今さら『捜査会議はリビングで おかわり!』感想

昨年(2020)2-3月、毎週日曜22:00からNHKBSプレミアムで放送された連続ドラマ。今さらながらの感想です。

前回から1年半という時間が経過しているので 当たり前と言えば当たり前なんですが、直くん(庵原匠悟)や翔くん(深田真弘)が大きくなっていてびっくりしました。小学4年生(シーズン1)→5年生(シーズン2)かぁ。子供の成長は早いですね。
三平くん(シーズン1=田村継、2=高月雪乃介)やマドンナ・エミちゃん(西澤愛菜)も含めた子供たち4人の活躍を今回も楽しみにしていたのですが、エミちゃんが出てこなかったのはちょっと寂しかった。
物語としても、今回は全体的に前回よりちょっと大人な空気感、というか、ビターな感じというか。
ゴシップ目当てで昌(田辺誠一)の周辺を嗅ぎまわる笹本(滝裕可里)とか、家族の秘密をバラすと言って昌を強請(ゆす)る尾形(和田正人)とか、眠り姫になってしまった恋人のために昌を閉じ込め章子を追い詰める白石(高橋努)とか、それぞれの事情がちゃんと描かれていてそれはそれで面白かったけど、おとぎ話的なふわんとした空気感が時々薄れてしまって ちょっと残念な気も・・ まぁ、私が勝手にホームコメディとかジュブナイルというもののイメージに囚われ過ぎているのかもしれないですけど。(苦笑)

とは言え、この世界観が私はやっぱり好きだなぁ。登場人物がみんな優しい(尾形だって白石だってちゃんとそういう面を持っている)から、観ていて、胸がキリキリと痛くなることがない。
昌と章子(観月ありさ)と直におじいちゃんの正倫(高橋英樹)を加えた森川家の4人はもちろん、お節介で超仲良しな町内会のみんなとか、わたこ先生(トリンドル玲奈)とおまわりさん(松下洸平)のそりゃあもう可愛くてメルヘンチックな空気感とか、今回も大いに楽しませてもらいました。(玲奈さんはもともとそういう持ち味だけど、松下さんが今回その甘~くて優し~い雰囲気にちゃんと入り込んでいたのが驚きでした)

前回は、なぜ刑事千葉県警特殊班)である章子とミステリー作家である昌の職業を隠す必要があるのか、というところが少しあいまい(に私には感じられた)で腑に落ちなかったんだけど、今回、「特殊班が捜査した事件を晶が小説のネタに使っているのではないか、と勘繰られるのを恐れて」、という名目がしっかりしてきて、そのことを西花町内の人たちだけが知っている、共通の隠し事になっている、ということで一応納得。(まぁそれでもかなり無理がある、と言えばそうなんだけどw そこを気にしてちゃ このドラマは楽しめないと思うので)

章子が所属する特殊班は、公にはされていない部署で、表立って捜査出来ない事件を秘密裏に解決する精鋭部隊、ということですが、特に前半はその辺がちょっと弱かったかな。訓練ばかりで、実際の事件にタッチしている場面がなく、少し緊迫感が足りなかった気がします。(でも、後半はしっかり仕事していたので良かった。特殊班のメンバーも好きなので、つい肩入れw)
一方晶は、今やすっかり売れっ子ミステリー作家になっていて、アイドルに鼻の下伸ばしたり、自宅とは別に仕事場を持っていたり、だいぶ前回と変わっていて、最初はちょっと戸惑いました。でも、自称マネージャーで究極のお節介焼きである花田道子さん(鷲尾真知子)とか、晶の編集担当者・谷(片桐仁)とか、お馴染みのメンバーが囲んでくれて、昌も 外見はともかく中身は以前と変わらなかったので ちょっとホッとしましたが。

各話それぞれ面白かったですが、私としては、第2話が、ライトなホームミステリーといった趣(おもむき)ですごく好きでした。
エプロンとブランケットがなくなる、包丁が床に刺さってる、窓が開いてる、不審人物が二人、お菓子がない、肉じゃがが減ってる‥森川家内で起きた小さな事件がぜ~んぶ繋がってちゃんと解決する、って、素直にすごいと思ったし、一緒に謎解きしている気分が一番味わえたような気がします。

