた、と言ったらいいか。
  夢:うーん・・・・
  翔:それで、田辺さんが「俺はあいつには敵(かな)わねぇ」と思ってしまったら、それで終わりだったと思うけど、観ているうちに、田辺さんの中に燃え上がって来るもの、というか、窪塚くんとは違うエネルギー、というか、そういうものが湧いて来てる、という感じがした。
  夢:田辺さんの眼・・・・
  翔:そう、あの眼。 「こんなヤツが、自分と同じフィールドにいた!」っていう「喜び」みたいなものが、ひしひしと感じられて・・・・
  夢:あ!だから『月下の棋士』だったんだ!
  翔:そう。 あの時、ふたりを観て、唐突に『月下の棋士』の氷室と滝川を思い出したのは、きっとそのせいだったのかもしれない。 あの時は、どうして氷室と滝川なのか、自分でも解からなかったんだけど。(笑)
  夢:今(2002年)、窪塚くんはあいかわらずいいペースで仕事してるよね。
  翔:自分のペースに相手を巻き込んで、うねりを起こして・・・・でも、彼自身は、「窪塚洋介」という、今や完全にブランド化し、価値あるものになった名前を、自分から突き崩し、ぶち壊し、アメーバのように変化し、変化しつつ自分らしさを失わず・・・・・
  たとえばこれがキムタクだったら、自分でいくらそうしたいと思っても、いろんなしがらみがあって出来なかったりする。 だけど、窪塚くんは、まだ、そういうものさえないうちに、自分が動きたいように動く、ということを、周りに認めさせてしまっている・・・・すごい人だと思う。
  夢:そういう窪塚くんを横目で見つつ、我等が田辺さんも、俳優として、着実に前に進んでる気がするんだけど。
  翔:そうだね。 ・・・・これは、この「トップランナー」を観た時から私の夢になったんだけど、いつか、いつの日か、窪塚洋介vs田辺誠一を、出来れば映画で観てみたい、と。
  夢:うん!
  翔:この言い方は語弊(ごへい)があるかもしれないけど、まだ、今の田辺さんじゃ窪塚くんに負けてしまっている。 でもいつか、窪塚くんとは違った形で、「俳優」というものを「天職」に近いところまで突き詰めた「田辺誠一」という俳優が生まれる・・・その素地に近いものを、私たちは今、観せられ始めている・・・そんな気がする。
  夢:うーん・・・・なんか、改めて武者ぶるい・・・・・
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  夢:「トップランナー」って、田辺さんのM Cはさて置いて・・・・あ、ごめん・・・・(笑)
  翔:(苦笑)
  夢:でも、他にもたくさん興味深い人たちが出演していたよね。
  翔:そうだね。 明和電機は、初回だったし、こういう人がいるというのを初めて知ったので、びっくりした。 2回めは三池崇史監督で、『BLUES HARP』(田辺さん出演の映画)の裏話も出て楽しかったし、伊勢谷友介くんも才能いっぱい持っているすごい人で、でも、必ずしも「俳優」にこだわってないので、逆に物足りなさもあったり・・・・
  夢:ああ・・・なるほど。
  翔:ゴスペラーズも前から知ってたけど、改めてアカペラの楽しさを感じたし、岩井俊二監督の作品の作り方、ラーメンズの片桐さんの居心地の悪そうな感じ、スガシカオさんとはなさんのかけあい、矢井田瞳さんの天真爛漫な明るさ、三味線の木下伸市さんの突き詰めた一途さ、尾上辰之助さんの伝統背負って立ってるりりしさ、とか。
  夢:翔は、城之内ミサさんの回も面白かった、と言ってなかった?
  翔:面白い、というより、見たり感じたりして来たものが、私にも共通している、というか、年代的なものもあるんだろうけど、音楽を聴いていて、なんとなく共感出来た部分があって・・・・
  夢:ふ~ん・・・・
  翔:田辺さんのM Cも自然だったしね。 あと、富野由悠季さんの「ガンダム」に対する気持ち、というのが、あんなにストレートに語られると思ってなかったので、びっくりした。
  夢:そうかぁ、そうしてみると、結構刺激を受けたものはたくさんあったんだ。
  翔:そうだね。 他にも、松たか子さん、宮藤官九郎さん、哀川翔さん、是枝裕和さん、テルミンという楽器奏者の竹内正実さん、鬼束ちひろさん、藤木直人さん、高橋尚子さん、そして京極夏彦さん・・・・確かに田辺さんのMCは拙(つたな)かった部分もあったけど、少なくとも、彼がMCをしたことで、この番組を続けて観るようになり、そのおかげで、普段なら素通りしてしまうようなさまざまな人たちを知り得たことは、私にとって、ものすごい収穫だった、と、そんなふうに思う。
  夢:うん。
  翔:そして、たぶん、それは、直接出会った田辺さんやはなさんの方が、何倍も何十倍も大きなものだったはずで。
  その中でも、窪塚洋介という俳優が、田辺誠一という俳優の上に降り注いだものは、すごく大切な、重要なものだった、と、少なくとも私には、そんなふうに見えました。