MIND GAME(talk)

1998・4・4公開
★このトークは、あくまで、翔と夢の主観・私見によるものです。

 
  翔:俳優でもある田口浩正さんの第1回監督作品。 夢、好きなんだよね、この映画。
  夢:これはもう、「いい男大好き」なあたし好みの世界。 田辺さんと柏原崇くんが並んで立ってるだけで、目の保養になりました。(笑)
  翔:セラピストの片山一樹(田辺誠一)と、その恋人の三鈴かおり(鈴木保奈美)が、M・P・D(多重人格性障害)の田所純(柏原崇)と関わる事によって、自分の中にあるトラウマと 向き合わなければならなくなる、という話だったけど、う~ん、難(むずか)しかった。
  夢:おっ、めずらしく弱音吐いてるね。
  翔:とっつきにくい世界だから。 でも、柏原くんの多重人格者というのは、よかったよ。 5人の人格を演じ分けるって、すごく大変だったと思うけど、あんまり気負わないで演(や)っていて。
  夢:カメラの前で、これだけコロコロ人を変えて演じるって、すごいよね。
  翔:3人ぐらいは分かるんだけど、5人区別をつけるとなると難しい。
  一方、田辺さんは、セラピストという事で、あまり感情を表に出さない。 重要な役だけど、語り部(かたりべ)的な部分もあって、自分から 何かを主張するわけではない。 田所によって、どんどん裸の自分を さらけ出さざるをえなくなるんだけど、ものすごい変化が訪れる訳ではなくて、胸にチクンと針が刺さる感じ?
  夢:少しずつ、少しずつ、変わらされて行く、みたいな。
  翔:全体的に 淡々と物語が進んで行くよね。 これって、もっと怖い話にも、もっと泣ける話にも なったんじゃないかと思うんだけど、少しの起伏はあるけど、ほんとにただ淡々とラストに向かって行く。 逆に、その穏やかさを、田口監督は狙ったのか、という気もする。
  夢:今回、田辺さんは、主役のひとりということで、出番もすごく多くて、楽しませてもらったんだけど、翔は?
  翔:田辺さんを たくさん観られる、っていうのは、やはり、嬉しかった。 どのシーンも、すごくきれいだったし、夢、このくらい短い髪の彼もまた良いな、と思わなかった?
  夢:うん、何か新鮮な感じがしたね。
  翔:「片山一樹」という役については、患者への接し方が ソフトで細やかなところとか、感情を共有してしまうほど 患者にのめり込んでしまうところなどは、田辺さんに ピッタリだと思った。 だけど、いかにも「田辺誠一のイメージ」そのままで、この映画でしか見られない 彼の新しい一面を観る事は 出来なかったかな、と。 欲を言えば きりがないんだけど。 
夢:うん。
翔:ただ・・・・
  夢:ただ?
  翔:夢、この映画が好きなのは、田辺さんと 柏原くんの 絡(から)みがあったからだ、と言ってたよね。
  夢:うん。 ただふたりが並んで座ってるだけでも、うわ~って思ったけど、暴れる柏原くんを、田辺さんが 必死で抱きしめて なだめさせるシーンあったでしょ? もう、あれを観られただけで、この映画見た甲斐があった、って思った。(笑)
  翔:私は、田所(柏原)が持ってる「毒」・・・と言ったら語弊(ごへい)があるかな・・・すごく危険な部分に対して、片山(田辺)が全部を支え切れてない、そのために、田所に振り回されてしまってる、というあたりがおもしろかったな、と。 
  田所が、片山の耳元で、「私は、三鈴かおりを・・抱きました」って、片山の反応を確かめるように ささやくところ、とか。    
  夢:そうそう、 柏原くんが、すごく挑戦的な眼をしてて、田辺さんが 思わず彼に掴みかかって行くんだけど・・・一番痛いところを突いてくる、と思った。
  翔:他にも、部分的に、魅力的なシーンがあって。 それがなかったら、映画の内容からして しんどいテーマだったから、辛(つら)すぎて、映画が終わるのが長く感じられたかもしれない。
  夢:うん。
  翔:ふたりが一緒にいても、全然 いやらしさがなかったし。
  夢:セラピストと患者、という役柄のせい?
  翔:それもあるかもしれないけど、田辺さんが持ってる「硬質」のイメージ(『ガラスの仮面完結編』参照)が、そう見せてるのかな、とも思う。
  夢:柏原くんは?
  翔:たとえば、柏原くんは、相手役によっては、すごく いやらしくもなっちゃう気がする、悪い意味じゃなく いい意味で。 だけど、田辺さんは、相手が誰でも、あんまり いやらしくはならないんじゃないか、と。
  夢:ふ~ん・・・・
  ★    ★    ★
  夢:それにしても、田辺さん、白衣着た役多いよね。 あと、トラウマ持ってる役も。
  翔:白衣着ていても、診察室で診(み)る、と言うんじゃない、決まって大学の・・・
  夢:研究室! 何でだろう?
  翔:何でだろうね? 「他の事には脇目(わきめ)も振らず、ひたすら研究に打ち込んでる」というイメージがあるのかな。・・・分かる気が しないでもない。(笑)
  夢:トラウマの方は?
  翔:私は、『ガラかめ』以降の 田辺さんしか知らないけど、陽の光を浴びて スクスク育った、というのは『ノボセモン』の井野一伴役ぐらいで、あとはみんな、何かしら 屈折してる役ばかりだよね。 田辺さんは、そういう、「何かを背負った感じ」の役に、独特の雰囲気を醸(かも)し出せる気がする。
  夢:それにしても、何故、子供の頃のトラウマを、ずっと引きずってるんだろう?
  翔:すごく 繊細な心の持ち主 だからじゃない? 子供の頃の傷を 癒(いや)しきれてない、と言うのは、傷そのものが深かった、という事もあるけれど、その痛みや辛さを 全身で受け止めてしまうタイプ だからじゃないか、という気がする。――田辺さんって、何となく、そういうイメージが あるんじゃないのかな。
  夢:うーん・・・なるほどね。
★    ★    ★
  夢:「私の一番」、あたしは、やっぱり、柏原くんを 田辺さんが 抱きしめて なだめるところ。
  翔:同じですけど、じゃあ 私は 違う切り口で・・・ 雨宮さんという女性に迫られて、その後 ボールペンで刺されるところ。
  夢:あ!あれは怖かったぁ~