今さら『捜査会議はリビングで!』感想

昨年(2018)7月、毎週日曜22:00からBSプレミアムで放送された全8回の連続ドラマ。今さらながらの感想です。

ドラマのキャッチコピーは「謎解き×ホームコメディ」となっていますが、毎回起こる事件も、その謎解きも、それほど難しいものではなく、むしろホームコメディの方に重きを置いていて、ミステリーのドキドキハラハラワクワクもないかわり、とげとげしたところやギスギスしたところや痛々しいところがない、根っからの悪人も出て来ないし、誰も深く傷つかない、万事おおらかで、なごやかで、 だから子供もお年寄りも安心して観ていられる、安心して笑える、最近にはめずらしくライトで楽しいホームドラマでした。

…って簡単に書いてますが、ホームコメディって案外難しいんですよね。
ドラマ自体の骨格がしっかり出来ていて、かつ、演じる側が自分の役を「ホームドラマの登場人物」としてきちんと消化していないと、その上にコメディの色合いを重ねても うまく馴染まなくて、どうしても上滑りになってしまうことが多い。
でも、このドラマは、そのあたりをうまくクリアしている。
それは、やはり第一に観月ありささんの明るいキャラクターに因るところが大きい気がします。彼女の、細かいことは気にしないで何事もドーンと受け入れてしまうようなおおらかさや軽やかさや優しさが、森川章子というキャラクターにうまく溶け込んで、魅力的でした。

「任務の内容は第三者に洩らすべからず」という刑事のオキテだったり、「我が家の平和のために出来るだけフツーの家族ですってアピールしたい」「なるべく周囲に波風立てないようにしたい」だから自分が刑事であることを秘密にしなくちゃならない、という章子(観月)の気持ちも分からなくはないけれど、だからといって、嘘をついてまで刑事であることを隠さなければならない、というのが、正直、私にはよく理解出来なかったですけどね~‥
だけど、その「秘密ゆえの縛り(しばり)」から生まれるさまざまな騒動が、このドラマの笑いの大きな部分を担っていることを思えば、あんまりそこは突っ込まずに観た方が楽しめるのかな、という気もしました。
(その他にもツッコミどころはいろいろあって、おいおい、と思うこともほんとにたくさんあったんですが、その辺を厳しく突き詰めてしまうと、特有の心地よいゆるやかさが損なわれてしまうかもしれないので、大目に見てもいいのかな~と。甘々ですがw)

一方、章子の夫の晶を演じているのは田辺誠一さん。
万事 天真爛漫で子供みたいな章子に比べ、心ならずも主夫ブログで人気者になっちゃった晶は、本業のミステリー作家では売れていなかったり、息子を警察官にさせたかった父親(高橋英樹)との距離感を未だに掴みかねていたり、と、いろんな屈折を抱えているのですが、まぁそれもさほど深刻には描かれていないせいもあって、章子との夫婦としてのコントラストがうまく出ている程度に留まっていて、とても相性が良かったように思います。
もともとコメディ志向の強い俳優さんなので、お笑いに走り過ぎちゃわないか心配な部分もなくはなかったのですが、自重してくれて良かったです。w

余談ですが、晶の子供時代を演じた大山蓮人くんがいかにも「子供時代の晶」って感じで、私のツボに入りまくりでした。

その他にも、こういうシチュエーションに圧倒的な強みを発揮する近所のお節介焼き・花田さんに鷲尾真知子さんとか、晶の編集担当者・谷の片桐仁さんとか、いかにも面倒見が良くて優しそうな花田さんの夫・小野寺昭さんとか、近所のおばさんたち(山野海・佐藤直子・山口景子)とか、めちゃくちゃ人のいいおまわりさん(松下洸平)とか、可愛くてふわ~んとしてお人形みたいな先生(トリンドル玲奈)とか、そしてドラマをきっちり締めてくれた高橋英樹さんとか、周囲のメンバーも鉄板と言ってよく、それぞれにいい味出していました。
そんな中、橋本じゅんさんがナレーションのみの参加だったのが すごーくもったい気がしてしまった。(私が彼のファンだから、なのかもしれないけどw)

おとうさんやおかあさんより余程しっかりして大人びている晶と章子の一人息子・直(庵原匠悟)と、彼をはじめとする小学4年生カルテットも良かったなぁ。
こちらも定番の、リーダー格・翔(深田真弘)、食いしん坊・三平(田村継)、マドンナ・エミ(西澤愛菜)、どこか達観した感のある直も含めた子供たちそれぞれの個性がジュブナイル(少年少女)小説みたいで、むかしNHKで夕方放送されてた子供向けドラマにも通じるものがあるなぁ、と、そういうドラマに夢中になっていた私としては、何だか嬉しかった。
子供たちの家出の顛末を描いた第5回(僕らの家出大作戦)など、じんわり温まる内容で、良かったです。

全体に、「サザエさん」とか「ドラえもん」とかホームドラマ系アニメに近い風合いと言ったらいいか。
人を憎んだり恨んだりさげすんだり、といった悪意が一切感じられない、善意だけで出来ているようなこういうドラマは本当に貴重なので、出来れば子供も観られる夕方とかに再放送して欲しい・・と思ったら、ちゃんと日曜の夕方に再放送されてたのね。よかった。

来年2月、PART2が放送されるとか。
タイトルに「おかわり」を付けて『捜査会議はリビングで おかわり!』にした、その笑いのセンス グッジョブ!w
放送を楽しみにしています。


『捜査会議はリビングで!』    
放送:2018年7月15日-毎週日曜22:00- 全8話 NHKBSプレミアム
脚本:武井彩 秋山竜平 横幕智裕 演出:河野圭太 都築淳一 木下高男
音楽:兼松衆 制作統括:出水有三 製作:NHK 共同テレビジョン
出演:観月ありさ 田辺誠一 片桐仁 トリンドル玲奈 松下洸平
遠藤雄弥 庵原匠悟 山野海 堀部圭亮 鷲尾真知子 小野寺昭 高橋英樹 他
ナレーター:橋本じゅん
公式サイト