四月物語(talk)

1998・3・14公開
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。
 

  夢:短いよね、本編は1時間ぐらい?
  翔:そう。 それにしても、何なんだろう、このほわ~んとした空気は。 これが、名にし負う岩井俊二監督」独特のムードなのかなあ、すごく心地良くて・・・・
  夢:やさしくて、温かくて、いかにも「四月」って感じ?
  翔:そうだね。――好きな先輩と 同じ大学に行きたくて、一生懸命 勉強して、合格して、先輩のアルバイト先に行って、先輩と再会して、自分の事を 思い出してもらえて、傘を借りて・・・って、本当に 特別な事件が起きるわけでもない、なんてことない話、「ただそれだけの物語」なんだけど、見終わって、ふんわり、温かな気分に させられるのは、やはり、監督の手腕なのかなぁ。
  夢:あと、松たか子さんの持ってる雰囲気も、よく出てたように思ったけど。
  翔:彼女の魅力は、最大限生かされてたよね。 彼女がいなかったら、この映画は、成り立たなかった、って言ってもいいぐらい。
  夢:田辺さんは、どうだった? あたしは、もうちょっと出番があってもよかったのに、と、少し残念にも思ったけど。
  翔:確かに、もう少し出て欲しかったのは山々だけど、私は、この「山崎先輩」を演(や)ってる田辺さんが好きだった。
  あの卯月を、「一緒の大学へ行きたい」と想わせるほどの相手、って、いったいどんな人なのか、すごく興味を抱かせておいて、出てきたのは、「本屋さんでまじめにバイトしてる山崎先輩」。 いかにも、って感じがした。 コンビニでも、居酒屋でも、ましてホストクラブなんてもんじゃない・・・・
  夢:武蔵野の本屋さん!(笑)
  翔:そういう役を、田辺さんが演(や)る、というのが、なんだかうれしかった。 「普通」なんだけど、一枚フィルターが掛かってるような「普通」。 あくまでも、映画の中、ドラマとしての「ナチュラル」。
  たぶん、私が、この山崎先輩や『ベル・エポック』の石橋を、『ノボセモン』の井野一伴より好きなのは、そのせいだと思う。
  夢:うーん、分かったような、分からないような・・・・(笑)
  翔:私もうまく言えないけど・・・・(笑) とりあえず、作品によって、監督によって、撮る人によって、こんなふうに、俳優も変わるのだ、とは言えると思う。
  夢:山崎先輩は、大学2年生ですからね。1年前は高校生! それが ちっとも不自然じゃないんだから。 髪長くても、「普通」の役 出来るじゃない、田辺さん。(笑)
  翔:(笑)
★    ★    ★
  翔:この映画の雰囲気をどこかで味わったことがある、と、ずーっと考えていたんだけど、『宝島』か何かの映画評で、「『四月物語』は‘少女マンガ’のような映画だ」 と言っていた人がいて、ああそうか、と納得した。 確かに、昔の‘ほんわか系’の少女マンガそのもの、って 気がする。
  夢:そう言えば、主人公の名前も、「楡野卯月」(にれの うづき)って、まるっきり 少女マンガ してるよね。(笑)
  翔:それって、岩井監督の好み なのかなあ。他の作品も、そんな感じなのか、観ていないからなんとも言えないけど・・・・
  夢:とすると、田辺さんは、「少女マンガ」に登場する「憧れの先輩」ってやつ?
  翔:でも、今じゃ、このタイプの「先輩」は、流行(はや)らないかもしれないけどね。(笑) いい意味で、「一昔(ひとむかし)前」のお話、という事なのかな。
  夢:でも、いつの時代の話であっても、いろんな先輩がいていいと思うし、いろんな憧れの形があっていい、と思うけど。
  翔:そうだね。 たぶん監督も、「いまどき、こんな片想いがあるか」って言われるのを覚悟の上で作ったんだと思うし、逆に、今だから、こんなピュアな恋があってもいいじゃないか、と考えて作った、とも言えるかもしれない。
★    ★    ★
  夢:田辺さん、髪 長かったね。
  翔:でも、山崎先輩の髪は、やっぱり ちょっと長めが正解だよな、と思った。
  夢:「短髪好き」の翔としては 珍しく・・・・?
  翔: あれで片山(@MINDGAME)ぐらい髪が短かったら、あんまり 真面目すぎるじゃない? 山崎先輩も、旭川から出てきて1年余り、すこ~し 遊び心が芽生えて来たかな、いや、高校時代 バンドやってたぐらいだから、長髪にしたいのも 当たり前かも、まてよ、単に 面倒くさがりや なのかもしれない・・・・なんて、髪の長さひとつで、どんどん 空想をふくらませる事が出来るというのも、こんな良質の映画ならでは、という気がした。(笑)
  夢:確かに、一人暮しを始めた 卯月のとまどいなんかも、ひとつのセリフや行動から、「きっと こういう感じなんだろうな」って、想像しやすかったり、「ああ 分かる分かる」って、納得させられる部分も たくさんあったよね。
  翔:このあと、卯月は、どんな学生生活を送るのか、とか、山崎先輩とは どうなってしまうのか、とか、想像・空想 目一杯働かせると、『十月物語』とか『三月物語』とか、続編が どんどん作れそうだよね。 でも、さすがに、今の田辺さんには、大学生役は無理だとは思うけど。(笑)
★    ★    ★
  夢:「私の一番」だけど。
  翔:本を探したり、卯月に頼まれて、高い所にある本を取ってあげたり、とにかく、「仕事をしている時の山崎先輩」って言ったら、出演シーン全部になってしまう?(笑) あと、あの本屋さんの雰囲気がすごく良かった。
  夢:あたしは、やっぱり 卯月に 傘 貸してあげたところ。一生懸命 傘見つけてあげてる山崎先輩って、いい人だなぁ、と。(笑)
  翔:あのシーンって、田辺さんも すごく自然で、改めて、彼の良さを発見したような気分になったよね。(笑)