昌の父・正倫が、西花町の自警団の団長さんになって、花田さん(小野寺昭)に「ボス、ボス」と連呼されるのにも笑った。(分かる人にしか分からないよなぁw)

章子と昌の馴れ初めも楽しかった。
若い頃の昌が、お父さんやお母さん(かとうかず子)とどういう生活を送っていたのか、少しだけではありましたが、見ることが出来たのも嬉しかったし、結婚前の昌と章子がちゃんと若くてw楽しかったです。

そして極め付きの最終話。
実は初見では7・8話の色合いがそれまでと違っていた気がしてサラッと流して観てしまったんだけど、今回再見して、登場人物ほぼ全員(あの影絵の名探偵さえw)が事件に何かしら関わり、解決への道筋を照らして行く展開になっていたことに気づいて、すごいなぁ、と、改めて驚かされました。
白石に閉じ込められた昌と白石の共犯者である優花(酒井若菜)とのやりとりが楽しかったなぁ~田辺さんと若菜さんのシリアスとコメディのかき混ぜ具合に、何だか惹かれてしまった。
それ観ながら、「いやいや~どうしよう、ここ最近の田辺さんが演じたキャラで一番好きかも」なんてことを唐突にビビッと感じてしまったワタクシw。
メガネとふんわりヘア・衣装等のビジュアルも好みだったし、章子や直との仲良さげな家族としての空気感もとても良かったし、(直の)お父さんでありながら (正倫の)息子である、という、その挟まれ具合が、前回よりずっと練れて来て、より自然で、程(ほど)良くて、味わい深く感じられて。
三世代の真ん中、親と子供に挟まれるこのポジション、田辺さんは本当に違和感がない。考えてみたら、案外そういう役が多い。ここ数年では、『父、ノブナガ』とか『坂の途中の家』、それから『モコミ』も。(多分『青天を衝け』もそうなっていくのかな)
そういうポジションにすっぽり収まってしまうところもまた、私が好きな俳優・田辺誠一なんだなぁ。(でも、ま、それも彼の魅力のほんの一面でしかありませんがw)

そしてエンディング―——
章子は・・わはは、そう来たか。別な意味での特殊班(爆) でも、章子はもちろん、班長堀部圭亮)も特殊班のみんなもこっち(広報)のほうが向いてる気がしないでもない。
昌は、というと、入江久蘭というペンネームをやめて本名で勝負することに。「銀じゃけはその犯行のすべてを目撃していた」・・っていかにも彼のキャラにピッタリな感じ。w
直は科捜研に入るという新しい夢が出来たみたい。なるほど~いいところに目をつけたなぁ。

隠し事がなくなって、章子も昌も直も、みんな伸び伸びしているように見える。
こうなって来ると、そんな彼らと、楽しい西花町の人たちで、数年後に『3杯目』をスペシャルドラマとして復活させて欲しい、なんて、つい欲が出てしまう。
直くんが大きくなって、もうジュブナイルにはならないかもしれない、というジレンマが私個人としてはあるけど、それでもこのゆるやかで心地良い世界観を 出来ることならもう一度プリーズ。


『捜査会議はリビングで おかわり!』    
放送:2020年2月2日 - 3月22日 毎週日曜 22:00 - 22:49 NHKBSプレミアム
脚本:武井彩 秋山竜平  演出:木下高男 朝比奈陽子 大畑真治
音楽 :兼松衆
制作統括:海辺潔(NHK) 森安彩(共同テレビジョン
制作・著作 :NHK 共同テレビジョン
出演:観月ありさ 田辺誠一
片桐仁 トリンドル玲奈 松下洸平
和田正人 高橋努 酒井若菜
遠藤雄弥 池田良 長浜之人キャン×キャン
庵原匠悟 深田真弘 高月雪乃介
山野海  佐藤直子 山口景子
堀部圭亮 鷲尾真知子 小野寺昭 高橋英樹
橋本じゅん(ナレーター)他